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六
一行が魯に滞在していたとき、陽虎が豚を贈ってきた。まるまる太っていたので、飢えた一行は喜んだ。
孔子だけは渋い顔をした。会いに行って礼をしなければならない。孔子は陽虎が好きではない。
司馬牛と子路を連れて、いないときを見計らい、彼の邸まで行った。しかし帰る途中でばったり陽虎にでくわした。
「あなたみたいな人が王に仕えないのは宝の持ち腐れですから、仕えなさい」
と陽虎が世辞を言った。
「そうしましょう」
と孔子も返事をした。
司馬牛はただただ吃驚していた。二人の男は瓜二つだったのだ。
もっとも、近くでよく見ると、陽虎のほうは老いた猿のようで、孔子はぴちぴちした象のようだ。
しかし遠目に見れば違いがわからない。
別れたあと、大男の子路が肩をいからして言った。
「主君におもねって好き勝手をしているらしいな。偉そうなことだ」
「でも、師とよく似ていますね」
「そこが余計に腹が立つ」
それを聞いて、孔子が苦々しい顔をして言った。
「あれは詐欺師だ。気をつけよ」
まもなく、陽虎は策に溺れて失脚した。