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四海兄弟  作者: 杜若表六
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 子夏は、たしかに頭が切れた。

 考えが早い。時には孔子よりはやく答えにいきつく。だが拙速である。必ず途中でとちる。

 琴はからきしで、子路に馬鹿にされている。そういう子路も大概の演奏である。

 司馬牛は、なんとなく子夏とうまがあった。二人とも頭はいいが、牛は慎重で、子夏は俊敏だからだろう。

 牛がくよくよしていると、子夏がなぐさめた。多くは詭弁であるが、気心が伝わって安んずることができる。

「私たちはなんのために諸国を廻っているのだろうなあ」

 と、子夏が言った。

「教えを広めて、世を住みよくするためでしょう」

「教えを広めたって悪党は悪党じゃないか」

「それもそうですが」

 牛は、兄のことを考えていた。

「しかし、人はみな兄弟です」

「元をたどればな。そういうことらしい。だが師を見ろ」

 孔子は琴の音に酔って踊っている。大きな身体が、軽やかに舞う。

「ああいう巨大な人が、私たちみたいな平凡人と同じ根っこをもってるとは思えん。あれこそ天に選ばれた人だ」

「たしかに師の教えが正しく理解されて、世の中に広まるとは思えませんね」

「私たちでさえ、十全に理解できないじゃないか」

「しかし惚れこんで、一緒に舞ってしまう」

「あの人のために命を落としかねんやつもいる。子路のような」

 琴を弾いているのは子路である。

 ひどい音だ。それでも孔子は軽やかに舞う。

 師に舞えぬ音楽はないのだろう。と司馬牛は思った。

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