表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そよぐ死体の放浪記  作者: うにうに
第1章「死の自覚」
1/4

第1話「初めての異世界」

温かい目で読んでいただけると幸せです

「んー、やっぱ死ぬべきかなぁ」


目の前を通り過ぎて行く人々に聞こえないよう、秋雨殊波(あきさめことは)は呟いた。しかし若者の自殺が年々増加している現代のこと、誰が自殺しようが気にされることもないだろう。ゆえに誰に聞こえようが構わないのだが、奇怪なものを見るような視線を向けられるのが嫌な殊波のことなので、命を絶つ覚悟はあれど周りを気にしないでいられるほどの胆力はなかった。


同年代と比べると大きい方に含まれる背丈、肉付きの薄い体。無愛想に結ばれた唇と一重で切れ長の瞳が相まって人相を悪くしていた。


個性も何もない、正に平凡な少年。15歳という精神が不安定な年齢。特に何もなくとも自分の存在価値を疑い、死に関心を持つ、そんな年齢。


「……やっぱやーめた」


死ぬなら親が死んでからにしよう、続けてそう呟いて、殊波は重そうな腰を上げた。


県に1つはあるだろう有名チェーンのコーヒーショップ。ここが最近の殊波の居場所になりつつあった。自宅がここと近い関係で、ふとした時に足が向いてしまうのだ。そのため服装にも気を使わず、身につけているのは黒のTシャツに白のパンツ、スニーカーだけだった。


見知りの店員さんがいるカウンターに挨拶をしてから(コーヒーは先に買うシステム)、店を出た。


見知らぬ土地だった。


「あ……、え?」


上を見てみると突き抜けるような青空が舞っている砂埃によって汚されてしまっている。長く続く大して舗装されていない道の両脇には歪な形の建物がずらり。しかしそれらは決まって1階建てで、玄関の扉も立派なものではなく布が垂れ下がっているだけ。


加えて、度々どこかから上がる歓声と、その度に鼻腔に潜り込んでくる、鉄の匂い。


明らかに日本ではない。発展途上国といった感じの風景。


しかし、それらを決定的に否定する景色が目の前に広がっている。


イカつい面をした明らかに背の低いおっさんや、長い耳の先が尖っている綺麗なお姉さん。間違いなく、ファンタジーでお馴染みのドワーフとエルフだった。


その2種族が目の前を平然と歩いているのだ。


加えて、殊波に追い打ちをかけるように受け入れられない非現実が目に飛び込んでくる。


先程のエルフのお姉さんが、パイプらしきものを吸うために火を付けていた。指先から出る炎で。


「……クールビューティ、とかふざけてる場合じゃないよな……」


入口を逆に通れば出口になるはず、そう思って、加えて現実逃避の意味合いも兼ねて、たった今通ってきた店の扉をもう一度くぐろうと後ろを振り向くと。


店の扉程に体格のいい、大男が3人立っていた。

読んでいただきありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ