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ゲート・ジ・アース  作者: 雪村遥人
第一章:繋がる世界編・第一節:プロローグ
3/9

神楽坂学園というところ

「ここが試験会場か」

 目の前に広がるのは標高五百メートルほどの比較的小さな山。小さなと言っても、それは登山においては初心者向きであるという意味で、実際にはかなり大きく見える。

 何故こんなところまで来ているのか、それはほんの二日前の事だ。


 ◇◆◇


 魔獣に襲われ、ショッピングを諦めた後。家に着くと自室に荷物を投げ入れて父の部屋に入った。そこには父だけではなく、兄の姿もある。

「それで、何の用だったの?」

 少しの沈黙の後、兄が先に口を開いた。

「魔獣に襲われた時、レオは魔力障壁を使ったよね?」

「うん。避けられないと思って」

 正確には魔力障壁では無いのだが、今それを説明する訳にはいかない。俺が同意をすると兄は薄く笑みを浮かべ、机の引き出しから一枚のパンフレットを取り出し、俺の前に差し出す。

 そこには、『神楽坂学園入学案内』と書かれていた。

「これは…?」

「見ての通り入学案内のパンフレットだ」

「いやそういうことじゃなくて‼︎」

「父さん?」

 俺と兄の射抜くような視線を受けて、父は気不味そうに頬を掻きながら続けた。

「二十年前、世界中でゲートが発生した」

「それは知ってるよ。空中に球状の穴が見つかって、そこから謎の生物が出てきたり、周囲にいた生物が凶暴化した事件だよね?」

「その通りだ。これに対応するために私たち武家と政府が連携して作った組織が__」

「さっき見たGSSなんだ。神楽坂学園はGSSの戦闘員やスタッフを育てる場所だよ」

 兄が割り込んで説明してくれる。割り込まれた父は微妙な表情をしているが気にすることも無いだろう。

 つまり二人は俺の進学先をここに選んだということだ。

「それで、試験を受ける学科なんだけど__」

「武術科に決まっているだろう」

 さっきのお返しだと言わんばかりに割り込む父。

 真面目な話の最中にすることかな。大人気ない。というか武術科に決まってるって……俺に選択肢はないのだろうか。

「だめだよ父さん。レオには魔獣化した狼の爪を弾くほどの障壁を貼れる魔力があるんだ。他の学科でも通用するだろうし、勝手に決めるのは良くないよ」

 おお、さすが兄さんだ。頼りになるね。

 十分ほどの問答の末、武術科と魔術科両方の試験を受ける形に落ち着いた。


 ◇◆◇


 と、いうわけだ。

 父に話では先に受付を済ませてから頂上へ向かうらしいが肝心の受付はどこだろうか。

 しばらくしてようやく小さな看板を見つけた。どうやら昨日の雨の影響で受付が最寄りの休憩施設に移ったらしい。道理で人気が少ないわけだ。

 看板の案内の通りに施設へ入る。中はかなり広い。真っ白な壁は清潔感があって開放感にあふれて__と、施設の内装はさておき、まずは受付を済ませるとしよう。

 入り口のすぐ近くに並べられた横長の椅子__名称に覚えは無いが学校でよく使われているものと言えば想像は容易だろう__に腰掛けたメガネの男に「相坂です。受付お願いします」と声をかける。

 男は俺の顔を数秒見つめると、

「お引き取りください」

 入り口に手を向けてこう言った。

 聞き間違いだろうか。

「受付お願いします」

 改めて、今度は一枚の用紙を取り出してから声をかける。

 男は用紙を一瞥すると、

「お引き取りください」

 再度入り口を指した。

 どういうことだろうか。取り出した用紙は父から預かった受験票だ。これがあって受験出来ないのはおかしいと思うのだが……。

「一体何の騒ぎだ」

「副会長……申し訳ありません。不審者が来たものですから」

 奥から現れた女生徒、副会長と呼ばれているのを見ると生徒会の人か。

 というか不審者とはなんだ失礼な。

「不審者……?」

 彼女は俺を一瞥すると「ああ、そういうことか」と呟き、手早く手続きを済ませてくれた。

「すまない、うちの会計は少し頭が硬くてな。先月の筆記試験に不参加だった者はああして帰してしまうんだ」

「筆記試験?」

「知らないかい?うちの学園は二月に筆記、三月に実技と別々の試験があるんだ」

 なるほど。それは追い返されるわけだ。

「一応例外はあってね、君が持ってた受験票は武家の家柄の人だけが使えるもので、筆記試験を免除できるんだ」

「ならどうして受験票を見せても追い返されるんです?」

「その受験票、試験の免除をするには事前に申請が必要でね。上から聞いてた限りだと今日の試験でそれを使う人は居ないはずだったんだ」

 連絡が行き届いていなかったということか。父が申請し忘れている可能性もあるが今はいいだろう。

「っと少し話し過ぎたな。もうすぐ時間だ。遅れたら今度こそ受験出来ないからな」

「ありがとうございます」

 小さく会釈をして山に入る。試験会場は頂上で行われるらしい。

「……急ぐか」

 足場に気をつけながら、最速で頂上へ足を進めた。

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