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武器を持つなんてずっと先の話だった。素手で百人以上を相手に余裕で勝てるようになってからのことだった。それから初めて剣を持たされた。一対一に戻り、振り方を覚えるまで何度も切られ、意識を失った。魂、あるいはイメージ、のような存在である今のうちは、死ぬことはなさそうだった。だけど、同じ次元の存在同士で戦っているから、当然、痛みはある。初めは不思議に思ったが、どうやらそういうことらしかった。



剣で相手を攻撃することは、思ったよりもずっと難しい。軌道が少しでもブレれば、当たってもダメージは残せない。とにかくきちんと握ること、肩からの関節との連動で、腕の延長であるかのように振ること。それを覚えると戦うことが少し楽になった。まぁ、それを覚えるまでに何度倒れたことか。


(無限コンテニューのゲームを延々やらされているみたいだ…。)


敵は増え、武器が変わり、敵が大きくなり、武器も大きくなり、敵が増え…

時間の流れも気にならなくなり、迷いももうなかった。なんでもやってやる、これを仕掛けている誰かの気が済むまで。






終わりは、突然に訪れた。


怪獣クラスの「コーチ」、数百体は居たそいつらの最後の一体を倒したとき、はるか遠くの方で重い扉が軋みながら開くような音がした。見ると、長方形の光が小さく見えていた。俺は光の方角へと走った。走っていると息が切れた。肉体が目覚めたのだ。



走っているうちに、フラットだった地形はでこぼこになり、どうやらここが洞窟であることがわかった。息が苦しかったが、早く明るいところに行きたかった。何度か転び、あちこちに傷を作った。傷つき、息を切らし、光を求めている自分が嬉しくてしょうがなかった。そうして光の下へ出ると俺は倒れ込み、青い空を見上げながらしばらく息を整えた。




呼吸と気持ちが落ち着いたところで身体を起こし、あたりを見回した。どうやらここは鉱山跡で、閉鎖されてからずいぶん経っているみたいだった。俺はまず洞窟の門を閉めた。分厚く、ばかでかい鉄の引き戸だったが、一人で閉めることが出来た。それから、自分の状態を確かめた。RPGの初期装備、みたいな簡単な服を着ていた。とりあえず、居住区みたいなものを探してみようか。もう少しマシな服も見つかるかもしれない。




鉱山の端っこに、居住区を見つけた。作業場との区切りのための柵の間をくぐると、木と藁だけで作られた家がずらりと並んでいた。


(マシな服は期待出来そうもない…)


そして腹が減っていた。食料は期待出来そうもなかった。もしあっても食える状態ではないだろう。とりあえず服を探して、山を下りながら諸々手に入れるとしようか。



家をひとつづつ覗いてみたが、ほとんどの家にはなにも残されていなかった。が、とある家でこのあたりの地図を見つけ、とある家でほんのちょっとだけマシな服を見つけた。それから、双眼鏡に、ワンショルダーのリュックのような袋。最後の一軒には、ベッドが残されていた。藁を編んで作ったマットレスを見ていると、無性にそこで眠ってみたくなった。横になってみると、あっという間に眠りに落ちていた。




どれくらい眠ったのか?

あたりは夜になっていた。

灯りのない鉱山の夜は暗かったが、俺はもっと暗い場所を知っていた。


目が覚めたのは、物音を聞いたせいだった。この家ではない。

あまり遠くない外をなにかが歩いている。

音を立てずにベッドを下り、入口の陰に隠れ、身を潜ませる。





…なんだ、ありゃ?


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