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036.交戦


「ウインドカッター!」


 離れた距離から真空の刃を放つとエイプたちが気づき、一斉に回避するが数匹のエイプを仕留めることができた。エイプたちに動揺が走っている間に小隊のもとへとたどり着く。


『ソーシ先生!』


 いや、先生はやめような。


「どうなっている?」


 そう尋ねると小隊の隊長らしき男が答える。


「わかりません、初めはエイプが数匹だけだったのですが、交戦しているうちにどんどん数が増えてきて…吹雪隊の方が加勢してくれたのですが……」


 小隊の中の治癒士(ヒーラー)たちが倒れている吹雪隊の隊員に対して魔法をかけ続けている。ふむ。治りは遅いが一命は取り留めているようだ。治癒士(ヒーラー)偏重だったことが幸いしたようだ。


「ついてなかったな。こいつらはエイプキングに指揮されて連携がとれている。この数の相手は小隊には少し荷が重いだろう」


 手練のはずの吹雪隊の隊員がやれているくらいだ。流石にここまでの魔物の討伐は想定していないだろうし、採点者自信が倒れているとなると試験どころではないだろう。ここは手を出しても文句は言われまい。


「この状況を打破するならこうだ」


『えっ?』


 小隊長の返事を待たずに勢いよく地面を蹴った。


「グギャ?!」


 狙いはエイプキングだ。やつが居なくなれば統率が崩れる。


 周囲のエイプには見向きもせずに凄まじい速さでエイプキングの元へ向かっていくとその勢いのまま手刀で首を落とした。


 単体としては大したことないんだよなぁ…。


 頭を失ったエイプキングが崩れ落ちる。


 あまりの一瞬のできごとに、総司以外は何が起こったのか理解できなかった。


「キ、キーーーッ!」


 しかし、エイプキングが一撃で仕留められたことを理解し始めたエイプは蜘蛛の子を散らすように逃げ始めた。


「……ふぅ」


 もちろん追うなんて面倒なことはしない。ゆっくりと歩いて小隊の方へ戻る。


「とまぁ、こんな感じで群れの中のボスを倒すことで何とかなる場合もある。覚えとくといい」


『………』


 小隊の隊員たちからはもれなく、何言ってんだコイツ、みたいな顔をされた。先生って言うから教訓を教えたのに心外だ。


 ため息をつきながら治療されている吹雪隊隊員のもとへ行って手をかざす。

 

 採点員が意識のない状態で治癒士(ヒーラー)たちが頑張っても評価されないだろうし、手柄の横取りにはならないだろう。


治癒(ヒール)


 そう思い至り、治癒魔法を唱えると一際大きい光が包みこんだ。


『うわっ…』


『すごっ…』


 驚いた声をあげたのは治癒にあたっていた小隊の隊員たちだ。


「同じ治癒魔法(ヒール)でもどの部位をどう治したいか細かくイメージすれば多少効果は上がる」


『『多少…?』』


 どう見ても規格外の治癒魔法に隊員たちは声を揃えて疑問を浮かべるのだった。



「まあ、こんなところだな」


 治療された吹雪隊の隊員は出血がとまり、外傷もほとんど消えて元通りになった。あとは意識が戻るのを待つだけだ。


 さて、小隊長にはああ言ったが、問題は今回の交戦が本当に運だけの問題だったかどうかだ。


 事前に吹雪隊が間引いているはずだし、中腹からもまだ遠く、登り始めの段階でいきなりAランク魔物と鉢合わせするだろうか。可能性は極めて低いように思われる。


 考えられるとすれば吹雪隊が間引いた後に、山の上のほうがから降りてきたということだ。


 しかし、なぜ?


 少なくとも現段階では予想の域を超えない、が、一つの考えはある。


 エイプキングが動物的な本能で強者から逃げてきたという線だ。そう、例えば中腹より上で高ランクの魔物が発生した…?


 昔の偉い人は言いました。


 嫌な予感ほどよく当たる、と。


 さらに山を駆け上っては同じようにAランクの魔物と対峙するビースターズの小隊を助けて回ることになるのだった。


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