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009.5. 内心


 人生ってわからないもんだ。


 あたしはカスミ。一応、スパイを生業とする一族の村長の娘で跡継ぎって立場にある。


 今年で十九。経験は浅いけれどこう見えても一応プロだ。精神に関しても恋愛にうつつを抜かすような鍛え方はしていない。


 だからソウのことを何とも思っていない。仮に危険が迫ればソウをおいて自分だけ先に逃げることを厭わないつもりだ。


 では一緒にいるのが苦痛かと言えば、それとこれとは話が別。むしろ一緒にいて楽しい。歳を聞けば一つ下。同年代ということで話が弾むのは不思議ではないけれど何かこう大人びていて、村にはいなかったタイプだった。


 村長もやけに気に入って秘伝の技を教えていたりする。あれって門外不出じゃなかったの、と言いたくもなるが、婿にくるから問題ないだろ、とのたまう始末。それってもしかしなくても相手はあたしということだよね。


 もちろん後継者の問題は自覚してる。特に村長の娘という立場的にも結婚はともかく子をなさないという選択肢はないし、優秀な血筋を入れるために相手を満足に選べないという覚悟もある。だからといって、ふらっと村の近くに現れた男を婿になんて、そんな簡単に決めていいのかとも思う。まぁ、村に連れてきた原因は自分にあるのだからまた複雑なのだが。


 ソウが只者ではないのは認める。はじめに感じた気配は今までに感じたことないものだった。森の主にでも出くわしたのかと思ったぐらいだ。



「そっちじゃない。あっちよ」



 ソウに道先を教えながら少し後ろを歩く。


 そもそもの出会いは突然だった。修行している最中、強い気配を感じて思わずクナイを投げつけたところ、そこに倒れていたのがソウだった。一歩間違えれば命を奪るところだったが稽古用のクナイだったのが幸いしたというわけだ。


 まさか人間だとは思わなかった。この村は隠蔽スキルによって普通は近づけないようになっているし、そもそも普段から人の往来がある道ではないからこんな山奥まで迷い込む旅人はいない。自分で言うのもなんだけれど魔物だと思いこむのも無理はないと思う。まぁ、修行のために少し村から離れた場所まで出ていたからスキルによる効力が弱まっていた場所だったのかもしれない。


 兎にも角にも倒れたソウを放置するわけにもいかず仕方なく村に連れ帰ったのだ。その後、元気になったソウは村長と意気投合してそのまま住み着いた。最近は衰えがー、なんて言っているがまだまだ村で村長に敵うものはいない。そんな村長に、村を出て行くソウについて行け、なんて指令を出させるほどまでに気に入られたのは驚くべきことだ。やっぱり只者じゃない。


「そっちじゃない、こっち」



 只者じゃないどころか、ぱっと見はただの迷子なんだけどなぁ。


 そっと苦笑したのに気づくことなくソウはサンキューなんて言ってついてくる始末だ。ちょっと頼りない。


 何度か手合わせをしてソウが強いことは知っている。もともと素養があったのかもしれないが村長から直々に鍛えられたのもあって村に連れてきたときと比較にならないほど強くなった。強さだけなら確かに夫として合格かもしれない。でも、まだまだ、簡単に操をあげるわけにはいかない。本当に相応しい男かどうかゆっくり見極めさせてもらうとしますか。


 そんなカスミの思惑を露知らず、総司たちはムクの街へと歩みを進めるのであった。


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