表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/21

ゴスペルの歴史

『勇者様! どうか我々を、魔王の恐怖から、お救い下さい!』


何十年か、それとも何百年か。


記録にもハッキリとは残っていない遥か昔。


人間たちの国で、一人の王が、ある儀式を命じた。


それが、全ての始まりだ。


「人の心を持たぬ魔族めが! その性根を叩き直してやる!」


「弱者に生きる資格なし! 矮小なる人間よ、刃向かうなら根絶やしにしてくれよう!」


当時から、人間と魔族は争いあって生きていた。


‘‘力なき者は身内でも容赦なく突き放す’’、そんな魔族の在り方を認められない人間。


‘‘説教も矯正も相手のためにやってあげている’’、そんな人間の傲慢さを嫌悪する魔族。


お互いに反発は強かったが、より好戦的だったのは力で劣る人間の方だった。


といっても、魔族を滅ぼしたかった訳ではない。


理解できぬ価値観を恐れ、自分たちと同じ色に染めたかったのだ。


そして、それが結果的に魔族の幸せにも繋がると信じていた。


一方、弱者に興味がない魔族は積極的に人間を狩ろうとはしなかったが、人間側の干渉を大人しく受け入れる気もなかった。


人間の干渉が過剰になればなるほど、魔族は激しく突き放す。


やがて、魔族のトップである魔王が戦線に立つようになると、人間たちは為す術もなく追い詰められた。


そして、異世界から勇者を召喚するという暴挙に手を出したのだ。


しかし、それでも魔王を倒す事は叶わず、それどころか本格的に戦が始まってしまう。


魔王に敵意を向けられた人類は、このまま滅んでしまうのか。


誰もが、そう思っていた。


しかし、ここで予想外の事が起きた。


神が、この状況に介入してきたのだ。


転生者に能力(チート)を与え、勇者に仕立てあげるという方法で。


神が何を思って、こんなことをしたのか、それは今でも不明だ。


しかし戦況は再び五分と五分に戻った。


そして、転生者の強さを認めた魔王が停戦に応じ、相互不干渉の条約が結ばれることとなる。


こうして世界は平穏を取り戻した——ように見えた。


しかし、実際には新たな問題が浮かび上がっていた。


それが、転生者の過剰供給と彼らの暴走である。


魔族と人間の戦が終わってからも、転生者は増え続けた。


そして、相互不干渉の条約を無視して魔族の国に攻め入ったのである。


しかし、手柄を奪い合う転生者同士の争いにより、戦況は、どちらが有利とも言えない状態だった。


以降は転生者に乗っ取られた人間の国と、これに対抗する魔族の国が散発的な戦闘を繰り広げている。


『殺してやる……!』


そして、今から10年前。


まだ、イブキが3人と出会っていなかった頃。


それどころか、転生者の存在すら良く分かっていなかった幼少期。


事件は唐突に起きた。


その日を境にして、イブキは修羅の道を歩き始めることとなる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ