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僕の落とした左手を  作者: 宇野 伊澄
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 二人を送り出してから約三時間が立ち、僕がそわそわし始めたころにアトリエのドアががちゃりと開く音がした。勢いよく玄関まで駆け寄る。


「今日も、お世話になります」

 

 入るなり要は深々と頭を下げた。

 とりあえず何事もなく、作戦は成功したようで一安心した。

 

 要が部屋に入ったことを確認してからそっと玄関を抜け、外で待機している春のもとに向かった。なぜか結果を聞く前から春はやけににやにや顔を浮かべており、


「水無瀬くん、自信もっていいと思うよ。ファイト!」

 

 ただそれだけを言い放って、軽やかに駆けて行った。

 呼び止める僕の声なんて全く聞こえていないようだ。

 いきなりそれだけ言われても。


 遠ざかる背中にため息をつき、また今度詳しく問い詰めることにしようと決めた。諦めて部屋に戻り、上着を脱ぐ要に声をかける。


「どうだった?今日は」

 

 特に返事に期待はしていなかったのだが、要は満点の笑顔を向けると、すっごく楽しかったです!と言い切った。いったい春はどんな魔法をかけたのだろう。お互いの距離も近くなっているようだし。はてなマークだらけの頭を宥める。

 

 要は鼻歌を唄いながら今日一日さげていたリュックサックを開けた。

 中からはお守りの絵が出てくる。


「やっぱり、この絵は手放せない」

 

 そう呟き、優しく体で包み込んだ。何があったのかは知らないが、春には感謝しなければならない。それなのに、僕の中には嫉妬心が芽生えていた。

 要のこんな嬉しそうな表情をたった一日で引きだすなんて、到底できない。

 

 絵を描く以外には、到底。

最後までご覧いただきありがとうございます。

ご感想・アドバイス等いただけると嬉しいです。


本日はもう一話投稿します。

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