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短編集3  作者: 反逆の猫
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02 あるけどない手紙


 物体としてはない。


(文体が読みにくいです)




確かにここに手紙はあるらしい。

なのに、実際はない。

私はここにあるはずの手紙を探してみるのだが、影も形もなかった。

寝ている私の耳元で、あなたがいたずらっぽく「机の上に君への手紙を用意したよ」と言ったから、探しているのに。


寝起きの頭を目覚めさせるために、いつもの習慣で近くに置かれたテレビをつけながら、机のまわりを歩きまわる。 ニュースのアナウンサーが穏やかな声で「次のニュースにうつります」だなんて言ってるのに気を散らしていたら、机のかどに小指をぶつけてしまった。痛い。「次は閑静な住宅街でおきた行方不明者についてですが」なんて言っているアナウンサーの顔をやつあたりで一睨み。


あれこれ探し回るけど手紙はちっとも見つからないままだった。

置き忘れ?

それとも悪戯?

探しても探しても見つからない手紙に嫌気がさした私は、数十分後には諦めてしまった。


いつも適当な事ばっかり言ってるから、きっとどうせ今日のこれもそういう事だったのだろう。

あなたには頻繁にそういう癖があった。

私の大事な物を隠して「見つけてごらん」なんて笑う癖が。

とても構ってちゃんなんだから。私は毎回付き合ってあげて、怒ったりしてたわ。


きっと今もどこかで間抜けな事をしている私を見て、笑っているに違いない。

そう思うと、無性に腹が立ってきた。

手紙探しなんかよりあなた探しの方がよっぽど重要な気がしてきて、今度はどこかに隠れている人影を探すのにやっきになっていた。

けれど、手紙は確かにあったのだ。 私がただ、気づかなかっただけで。


私の耳をニュースの内容が素通りしていく……。


存在しないはずの手紙は、確かに「自分を見つけてほしいという」彼からの手紙だったのだから。




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