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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第4章
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ワッツ辺境16〈リリィたちの出立〉

覗いていただきありがとうございます。

 そうして僕の王都への帰還は、3週間ほど後に決まった。


 その前に、リリィとマリーンがリボさんと共に出立する。

 出立前日の夜、内輪だけの晩餐会が行われた。


 僕とリボさんは二人をエスコートするために、客室へ迎えに行く。


 リボさんと遺跡のS級魔物について話をしながら客間で待っていると、綺麗に着飾った二人が従僕に案内されてやって来た。


「リリィ、その黄緑のドレスすごく似合ってる」

「えへへ、ちょっと恥ずかしい。でも褒めてもらえて嬉しい」

 顔を赤くして照れるリリィ。


「マリーン、緊張してるのか?お前らしくないぞ」

「ちょっとリボ伯父さん!ここは女性を褒めるところでしょ」


「馬鹿だなぁ、ギーヴ。そんな小手先の技術、辺境じゃ通じないぞ」

「いや、リボさん。それ違う話だから」

 なぜかツッコむことになる僕。


「でも、私まで晩餐にご招待頂いて、本当に大丈夫なんでしょうか?」

 やはりお嬢様の後ろで控えているべきでは、とぶつぶつ言うメイドのマリーンさんは、リボさんの言う通り本当に緊張しているらしい。


(うち)の晩飯食うだけだろ?緊張する必要はないぞ」


「メイドの私にまでこんなに良くしていただいて、その上こんな立派なドレスまで着せていただけるなんて・・・過分すぎてどう感謝したら良いのかーー」


「心配するな。ドレスは俺からだ」

「え・・・?」


「女の服は俺の保存食みたいなもんだろ?遺跡では俺の服しかなかったからな。今日はちゃんと適切なモンを選んだ。手直しの必要がなかっただろ?」


「あ、はい。ピッタリで動きやすいです。生地もすごく手触りが良くて」


「だろう、俺が前に狩った樹海くもの糸で織った特別製だ。魔物の襲撃はもちろん、社交界の女に嫌がらせされても、傷1つ付かんぞ」


 なに、その武装・・・。普通にびっくりする僕。だけどマリーンさんは驚くどころか、冷静に機能確認している。


「ーー踏まれても?」

「型崩れせん」

「扇の鉄板や鉄針でも?」

「おう!もちろん裂けんぞ」

「ワインをこぼされても」

「つるりと流れ落ちるだけだ」


「すごいっ!無敵で素敵なドレス、ありがとうございますっ」

 なんのセールス会話(トーク)なんだ、とツッコみたくなるところをぐっと我慢する。


「マリーンとリボさん、いい感じだよね・・・ってごめんなさい!失礼よね、次期辺境伯さまに」

 思わず出た、という感想にリリィが慌てて謝る。


 隣国では上流貴族と没落元男爵の身分差は大きいという。両者を比べて話題にすることさえ、畏れ多いことなのだろう。


「気にしなくても大丈夫じゃない?リボさん、マリーンさんが気に入ってるみたいだし、二人ともいい大人だもん。僕たちがモヤモヤさせられるのは馬鹿馬鹿しいけど」

「もやもや?」

「しない?」

「それは、する!」

「だよねぇ」

 僕とリリィは顔を見合わせて笑った。


ーー意外にマリーンさんとリボさん、うまく行くかも。


 王都の社交界では身分差別は確かにある。

 だが婚姻について爵位の差が明文化されているのは王族だけだ。この辺境で次期辺境伯と没落令嬢とのラブロマンスは普通に有りだと思う。


ーーリボさんがその気になれば、リンダお祖母様が張り切って親戚の養女とかにしそう。


 なんたってリンダお祖母様は辺境では最強の権力者だ。しかも古王族の血筋「リィ」の称号を受け継ぎ、妖精王の血筋「トルアーデ」の家系だ。その系列の中に入れば、社交界の妖怪たちも、簡単には無視できない。


「ま、二人のことはなるようになるよーーそれよりリリィ、その髪飾りのデザイン少し地味だったよね」

 ドレスという装いになると、土産用の髪飾りは大人し過ぎるデザインだ。なんとなく浮いてしまう。


「ううん!モーくんがくれたもんだもん。それだけで特別だよ!」

「うーんでも・・・」

「そ、それより!」

「ん?」

「この髪飾り、こ、こいびとさんにあげる用の、お土産だったんじゃあ・・・」

 リリィが気にするように、上目遣いで聞いてきた。


「違うよ。王都にいる側付きの侍女に渡そうと思って選んだ物だから。そのせいでちょっと地味だよね」


「えっと、侍女さんにお土産?」

「うん。僕、辺境へは病気療養の名目で来てるんだ。ヒミツね!」

「もちろん!」


「で、その分王都に残った側近には迷惑掛けてるから、そのお礼にね、気にいったものがあったら、その都度買ってたんだ。ちゃんと選んだ物だから、出来は良いものなんだけど」

 言いながら侍女のお土産用では、令嬢の装飾品として用途が合わなかったのではないかと気づく。


「そうなんだ〜良かった!私、モーくんが恋人さんに買ってたお品を貰っちゃったのかな、いいのかなって後から思ってて」

 リリィは変なところで気を回していたようだ。


「それは大丈夫。僕、好きな人に渡すなら手作りするから。去年かな、異国の職人に聞きながら、素材収集から始めてデザインして、何個か手作りしたんだ。今思うと、急に王都に戻ることになったから、前もって作っておいて良かったよ〜」


「手作り・・・」

「やっぱりこの世に1つだけの物を渡したいしね」

 僕のエルバーラに似合うもの、僕のエルバーラに身に着けてもらいたい物ーーやっぱりあの〈ネックレス〉は外させないとね。


ーー第二王子に貰ってた、あんな花のネックレスより、僕の作ったネックレスの方が断然、エルバーラに似合うはずだもん。


 僕の作ったネックレスを身に着けたエルバーラを想像しただけで、胸が熱くなっちゃうよ。早く付けて貰わなくっちゃ。


「・・・でしょ」

「え?」

「この髪飾りも、モーくんの手作りでしょ!?」

「手作りーー」

 っていうより加工じゃないかと思う。


「だってあの魔獣の魔石を付けてくれて、魔法を使ってくれたでしょ!」

「・・・ワイバーンの魔石ね」

「買った時とは違うもん。コレ、モーくんの手作りだよね!もうそうだよ!ねっ、そうだよね!?」

 リリィは僕をじっと見つめ、強く聞いてくる。その迫力に、僕はなんとなく頷いた。


ーー職人が作ったお土産の定番ってことより、素人の僕が加工した(魔石を変えただけ)の方が、女の子には良く思えるのかな?


ーーそのこだわりが僕にはよくわからないけど。


 何だか悪い気がして、僕は収納からホビーの花を3輪取り出す。

 大ぶりの黄色い花弁を6枚枚持つ、愛らしい花だ。頭痛薬の原材料になる薬草で、定期的に冒険者ギルドへ収集依頼が出るものだが、その花の模様は異国では刺繍のデザインに使われていると言う。


「リリィ、後ろ向いて」

「えっ?」

「ちょっと今のままだと地味だから付け足すよ」


 伊達にエルバーラのネックレス作りに執心していたわけではない。

 今やセミプロ並みになった錬金魔法で、化石化と金属のコーティングをした石花を髪飾りの魔石の周りに融合して取り付ける。


ーーいたって簡単(シンプル)な〈加工〉だけど。


「うん、華やかになった。そのドレスにも似合ってるよ」

「ほんと!?これでモーくんの手作りなんだよね!?世界に一つの!」

「はは、まぁそんな感じ?」

 僕が曖昧に相槌をうつと、リリィは満面の笑顔で「鏡で確認してくる」と支度部屋に走って行った。


『主、テキトーひどい』

『主、作成と加工違う』

『主、いつかウラマレル』


 不吉なことを言う声を無視無視しながら、どっと疲れる僕。


ーー女の子の扱いって、ほんとムズカシイ。


 そんなこんなな会話を交わしているうちに時間になり、みんなで晩餐に向かう。


 会食場で迎えたのは、リンダお祖母様とトントお祖父様の領主夫妻。それから中央の管理執政官でリンダお祖母様の兄であるコバルト侯爵とそのご夫人とご子息。そしてトントお祖父様の妹の子供で、騎士団長でもあるカルミア伯爵とそのご夫人、総勢11人での内輪だけの晩餐だった。


 最初は緊張して固まっていたリリィとマリーンさんも、トントお祖父様の長話やそれにツッコむリボさん、脳筋訓練談を話す騎士団長の貴族らしくない雰囲気に、笑顔で会話に参加するようになる。


 リンダお祖母様のいつも以上に柔らかい雰囲気によって、警戒心もなくなり、マリーンさんは個性を爆発させ、リリィは声を出してずっと笑顔だった。


 楽しい雰囲気でその夜は過ぎていった。

 翌日、辺境伯の馬車でリリィとマリーンさんが、その後ろに付いて魔獣馬の単騎でリボさんが出立した。外郭でもう3人の冒険者たちと合流するらしい。


「ありがとう、モーくん。今度会えた時にはこのお礼をするから、ぜったい覚えていてね!」


 そう言葉を残したリリィたち3人を、僕は笑顔で見送った。


手作りの価値観ってムズいですよね〜。特に食べ物。

「手作り<買った物」と「手作り>買った物」


日本では「手作り=すごい」ってなる場合が多いですが、コロナの時は、遠慮して欲しいって雰囲気だったし(今も手作りを渡しにくい雰囲気がある)、外国だと、顔見知りの同級生や話をするだけの関係だとアメさえ断られます。薬物の混入を警戒しているのか、封がしてある物でも受け取ってもらえない場合が多い。まぁ、こっちも断りますが。

結局、手作りって安全性が確保できてるかどうかなんですよね〜。

そう考えると、個人の手作りはかなりハードルが高く、なーろっぱの異世界は職人の地位がかなり高いはず、とかなんとか考えてしまいます。


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