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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第4章
65/74

ワッツ辺境12〈竜の来訪〉

お読みいただきありがとうございます!


次の更新土曜日です。それまでに1回書き上げられたらアプしますので。

 ワッツ辺境の領都イカルガは強固な2重の隔壁と2重の防護壁に守られている。隔壁と防護壁には魔物避けの魔導具が設置されていた。


 それはトータス山脈や樹海、他国との国境からやってくる魔物の襲撃から住民を守るためである。


 外郭と内郭の間には畑や果樹園が広がり、異国の旅人がテントを張って一時的な商売をしていたり、家畜を飼う住民や少数民族の出稼ぎ、孤児たちが住んでいる。


 内郭を抜けると、大通りを中心に平民や商人の居住区と店舗が連なる商業地区、職人や異国の販売所がある職人地区が下街として広がり、役所の分所や各ギルドもここにある。


 次に防護外壁を抜けると役人の住居や貴族の屋敷などがある。メイドや従僕などの使用人の宿舎、調教管理する厩舎と馬場、高級品を中心に扱う商店、異国の特使の仮住まいや迎賓館などもこの地区にある。


 そして防護内壁の内側、丘の頂上にはワッツの辺境伯爵家の古城があり、そこにつながる役所館、騎士団の事務所と宿舎、闘練場や武器庫、貯蔵庫の建物が続き、職人がいる鍛冶場や修繕場、魔導具部所、専用厩舎と馬場、非常食用の畑や果樹園、その先に領民のための緊急避難用の広場が、古城を囲むように造られていた。元々はここが旧市街だったという。


 僕達がイカルガに着いたのは、光の色が変わる夕刻を過ぎてからだった。


 外郭の検問所を顔パスで抜け、内郭の関所の兵士の詰め所で城への先触れを頼んだ時だった。


 領民が行き交う大通りの上を大きな影が覆い、すぐに過ぎ去っていく。突然の変化に仰ぎ見た領民たちは、一様に悲鳴を上げて素早く逃げ出した。

 日頃から魔物に慣れている領民だからこその、素早い反応だった。


 詰め所から出てきたばかりの僕達は、領民の大声と避難する領民たちを前に、古城に飛んいく黒い魔物の姿を目にしていた。


「あれは・・・竜?」

 僕がつぶやいた後、リボさんが城に向かって駆け出した。


 僕は収納から銀貨の入った小袋を取り出すと、マリーンさんに渡す。


「右側の道をまっすぐ行って、交差を2つ過ぎた左側の先に〈安らぎ亭〉っていう女将の経営する宿屋があるから、そこで待ってて。落ち着いたら必ず迎えに行くから」

 そう言って僕もリボさんを追って駆け出す。


「モーくん、気をつけて!」

 向けられたリリィの声に振り返って手を振り、僕は先を急ぐ。


 防護外壁の検問所を過ぎると、逃げてきた役人や貴族の馬車や馬で、大通りは進むことが難しい状態になっていた。


 僕は防護内壁の検問所に向かう途中で、壁沿いに左側に逸れ、人気のない消化用の井戸に向かう。


 そのそばに立つ消火用具の入った縦箱を移動させると、秘密の抜け穴が現れた。


 つながる先は、防護内壁の内側、緊急避難用の広場がある近くだ。


 僕が知る秘密の通路はここだけだが、多分リボさんはもっと別の、中心部につながる通路を使ったのだろう。姿を追えなかった。


 僕は緊急避難用の広場から果樹園や畑を登り、職人たちの多い修繕場や鍛冶場、魔導具部所を横目に、貯蔵庫や武器庫を過ぎ、騎士団を目指した。


 たどり着いた先の騎士団は、驚くほど静かだった。

 竜の姿を求めて、闘練場に向かうと顔なじみの騎士たちが囲むように立ち並んでいた。


ーー竜と戦いになってないの?


 不思議に思って近づくと、騎士たちがすぐに僕に気づく。


「ギーヴィストさまだ、ギーヴィストさまが戻られたぞ!」


 その言葉に驚いていると、騎士たちが僕に道を譲って左右によけてくれる。するとリボさんとリンダお祖母様が腕を組んで立つ姿が見えた。


 男女の差はあっても、そっくりな立ち姿に僕は笑む。

 2人の背中の向こうーー闘錬場の真ん中で、小山のような黒竜がくつろいでいる姿が見えた。


「ギーヴィスト」

 リンダお祖母様が振り返って僕を呼ぶ。お祖母様の所へ急ぐと、くつろいでいた竜が頭をもたげ、突然ドタドタと僕の方へ迫ってきた。

 思わず剣を抜いて構えた僕の前で、竜が厳つい大きな顔を傾げて聞いてくる。


『なぜ剣を抜く?』

「・・・襲われそう、だから?」

『襲わぬぞ』

「襲わない?」

『当然じゃ、お前さんには約束を守って貰わねばならぬのじゃ

「約束?・・・記憶にないですけど」


ーー竜との約束なんて、全く身に覚えがない。


 前世も今世も含めて竜に出会ったのは、遺跡の上で通り過ぎる姿を見たのと、今のとで2度だけだ。


 それなのにリンダお祖母様もリボさんも、「魔物と約束なんて簡単にしてはいけないんだぞ」なんて言ってる。


ーー竜の声、みんなに聞こえてる?


「とにかく本当に記憶にないです!」

『むむっ!?なんだとーー』

「いつ、どこで、どのような状況で、なんのお約束したのか教えてくださいっ!」

 僕は竜が怒りだす前に、早口で詰め寄る。


 すると竜は器用に前足のでかい爪で、鼻をぽりぽり掻いている。

『いつ?・・・そうじゃのう・・・あれは今から5〜600年前ーー』

「ちょぉぉっと、待って!僕、5〜600年前なんて生まれてません!人違いーー」


『間違いなくお主じゃ。妖精王の幼体よ』

「ーーっ」

 竜はきっぱりと言い切った。

 〈妖精王の幼体〉という言葉に、僕は言葉を飲み込む。


『力が戻らぬお主の代わりに、(つま)の遺体を、住処へ運ぶ手伝をしてやったのじゃ』

「・・・えっ」


ーーつま!?妖精王!?


『じゃがお主は住処についた途端、嘆き悲しんでわしとの約束を果たさぬ内に、自害した』


ーーうわ〜コレ、もしかして3番目の僕の話?


ーーもう伝説だよ!いや歴史?どっちにしても、僕に伝説や歴史の後始末を求めるのヤメテ!


ーーもしかして、〈幸せの住処の記憶〉を受け継がせたのは、ポンコツ妖精王のヤラカシ後始末をさせるつもりだから、とかじゃないよねっ!!


 『ソンナノ誤解〜』とか言う美女の唱和が聞こえるが、キコエナイ。


「あの〜・・・ちなみに約束の中身は?」

 僕は若干疲れながら尋ねた。すると竜が急にでっかい口を、がばりと開けた。


「うわぁ〜っ!」

 脱力していたせいで恥ずかしいほど驚く僕。


 食べられるのかと、一歩下がって剣を構えてしまったよ。だが竜は構わずに、でかい爪で口の奥を指す。


『この奥に、ずっと何かが挟まっておるんじゃ。気になって気になって、飯があまり喰えぬ!おかげでこんなに痩せてしもうた』


ーーこんなにって、あなた十分デカイです。


 と言いたい僕。


「口の中、見ていいですか?ぜったいっ、食べないでくださいよっ」

『おぉ、早よ見てくれ、早うっ』

 竜が積極的に顎を差し出す。


ーー今、剣で突き刺したら、討伐なんか簡単にできそう。


ーーでもみんなの見ている前で、ドラゴンスレイヤーになるなんて面倒だし、約束あるのにヒドイことできないよねぇ。


「リボさん、僕を持ち上げてください」

 鋭い歯に恐怖を感じるが、ぐっとこらえてリボさんに頼む。


 身長150cmぐらいの僕は、竜が首を下げてくれても見上げる状況だ。リボさんに頼んで腰を持ち上げてもらう。


「気になるのは右側?」

『そうじゃそうじゃ!一番奥じゃ』

「ぜったい口を閉じないでくださいよ!」

『分かったからのう〜』


 こわごわ頭から、竜の口の中に突っ込む。竜の舌に片膝をついてモーグの魔法を唱える。


光球(LEDライト)


 身体の半分以上を飲み込まれた状態で、片手をついて、鋭い奥歯にたどり着く。

 すると右側の奥だけ、歯と歯の間に多くの骨が挟まっている。

 小枝ほどの大きさのそれを一つずつ抜いていくと、その下に金色の輪っかが出てきた。奥歯にすっぽりはまった感じだ。


 その輪っかを片手でぐるぐると回して、ちょっとずつ浮かし、僕はようやく奥歯から輪っかを取り外した。


「・・・こんなに骨と額飾りが挟まってましたよ」

 竜のあぎとから、ようよう抜け出すと、僕の全身は竜の唾液と自身の汗でびっしょりの状態だった。


ーー緊張した〜汗も唾液も、気持ち悪い。おえぇっ。


『おぉ、すっきりじゃあ〜〜』

 歯ぎしりする竜を初めて見る。厳つい顔が心なしか笑顔に見えた。


ーー歯って大事だもんね・・・。


 前世のCMを思い浮かべながら、僕は大きな竜を可愛く思ってしまった。


「この骨と額飾りどうします?額飾りは金みたいだけど?」

『いらぬ。お主が処分しておくれ』

「あ、はい」

『感謝するぞ。コレで飯が上手い』


「あ〜・・できれば人間は食べないでくださいよ」

『人間だけか?』

 耳元で一斉に『妖精も〜』という大きな唱和が聞こえる。


「ついでに妖精も」

 僕が付け加えると、竜をがガハガハ大笑いして、僕はそのノイズにびっくりして硬直した。


『良かろう。妖精王が人間を優先するか・・・面白い!実に面白いのう!』

 ガハハハ、と笑いながら竜は黒い翼を羽ばたかせ、突風を巻き起こす。


 僕たちは飛ばされないように、足を踏ん張り数歩下がる。


 竜はそのまま一気に上空に舞い上がると、あっさりとトータス山脈の方へと飛び去り見えなくなった。


ーーずいぶんお騒がせな竜・・・。


「・・・行っちゃったみたい」

 お祖母様やリボおじさんの顔を見上げる。それから。


「ちょっとだけ、戦ってみたかったと思わない?」

 振り返って、呆然と立ち尽くす騎士仲間にそう言うと、一斉に首を横に振られた。


 抱えた骨が1本地面に落ちる。面倒くさいので全部下に置いて、額飾りだけ手に取った。

「あれ?」

 僕は額飾りの内側にあった、家紋の刻印に気がついた。


ーー見たことあるような・・・。


「ギーヴ、その骨貰ってもいいか?」

 思い出そうと考え込んでいた時、トビーが聞いてきた。


「え?竜の歯に挟まってた骨だけど?」

 汚いよ?と聞いたつもりだった。それなのに即座にトビーが叫ぶ。


「欲しい!」

「いいけどーー」

「あっ、トビー抜けがけっ、俺も欲しい」

「俺も俺もっ!」

 一斉に「俺に下さい」コールが巻き起こる。


ーーえぇ〜数ないよ・・・。そんなに欲しいものなの?


 僕は困ってリンダお祖母様を見る。なんとかして〜。


「この馬鹿者どもっ!タダで物を貰えると思っているのかぁぁぁ!」

「姉御っ!」

「欲しいなら腕を示せっ!己で輝けっ!いいかぁ、竜の骨が欲しいなら、総当たり戦じゃぁぁぁ!」

 おぉぉぉ!と脳筋たちの歓声が上がる。


ーーお祖母様、ソレ竜の骨じゃないです。


「えっと・・・僕、リリィ達を迎えに行かなくちゃーー」

 だがその声は無視され、僕とリボさんは騎士の熱気に巻き込まれて、バトルロアイヤル(そうあたりせん)?に強制参加させられた。


ーーでもコレって、リンダお祖母様のひとり勝ちじゃない?!


 ヘロヘロになりながら、僕はリンダお祖母様とリボさん、騎士団長と副団長、騎士団精鋭トップ5に、勝たせてもらえず、それどころか負けてもこてんぱんにやられて、結局リリィ達を迎えに行くことができなかったーー。

 


 

1度書いたデータを消してしまい(涙)

書き直しに時間に時間がかかってしまいました。


次に、背後霊の話になります。

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