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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第4章
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エルバーラの献身4〈針山トカゲ〉

更新遅くてすみません。

覗いていただいてありがとうございます。

次は週末になりそうです。


エルバーラ視点になります。

読み飛ばしても本筋に影響ないですので。

 私は独学で、魔法の勉強を進めた。

 ようやくそれらしきものになり始めたのは、1年以上経った頃だった。



 魔力制御を本で勉強してから、私はいくつかの魔法陣を覚える。

 頭の中に魔法陣を思い浮かべて、魔力をちょっとずつ流し込む。


 イメージの中で魔法陣の糸に私の魔力をまとわせてから、

「『ゴーヤ』『キュウリ』『アサガオ』っ!」

と叫ぶと、何ということでしょうーーようやく中庭の枯れかけた植物の葉が伸び、蔦を出して絡み合った。


「やったわ!緑魔法よ!」

『ゴーヤ?』

『キュウリ?』

『アサガオ?』

『エルバーラの呪文ヘンテコ』


「具体的にイメージするのが大事、って言うのは異世界転生の定石(セオリー)なのよ!」


『時々、エルバーラって言うこと不思議』

『時々じゃないよ』

『いつもだ』

『いつものエルバーラ』


「あなた達ねぇ・・・まっ、いいわ。とにかく緑魔法はなんとかなりそう」

『土魔法は全然だね』

『おかしいなぁ〜、才能あるはずなのに』


「いいの。私、そんなに器用じゃないもの。とりあえず、緑魔法が使えるって分かって嬉しい」

 私はご機嫌に、夜空を見上げる。


『エルバーラ、エライ』

『エルバーラ頑張ってる』

『エルバーラできる子』

「あら、たまには褒めてくれるの?」

 珍しい光達の反応に、思わず笑いがもれる。


『エルバーラ、惜しい』

『エルバーラ、制限突破まだ無理』


「分かってるわよ〜これなら、光魔法は7歳の祝福を待ったほうがいいのかしらね」

 そう言いながら噴水の縁に座ろうとした時、バシャン!と水音がした。


 噴水を覗いてみれば、昨日まで続いていた雨で、水がたまり、そこへ生き物が落ちたみたいだ。


 思わず両手ですくい上げると、針山の奇妙な生き物だった。頭が丸く、尻尾もある。

「落ちるなんて間抜けね」


ーートカゲの背中がヤマアラシ?


「噴水に落ちるなんてーーあなたトカゲ?にしては変に醜いし大きいし、魔獣じゃあないわよねぇ。実態があるから妖精でもないでしょうし」


ーーでも、よく見るとつぶらな金の目は可愛いかも。


「蜘蛛の脚みたいな針ね。何本あるの?魔力がほんのりあるから、魔獣じゃなくて魔蟲(まちゅう)なのかしら。でも顔は間抜けな蜥蜴だし」


 針山をツンツンとしてみると、針山トカゲはぶるりと身を震わせる。


「あはは、ごめんごめん。弱いのねぇ〜でも針が弱点だなんて、生物的にヤバイわよ?

上から襲っても横から襲っても弱点を突かれるでしょ?あなたよくそれで弱肉強食の世界を生き残れたわねぇ〜」


 見れば見るほど不思議な生体だわ。さすが日本のゲームに関連した異世界ね。


 真面目に話しかけた私を不思議がるように、針山トカゲは首を持ち上げて勝手にコテンと傾く。思わず手で支えてあげたくなっちゃう。


「やだぁ〜カワイイっ〜ふふふっ、目がクリクリ。口も手もちっちゃいっ!」


 針山の下にある小さい5本指が見える。お腹の下も絶妙に柔らかくて、ふにふにいつまでも触っていたくなる。


 針山トカゲは大人しく、変わった見た目に反してジタバタするだけの様子がどこか不器用で、噴水にまた落ちそうになるのも、私の保護欲をそそった。


「もぉ、本当に間抜けねぇ」

 私は地面に針山トカゲを下ろしてあげた。


ーーかわいい・・・でもだからこそ、もう構っちゃいけないわね。


 束の間の癒やしだった。今日は繰り返し義母に体罰を与えられて身体が痛い。でも、魔法が少しは使えるようになってきて、心は晴れ、いつもより高揚していた。


ーーありがとう、針山トカゲさん。だからこそ。


 離れようと距離をおく。少し離れた針山トカゲにじんわり寂しさを感じる。


 愛猫がいなくなってから失った温もりだった。妖精たちは触れないし、光の塊にしか見えないから。

 離れがたくて、でも愛猫を失った時のような思いは、二度としたくないと強く思う。


「そうそう早く逃げるのよ。お前みたいな間抜け、お兄様に見つかったらきっとすぐに殺されちゃうわ。

それとも面白がって針を1本1本抜くかしら?

ううん。そんな面倒なことはせずにきっと瞬殺ね。

いい?さっさと逃げてお家に帰るの。もう二度とここに来ちゃ駄目よ」


ーー私、やっぱり寂しいのね・・・。


 ふと自覚する。でもだからこそ、背を向けたのに。

「もうっ!ここはキケンなのっ!分かった?」


 ちらりと目の端に映った針山トカゲは、逃げもせずその場で首をもたげ、呆然としたように金の瞳でこちらを見ていた。

 私は針山トカゲを運んで、草むらの向こうに逃がす。


ーーなんだか人間みたい・・・。どこかなつかしい?


 ふいに胸を掴まれた気がした。


ーー駄目よっ!マールのようにお兄様に見つかったら。


「じゃあね。さよなら、トカゲさん!」

 私は断ち切るように、館の部屋に戻った。


『ふぅ〜』

『怖かった!』

『近寄らない近寄らないの、イチバン!』

『そうだソウダ〜』


 どこからともなく現れた光達が、安堵の声を聞かせる。


ーーそんなに怖い生き物だったのかしら?


 人間のような瞳が、じんわり私の胸の奥に残った。




エルバーラの視点続きます。

次は解呪かな、と。


覗いていただけると嬉しいです。

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