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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第4章
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エルバーラの献身3〈ギーヴのやらかしと王子の優しさ〉

いつもありがとうございます。

注意)残酷表現ありです。

読み飛ばしても、本筋に影響ありません。


エルバーラ視点です。

「エヴァの涙は甘いよねぇ」

 両方の目じりを舐められて、頭が真っ白になる。


ーーセクハラ・・・?5歳児にはふつう?


「ひど・・わっ」


ーー本気でお願いしたのに!貴方なら助けてくれるって信じたのに!


 怒りを現す前に、ギーヴはジェムニールに呼ばれて、鉄箱の中に歩いていく。


 鉄箱の中に放り投げられ、食べられる恐怖におびえるマール。

 あの夜、ここに閉じ込められた私と同じだ。


 我慢できずに助けに行こうとしたら、側にいたジェムニールの護衛に肩を押さえつけられ、椅子から立ち上がることもできない。


「マールっ!」


 そうする間にも檻が開けられ、逃げ回るマールに魔獣が襲いかかった。


ーー嫌だ!ヒドイっ!ヤメて!


「マールっ、マールっ」


 声の限りに叫んだ。


『大丈夫』


ーー・・・っ!


 その時、誰かがささやいた。

 聞いたことのない声。


ーー妖精?


 気をそらした一瞬で、マールの姿が消える。


「マールっ!」

 ギーヴとジェムニールが追い詰めた魔獣に剣を突き立て、魔獣の毒の毛がぶわりと広がる。


 鋭い音と血の匂いが立ち込めた。


 飛び散る血と、魔獣の首を切り落としたジェムニールの笑い顔に怖気(おぞけ)が走った。


 生き物が死ぬのを見るのは、2度目だ。


 1度目は、この異世界で覚醒してすぐだ。エルバーラの記憶と危機感でいっぱいいっぱいだった。助けてくれたバフコさんが倒したのも一瞬だったし、すぐにビーツくんが〈収納〉したので死骸を見ないですんだ。


 だけど今はーー。


 ショックだった。必死に猫の姿を探してしまう。


「マールっ、マールっ」

 ふらりと立ち上がり、走って鉄箱に入ろうとしたら、ギーヴに抱きとめられた。


「もう食べられちゃったんだよ、エヴァ。すぐに浄化するからお腹を割いて確かめさせてもあげられない。ごめんね」


ーー食べられちゃった・・・?


 言葉が理解できなかった。涙がぶわりと湧き上がって、怒りに身体が熱くなった時。


『大丈夫』

『主が逃した』

『猫は無事』

『主はエルバーラの泣き顔が見たいだけ』

『主はエルバーラを泣かせたいだけ』

『主はエルバーラの涙を舐めたいだけ』


 視界を横切る見慣れた光達。

 そして、いつものチクリ屋(妖精たち)とは違う、上品(エリート)なチクリ声だ。


ーーなにそれっ!?


ーー泣き顔を見たい!?


 信じられなくて、ギーヴの顔を見れば、ドヤ顔が隠しきれないような、楽しむような顔!


「っ・・・それがあなたの狙いなの?」


ーー信じらんない!信じらんない、ほんとにっ!


ーーなにっ、ドSなのっ!?腹黒設定は知ってたけど、まだ子供でしょっ!悪趣味すぎる!


ーー本気で、ほんと〜〜〜〜〜にっ、腹が立つっっっっ!!!


 愛猫(マール)が無事で安心したのと、抑えきれない怒りで踵を返す。


「ーーもういいわっ」

「エヴァ?」


 腕を掴まれても振り払おうとした。その時、侍女が慌てて駆け込んできた。

「第二王子様がーーお出ででございますっ!」


ーーシャルモン殿下!?


 寸前まで、泣き顔の上に怒り心頭だった私は、気持ちを切り替える間もなく、突然の王子の訪問を受け入れざるを得なくなった。


「やあ、婚約者殿。ごきげんいかがか?」

 侍従と護衛騎士を複数従えて、第二王子がやってくる。


ーー応接室じゃなく、ここに!?


ーー顔洗いたい、服も髪も整えたいのに、どうしよう!


「よ、ようこそお越しくださいました、シャルモン殿下」

 内心で焦りながらも、ゆっくりとカテーラシーで頭を下げる。

「この様な姿で・・・この様な場所までお越しいただき申し訳ございませんっ。すぐにお茶の用意をーー」


「いや、急に来たのだ。気にしなくて良い、楽にしてくれ。それよりここはずいぶん血生ぐさいところだな。何をしていたのだ?」


 鉄箱の事を聞かれて、ジェムニールが緊張したのがわかる。


ーー酷いことをしているって、自覚があるのかしら。


 護衛騎士が建前みたいな理由でごまかして、ジェムニールは第二王子から「よい心掛けだ」とか言われてる。

 いつか破滅しちゃえ!と私は悪口を思い浮かべる。


 第二王子は、放っといてもいいドSのギーヴにも声を掛けた。


ーー優しい王子様。なのに、操られているだけって・・・ホントなのかな。


 訪問した神殿で手に入れたネックレスをプレゼントするために、わざわざ視察の途中で寄ってくれたという。


聖花(ホーリースター)の花弁をじゅえきで固めたものらしい。きれいであろう?」


 そう言って、首にかけてくれたネックレスが可愛い。

 契約のペンダントしか身につけていないので、単純にプレゼントが嬉しかった。


 しかも第二王子は首を傾げて、突然エルバーラの頬に触れた。


「ん?泣いたのか?」

「こ、これはーー」

 うろたえる私を気遣うように、涙の跡を指で拭ってくれる。


ーー気づいてくれた、優しい子・・・。


「だ、大丈夫です」

 少し恥ずかしくなって誤魔化そうとすると、第二王子はすぐに冷やしたほうがいいとアドバイスまでくれる。


「なにかツライことがあったのか?」

「ーーいいえ。お優しいお心遣いありがとうございます・・・このネックレス、とても嬉しいです」

 私は自然に微笑むことができた。


ーー黒魔術に洗脳されているという第二王子。でも、このなにげない優しさは本物だって信じたい。


 将来、婚約破棄することになっても、私は第二王子の優しさを信じたい。

 そしてその優しさに、少しでも報いたい。


ーー私の〈光魔法〉でシャルモン殿下の黒魔術を解けるなら、私は必ず使えるようになってみせる。


 私は、改めてそう強く思った。




好感度

ギーヴ↓

シャルモン↑


な出来事でした。

知らないところでチクられていたギーヴくん(笑)

もうちょっとだけエルバーラ視点続きます。

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