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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第4章
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エルバーラの献身2〈愛猫〉

いつもありがとうございます。


注意)残酷表現ありです。

読み飛ばしても、本筋に影響ありません。


エルバーラ視点です。

 まだら模様の猫はとても人なっこかった。

 どこからやってきたのか、エルバーラが庭に出ると、声を出して近寄ってくる。

 使用人が餌を与えているのかもしれない。


 その日も私が庭に出ると、マールと勝手に名付けた猫は、足にまとわりつき、かまってと甘えてきた。

 私は壊れたままの噴水の縁に腰掛け、マールを膝にのせていた。


『あ、王子の雛が来たよ』

『最近、どんどん強くな〜るぅ』

『王子の雛、剣術しに来たんだよ』

『意地悪兄のところ』

『魔法も上手いよ』

『エルバーラ教えてもらったら?』


 その頃、館にはギーヴィスト=フィン=モーグが兄のところに頻繁に遊びに来るようになっていた。


 彼が来ると、私の周りにいる光達はいつもソワソワする。


「気になるんなら、会いに行けばいいのに」

『王子の雛、魔力強い』

『弾かれるのコワイ』

『逆鱗も怖いよ』

『王子の周りのエリートも怖い』


「エリート?」

『妖精の貴族?』

『妖精の親方?』

『妖精の側近?』

『妖精の・・・』

「分かったわよ、あなた達より偉いってことね」


 マールをなで撫でしながら、私は独り言をつぶやく。


 光達との会話は、重要なことよりくだらないこと、悪意のあることの方が多く、慣れてきた私は館の中では振り回されることが少なくなっていた。

 それにちょっとだけ、光達との会話で私の心が慰められていた。


 誰にも関心を向けられず、誰にも咎められなかった私は、だから油断してしまった。


 このフランチャスカ侯爵家には平穏な場所などなかったのに。




 ある日、突然別館にやってきたジェムニールに、私はただ驚いた。膝のぬくもりを奪われて、ようやく慌てた。


「やめてっ兄様っ!」

 首の後ろを掴まれ、ぶらりと揺れる猫の姿に、血の気が引く。


「行こうぜ、ギーヴ」

「ーー殺したのか?」

 一緒にいたギーヴが心配そうに聞く。

「・・・っ」


ーーお願い、止めてっ!


「まだだぜ。餌として元気に逃げ回らないと面白くないだろ」

「魔毒大鼠に追い掛けさせるわけか」


「逃げ足が速いんだよ。でも魔導具で拘束すると魔毒大鼠を倒す意味がねぇだろ。で、(コレ)を追い回す魔毒大鼠を俺達で倒すんだ」


「猫じゃなく俺達に襲いかかって来るんじゃないか?」

「より小さい物を追いかける(さが)なんだってよ」


「ふ〜んーーで、エヴァも見に来るの?」

 ギーヴに聞かれて、私は震えた。

 残酷すぎる!


「ヤメて・・・マールをっ・・・」

「うるせぇ」

「魔獣の餌なんてヒドいっ、兄さま返してくださいっ」

 私は言葉を振り絞って、なんとかジェムニールを止めようとした。



「返す?勝手に住み着いた野良猫を始末して何が悪い。むしろ俺達の訓練に役立ててやるんだ。感謝しろよ」


「野良猫なんかじゃありませんっ!マールはっ、マールはっわたしのーー・・・っ」

侯爵家(ここに)お前の物はなに1つないんだよっ!ーーそうだ、お前も見物しろよ。ギーヴ連れて来い」


 ニヤリと笑うジェムニールは、いつも残忍だった。

 

 私がこの屋敷に引き取られて初めての夜、いきなりあの鉄の箱の中に閉じ込められた。


 鉄の囲いの中には、檻があり、中には複数の魔獣が閉じ込められていて、唸り声や檻に体当りする音、爪のひっかく音が響いていた。


 鉄箱の外で、ジェムニールは声を立てて笑いながら、

「檻を開けたら、お前は何分で食べられるんだろうな?数えてやるよ」


 そう言って、高い声で数を数え始めた。

 

 怖くて恐ろしくてーー。


 檻の側から離れても魔獣の声や息遣い、放出される重い魔力からは逃げられなかった。


 いつ檻が開けられるの。

 いつ魔物が襲い掛かってくるの。


 隠れる場所のない鉄の囲いの傍らで、身を縮めて恐怖に震えていたあの時間。


 恩人達のことを考え、生きなくちゃ、と必死に気持ちを保った夜ーー思い出すだけで、身体が萎縮して震えてきた。


「大事な物を作らない方がいいよ」

「ギーヴ・・・」


 彼の言葉に、後悔が広がる。

 私が迂闊に、猫を構ったりしたから。

 だからジェムニールに目をつけられてしまった。


ーーエルバーラは虐げられる存在。


ーーその事を忘れてのんきな気持ちでいたなんて・・・彼の言うとおり、この家で大事なものなんて作っちゃいけなかったのに。


「行こっか」

 ギーヴの促す声と掴む手が、ひどく冷たく感じた。

 鉄箱の側に座らされ、残酷なショーを見学しろと言われる。


「ギーヴお願いっ、お願いだからマールを助けてっ」

 彼の服の裾を掴み、必死にお願いした。


 ギーヴなら、ジェムニールの気持ちを変えてくれるかもしれない。


ーー侯爵から侍女を救ってくれた、あの時のように。


 だが。


「ごめんよ」

「うっ・・・なんでよぉ、にがしてくれるだけでいいのっ!魔獣のえ、えさなんてひどすぎるっ」


 涙が溢れてきた。


ーー優しくて大人しい()なのに。私が構ったから・・・。


ーージェムニールが私を嫌ってることはわかってたのに!


 胸が苦しくて、ただ助けたくて。

 すがったギーヴはーー。


「・・・っ」

 突然、目の横を舐められた。


ーーへ・・・?


「エヴァの涙は甘いよねぇ」

 両方の目じりを舐められて、頭が真っ白になった。


目じりを舐めるのは、5歳児はセーフ?

でもギーヴくんは中身アウト。。。


幼稚園児って、結構唐突で積極的ですよね〜

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