家出からの病欠
覗いていただきありがとうございます。
木曜更新なんですが、休みだったので。
次の更新は週末になります。
「坊っちゃん・・・踏み台にするなんて、ひどいっす。置いていかないでくださ〜い〜」
どうしてギッシュがいるんだろう。
ーーとりあえず、反抗期中なので、無視しておこう。
「ーーで、ハーピーの爪は基本5本なんだが、時々手のひらの下ーーここに小さい爪がある個体がいる。それがオスで、一番金がいい」
「どこですか?・・・あぁ、この小さいの?爪?」
翼の先に鋭い爪が5本、手のひらのような毛の塊があり毛をかき分けたところに、他の半分ほどの大きさの爪が隠れていた。
「薬になるらしい」
なるほど、と頷く。トビーは解体用の短剣で、簡単に6本の爪を剥がし、水魔法でハーピーの血を流した。
「ハーピーにオスがいるんですね」
「ウヒャぁ、爪大きいっっすね!!」
「さかり・・・あー、発情期って分かるか?」
「もちろん、分かります」
「わぁ、ハーピー顔が怖いんっすね〜目が青いっすー」
ギッシュはむしむし。
「群れの一番強い個体が発情期だけオス化するんだ。で、子作りーーまぁ、ナニした・・・あとに、栄養つけるため群れを率いて人族を襲うことがある」
「トビー、普通に喋って下さい。僕、冒険者になるんで、年齢身分不問でお願いします。普段のしゃべりで」
ちょいちょい、言葉を迷うトビーに僕はそうお願いした。
「あ・・・いいのか?」
「はい」
にっこりはっきり、力強く頷く。
「ひゃぁぁ、坊っちゃん、ハーピーの翼です!でかい〜」
のんきに羽を広げて喜ぶギッシュ。
ーーうるさいよ、もうっ!
「ソレ腕だよ、ギッシュ・・・その羽毟ってね」
「・・・えっ、腕!?」
ギョッとした表情で、ギッシュはハーピーの腕を放り投げる。
「怖いなら、馬車にいたら?」
「ひどいっす!坊っちゃんの行くところに、第一侍従の俺っちが行かなくでどうすんすかっ!」
いつから侍従に順番ができたんだよっ、しかもお前は見習い!って言いたい僕。
「だいたい、どうやってここに来たんだよ」
「ぇ・・・馬で」
「ギッシュ、マジ噛みされるぐらい、馬に嫌われてるよね?」
「ぎくっ」
擬態語、声に出すかなぁ〜はぁぁぁ。
「チャンクス、いるんでしょ?」
「ぼっちゃん〜」
ギッシュの情けない声はナチュラル無視して、周りを見回せば、辺境伯領の騎士に紛れて、羽の入った袋を結んでいるチャンクスと目があった。
シャツとズボン、腰に帯剣のチャンクスは、辺境の騎士達に混じっても違和感がまったくない。
ーーもともと護衛騎士だもんねぇ〜。
「主、ご無事で何よりです」
「いつからついて来てたの?」
「追いついたのは、ハーピー襲撃前ですね」
「戻って、って言っても聞いてくれないよね?」
「我々は主の側近ですので」
「・・・まさか、アンナとスクナも?」
バレるのがこんなに早いとは思ってなかった。
「アンナ様は、本館で調整して頂いてます」
チャンクスの言葉に、スクナはいるんだ、と思う。
「ギッシュも本館待機でいいんじゃない?」
「ひどいっすひどいっす〜坊っちゃんには俺が必要っす〜」
耳元でがんがん叫ばれて、僕は耳をふさぐ。
「騒ぐと送り返すよっ!」
「んぐっ」
すぐに口を両手で塞ぐギッシュは素直だ。
ちらりと目線を向け、その様子を見つめるチャンクスが、何を考えているかは謎だ。
「というわけですので、辺境伯領まで、護衛をさせていただきます」
なんだかんだで、この二人仲がいい。特にギッシュは、足りてないところをチャンクスに補ってもらって、余りあるっていうか・・・。
「僕、反抗期で、家出中だからね!ギッシュの面倒は見ないよ?」
「大丈夫です、引き続き〈しつけ〉中ですので」
後半部分は小声で告げるチャンクスに、いつも通り、深く突っ込まない方がいいような気がした。
「それに主、〈家出中〉は間違いになります」
「間違い?」
すっと渡されたのは、押印のない白い封筒。モーグのオリジナル魔法がかけられたものだ。
「公爵からでございます」
「お祖父様から?」
「はい。辺境伯夫人にも、同じくお渡ししております」
受け取った僕は、トビーに断って馬車に戻る。
うるさいギッシュはもちろん置き去りで、トビーのお手伝い、ハーピーの羽むしり業務である。
馬車に腰を落ち着けると、さっそく封筒を開けた。
「・・・・・・僕、病気?」
「王妃さまの召喚ですので、拒否する理由が必要です」
「なるほど」
僕は病気でしばらく王都を離れ、辺境伯領で療養することになったらしい。
手紙の内容はこうだ。
僕が家出した後、王家からの使者があり、王妃が僕をお茶会に招待したいという。
両親を亡くした僕を慰めたい、特に幼馴染で同級生のハナさんの話をしたい、という建前で。
また、婚約者である王女との交流を、この機に本格的に始めてはどうか、ということ。
あと王家にある水晶に一度、魔力を流して欲しい、ということ。
その要望が、召喚という名の強制で書かれていたらしい。
モーグ一族としては、僕が一族当主になった今、王女を婚約者にしておくメリットより、デメリットの方が大きくなった。
というのも、交流という名のもとに、まだ幼い僕を王家に取り込まれては困るからだ。
ーーテドさんハナさんの防波堤がなくなったからね・・・って、簡単に王家に取り込まれる気はないけど。
トリッシュお祖母様は王女を嫁にって希望してるみたい(嫁複数の子だくさん希望)だけど、一族は、ね。
それに僕はすでにエルバーラに〈病んでいる〉わけだし。
それに、王家の水晶に魔力を流して欲しい、って要請も絶対受けられない話だ。
僕の魔力は血鎖式で一族の杭に繋がっている。
「パーティーで第二王子が持ってきた親書・・・水晶に魔力をってことだったのかな?」
「はい。執事のランダからそのような内容であったと聞いております」
「もう承れないね」
当主になる前なら、気軽にできたけれど。
「公爵もそのようにお考えです。この期に王女との婚約白紙に動かれるそうです」
「お祖父様が動いてくれるの!?」
〈棚からぼた餅〉の展開である。王女との婚約を無くそうとしている僕には、ラッキーな話だ。
「白紙になると嬉しいけど、その後従姉妹と婚約、とかならないよね?」
「なんとも言いかねますね。公爵のお考えは伺ってませんので」
「うーん。・・・ま、僕としてはいい感じなのかな」
「病気名目で、学園には通えませんが」
お祖父様に通園をお願いしようとしていた僕の意向を知ってるチャンクスは、いいのかと確認してくる。
「仕方ないよねぇ・・・もともとこの家出も、身分を隠して冒険者しながら、リンダお祖母様たちーー辺境領で鍛えてもらいたかったからだし」
「騎士団では駄目だったのでしょうか?」
モーグ騎士団に所属しているチャンクスとしては、嫡子の教育を、他家に委ねるのは、矜持が疼くのかもしれない。
「僕、勇者になるんだよ」
「・・・?」
一瞬浮かんだチャンクスの、はぁ?な顔がおかしい。
「はは。モーグの守りの剣じゃなくて、やっつける剣術を身につけたいんだよねぇ」
ーーそれぐらいじゃないと、あの魔王のような黒騎士に一太刀も届かないだろうから、ね。
サイドストーリー
チャンクス✕ギッシュ進展中・・・てな話は書く予定はありません(笑)
次から4章になります。
起承承転結の承ですね。この章が真ん中ぐらい?の予定です。
ジャンルカテゴリーどんどん迷子中。




