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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第3章
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家出

 乙女ゲーム。

 おとめ、ゲーム・・・。

 おとめ、の、げぇ、む・・・?


 どうやら前世の〈俺〉はそのゲームをしたことがなかったようだ。マリ◯の記憶しか沸き上がらない。。。あと、ドラ◯◯?ゼル○?


 それでもなけなしの、前世の記憶のすみに引っかかったのは、大学での食堂のこと。


 金欠で280円のうどんをすすっていた背後で、きゃらきゃら笑う女の子達の会話が聞こえてきたことがあった。


 その時は、たまたまワイヤレスイヤフォンをアパートに忘れて来ていて、動画を見るわけにもいかず、スマホの画面をぼーっと眺めていただけだった。


「◯◯王子攻略できた?」

「それがぁ〇〇が邪魔してきて、好感度あがらなかったのっ」

「あぁ〜あの悪役令嬢でしょ。多すぎだよねぇ〜!まだまだどこのルートでも出てくるよ、あのキャラ」

「うわぁ〜ホントじゃま令嬢」


ーーの・・・この、悪役令嬢?


 残念ながら〈俺〉にも〈僕〉にもこれ以上の情報はない。


ーーでも、乙女ゲームや悪役令嬢って、間違いなく日本の表現だ。ゲーム、アプリ?


ーーあの吹き出し、まるでゲームみたいだったよね。


 そういや、異世界転生の話が流行りはじめてるって、同級生の誰かが・・・ーー。



「ぎゃあ、坊っちゃんっっ」

「ーー」

 耳から入った叫び声が、心臓に突き刺さる。ドドドっと激しく脈打って、僕は無理やり目が覚めた。


「坊っちゃん、坊っちゃんっ、ハーピーっすぅぅぅ!」

 僕の頭を抱え込んで、足をドタバタする音。


「ギ、ギッシュ、放せっ!く、首がしまるっ」

 ヘッドロックをかます侍従見習いから、ようよう身体を引き離し、馬車の窓から外を見ると、丁度切り裂かれたハーピーが窓に張り付いて、断末魔の表情をこちらに披露しているところだった。


「ひぃぃぃぃぃぃ!」

「うるさい、ギッシュ!」

 耳を抑えて、文句を言っていると、馬車の扉が突然開けられた。


「大丈夫?すごい声が聞こえたから」

 魔物の血を数滴顔に散らせて、シャツとズボンの軽装姿の、女性がのぞき込んでくる。


「リンダお祖母様、すみません」

「ギーヴくん、目が覚めたのね?よく眠れたかしら?」


「はい。ギッシュが叫ぶまではぐっすり・・・ハーピー討伐終わったんですか?」

「ええ。これから、羽と爪を取って燃やすのよ」


「僕も手伝いたいです!」

 ギッシュの背中を踏み台に、僕は馬車の外にぽんと飛び出た。


「トビー、ギーヴくんに解体見せてやりなっ」

 リンダお祖母様が剣をふるって鞘に収めると、ハーピーの死骸を引きずって集めている若い騎士のひとりに、そう命じてくれた。


「御曹司、こっちだ」

「うん」

 ついていくと、すでに集めた死骸の解体をしていて、必要部分を切り取った後は、穴の中にまとめて捨てていた。


「ーー気分悪くねぇか?」

「なんで?」

 僕はキョトンとして聞く。


「王都の上位貴族のご令息は、ハーピーの名前だけでトラウマになるって聞いてる」

「ないない!僕、魔獣なら何度か倒したことあるよ」

 ジェムニールの無茶振りが、こんな形で役に立つとは。


「それに僕、辺境伯領で冒険者するんだ」

「あ・・・本気だったのかよ」


「ギーヴくん、それはこのリンダさんに勝ってから、ってお約束でしょ?暴走しないでね」


「お祖母様、勝ってからじゃなく、手合わせしてから、です。お祖母様に勝っても負けても、冒険者します!僕、お祖母様よりも強くならないといけないんで」


 そうーー僕は家出して、剣と魔法の修行をすることにしたのである。


 トリッシュお祖母様に、従姉妹を許婚にと聞いた時、僕は本人の前でもはっきり断った。


 だが、トリッシュお祖母様はモーグ以外から嫁がれた方で、モーグの〈病み〉への理解が少なかった。


 むしろテドさんの〈()み〉を、どうにかできなかったことを悔いているらしく、僕への圧がすごかった。


 色々ーーほんとにいろいろありすぎた僕は、プツリと切れてしまって、もうどうでも良くなってしまったーーエルバーラ以外のすべてが。


 そこで家出することにした、辺境伯爵領に。


 葬式の翌日に、辺境に帰ると挨拶に来ていたリンダお祖母様の馬車に、モーグオリジナル魔法を駆使して忍び込んだ。


 自室には、『とうぶん、当主も当主のための勉強もしません!おじい様おばあ様のせいですから、探さないでください』


 と、お祖父様とお祖母様の罪悪感をくすぐる手紙を置いてきた。


 そして王都を出て、次の休憩場所で、僕はリンダお祖母様に見つかり、泣き落としと説得と逃げの魔法を駆使して、ようやく辺境伯領へ同行することを許してもらえた。


のに。


「坊っちゃん・・・踏み台にするなんて、ひどいっす。置いていかないでくださ〜い〜」


 どうしてギッシュ(こいつ)がいるんだろう。



以後、〈病〉→〈病み〉に変えます。

闇落ちなんですが、ちょっとニュアンス違うなぁと。

もちろん病気でもないですし。

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