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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第3章
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血鎖式2

 左右に大きく開かれた扉の先ーー大広間へ1歩踏み出せば、前世の〈モーゼの十戒〉の海割れならぬ、一族の当主達が左右に割れた。

 そのど真ん中を行くお祖父様達の塊の後ろに、アンナとチャンクスと共に引っ付いて、おずおず歩く僕。


ーーなんの花道!?


 思わずキョロキョロしてしまうと、アンナの父親であるユールエ伯爵に気づく。その近くには、テドさんの伝言をよく伝えに来ていた法務部の四等書記官のモルグさんやキリングさん、法務部の他の官吏の顔が何人も見える。


 皆、お祖父様が近づくと胸に手を当てて、お辞儀をするので、目を合わせることもない。


ーー法務部って、もしかしてほとんどがモーグ一族!?

 世襲なのか癒着なのか、不穏だがこの異世界では許されていることなの?


ーーあ、ハングも!?領地から来たの?わざわざ?レイーニー達も。


 懐かしい、領地の執政官や侍女も数人いた。


 大広間の前の方には、3段ほど高くなった場所に、講台のような、聖卓のようなものが置かれている。それを中心に床には、見覚えのある古い魔法陣が描かれていた。


ーーご先祖様の魔法陣だよね?何かの儀式?


 魔法陣の背後に立ち、向き直るとこの世界で初めて目にする大勢が一斉に頭をあげた。


ーーこの間の、7歳のパーティーよりもずっと多い・・・しかもみんな正装。あ、家庭教師のベニス先生、ディーダー先生も?端に、家令のマッシュとギッシュや侍女頭のテルもいる・・・。


ーー僕、戴冠式でもするの?


  一瞬、不敬な考えが思い浮かぶほど、みんなの態度がうやうやしく真剣だった。


 でもその様子はーー戴冠式というよりも、アレだーーヤクザの(さかずき)。絶対的関係の、疑似親兄弟の契約を結ぶかのような緊迫感だ。

 ただ見届ける戴冠式じゃなく、裏切るんじゃねぇぞ、って結束を個々に求めるような、アノ迫力ある感じ?


 そんな(らち)もないことを考えていると、お祖父様が台の前に出て、腹の底からの太い声を、大広間に行き渡らせる。


「一族の(くひ)よ、よくぞ集まってくれたっ。

 此度は急なことであるが、モーグの(ことわり)によりテオドールが当主を下りることとなった。モーグの律と血は嫡男ギーヴィストが受け継ぐことになるーーよって、新たな血鎖式を行う!」

「「「はっ!」」」

 一斉に、全ての人が片膝を付いて、胸に拳を当てる。波がうねるような、重い音が響いた。


ーーえぇぇぇ、心臓を捧げろ、なんて言わないよね?!圧がっ、圧が、顔が怖すぎる。


 ドン引く俺。1歩下がりそうになった時、お祖父様が振り返って僕を呼ぶ。


「ギーヴィスト=フィン=モーグ。こちらへ」

 えぇ〜。。。行きたくないっ、と足が重くなる。

「・・・ギーヴィストさま、前に」

 アンナに背中を押されて、こわごわ魔法陣を踏む。台に近づくと、お祖父様が僕を前に促した。台は僕の胸ぐらいの高さがある。


「右手を台上に載せて、魔力を流すのだ」

「ーー右手?」

 なんで、と聞ける雰囲気でもなく、僕は恐る恐る右手をのばす。台上は平らな板ではなく半円にカーブし、水晶のように透明だった。


「ーー魔力は通せそうか?」

 お祖父様が小声で心配してくれて、ちょっとだけ不安が和らいだ。

 どうなるかさっぱりだが、さっさと終わらせてこの緊張感から解放されたい。


「はい・・・」

 僕はお祖父様に小さく頷いて、台に向き直る。下から向けられる多くの視線にひりひりしながらーー僕は魔力を送り出した。


 その瞬間、台を中心に描かれていた線の一つ一つが赤く輝き、古い魔法陣が起動する。


 初代の魔法だーー強烈で重い魔力が僕の魔力と混ざり合い、魔法陣から何十何百の赤い鎖が出現した。蠍の尾のように持ち上がり、蛇のように飛び上がって、凄い勢いで、一族ひとりひとりの拳にーー心臓に突き刺さる。


ーーキモっ!!!


 ウネウネする鎖も、心臓に突き刺さる赤さも、絡まり合う鎖の塊もーー血の凄惨さを想像させる。


『忘れるなっ!』

 突然、女性の威厳ある鋭い声が響きわたった。


『我らモーグは決して王権に忠誠を誓わず、律を持って王国を王国たらしめる者である!』


『忘れるなっ!我ら一族が受けた恥辱を、苦しみを、悲しみをーー怨嗟の全てを律する者として、何十何百何千の時を経たとて、我らはただ一つの我らとして、ここに立つっ!』


『我がモーグよっ、完璧なるモーグよっ!今こそ血に連なりて、一つとなれ!!』


 響く声とともに、鎖が僕の心臓に刺さっていることを自覚する。


 多種多様な魔力が僕の中で結びつく、その重さの気持ち悪さ。


ーーなんだよ、コレ・・・。


ーーホント初代は狂ってる!


ーーなんで僕がみんなの生殺与奪権、握らされてんだよっ!?


ーーしかも、サラッと王権に忠誠を誓わないって・・・テロ集団かよ!?恐ろしすぎる・・・。


 青ざめてしまった俺は、魔法陣がおさまり、血の鎖が消えるまで、呆然と動けないでいた。


「「「我らモーグ一同、王権に忠誠を誓わず、律を持って王国を王国たらしめる者!血に連なる我らは、今日ここに長たる、ギーヴィスト=フィン=モーグに忠誠を誓う」」」


 お祖父様の言葉に続いて、一族が一斉に唱和する。

 膝をついて胸に手を当てたままの、アンナやチャンクスに、腰が引ける。


ーーえっ・・・僕、まだ7歳・・・は逃げる理由になんないんだ・・・異世界!!!!


 僕は若干、涙目になったのである。



恋愛からどんどん遠ざかる・・・なぜ・・・。

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