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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
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7歳のガーデンパーティー3

「ジェム、迷路庭園って興味ない?」

 僕は気をそらせるように、ジェムニールに言う。誘って、テラスの庇から外へ出た。


 階段の前までくれば全体が見渡せる。

 眼下に広がるのは、池と言うには小さく、人工池と言うには小さすぎる噴水であり、その向こうに四角い緑に囲われた、巨大な幾何学模様の庭が見える。


「半時ぐらいすれば準備できるから、みんなで迷路を楽しもうよ」

「すげぇ、巨大迷路じゃん。お前んとこに、伝説の庭師がいるってホントだったのかよっ」

 予想通り、ジェムニールは目を輝かせている。


「伝説かどうかは知らないけど、庭師がお祝いにって、迷路庭園を作ってくれたんだ。ーーほら見えるだろ、真ん中辺りの緑の壁が動くんだよ。庭師が位置を変えてくれてるんだ」


「まだ行けないのかっ!?」

 ジェムニールはすげぇと叫んで、今にも階段を駆け下りそうだ。

 その声で周りが聞き耳を立てはじめる。


「安全のために死角に使用人を配置するから、迷路を楽しむときはみんな一緒だよ。ゴールが北の東屋になるから、そこにお菓子や飲み物の準備もいるしね」


 緑に囲まれた迷路の中を、荷物を抱えた数名の使用人がまっすぐ向かっている。通った後から、複雑に模様が動いていた。

 準備の様子をこうして見せつけるのも、パーティーの演出の1つだった。


「さすがだなっ、こんなの初めてだぜっ!迷路は王宮にもきっとないぜ」

「王宮には必要ないよ」

「それもそうか。警備上、危ないだけだしな」

 ただの脳筋ではないジェムニールが、すぐに自分で答えを出す。

(ジェムのこういう頭の回転の良さが、時々怖いんだけどね)


「誰が一番早く、東屋にたどり着けるか競争だね」

「よっしゃぁ!俺が絶対一番だ。ズルすんなよ」

「しないよ、楽しめないし。エヴァと一緒に行こう」

 そこでジェムニールが、またニヤリと笑うーーあんまり顔を近づけて来るなって。


「へぇ~俺を先に行かせて、二人っきりになるつもりだろ?」

「そんなこと思ってないよ。お互いに王家の婚約者がいるだろっ」

 僕は小声で強く言うーーもちろん、腹の中ではアタリです、と嘲笑う。


 なんて言えば、ジェムニールが動くのかーーどう動いてくれるのか、さすがに読めるようになってきたと思う。


「・・・先に行ってやろうか」

「なに言ってるの。周りに使用人も侍女侍従もいるからね!」

「ふーん。いいのかぁ?もうこんな機会はないぜ」

「・・・煽るなよ」

 ちょっと弱った声を出してみる。


「悲恋だよなぁ」

 ジェムニールはすごく楽しそうだ。失恋決定の僕を憐れんで虐めているのだ。でも僕から見たら、意外にロマンチストだよ。ねぇ、ジェム。


「そんなんじゃないよ。とにかく、今日は僕が主役だよ。絶対にジェムニールを負かすからね」

「・・・おう」

 考えながら返事をした脳筋が、どう行動するのか、楽しみである。

 僕は期待を隠して、にっこりと笑った。


 その時、チャンクスが近づいてきた。声を潜めて告げる。

「主、第二王子のシャルモン殿下が御越しです」

「ーーわかった」

 眉間にしわが入りそうになるのを、笑顔で隠す。


 ジェムニールには、ちょっと挨拶してくるので後で、と約束して別れた。


 テラスに戻って、テドさんとハナさんに合流する。

 お祖母様たちの姿が見えなかったので、もしかすると、もう貴賓室に向かったのかもしれない。僕達も急いで本館に入った。


「ハナさん、王家は臣下のお祝い事に参加しないものじゃないんですか?」

「そうねぇ~バレたら不公平だって騒がれちゃうかも」

「じゃあなんで殿下がーー」


「シェリーが寄越したのかも」

「王妃様が?どうして」

「さぁ?」

 ハナさんは軽く首を傾げる。


 王子とモーグ家嫡子(ぼく)は、あくまで顔見知り程度の付き合いだ。


「ギーヴくんが穢れるのを心配したんじゃない?」

 昨日のリンダお母様の話だとね、とハナさんは言う。


「今日はまだフランチャスカ侯爵は来てませんよ。それにお祝いにしても、僕の婚約者はマナリーナ王女でしょ」

「マナリーナ王女はまだ4歳だもの。外に出せないわ。そうねぇーーシェリーが第二王子をすごく可愛がっているから、かしら」

「・・・えっ?」


「可愛がって甘やかして、コントロールしたいのよ。常に」

 僕は思わず、足を止める。昨日のお祖母様達との話を思い出したのだ。

 僕が忘れていたーー後継者争い、だ。第二王子は側室のお子のはずで。


「慣例に外れる王子ってーーほら、後継者争いに脱落させやすいでしょ。悪い(マイナスの)実績作りね」

「まさかーー」


「今日ここには、婚約者のエルバーラ嬢も来ているから、口実もあるし、一石二鳥かしら」

 爽やかに王妃様の思惑を推察するハナさんが、この時ばかりは魔女に見える。


(こんな小さい時期からーーいやもっと前から、王妃様は第二王子を排除すべく動いているんだ。・・・じゃあ、フランチャスカ侯爵家エルバーラとの婚約の意味は)

 ずんっと足が重くなる。


「ほら、ギーヴくん。早く行きましょ」

 ハナさんの催促と、ポンポンと肩を叩くテドさん。


ーー王妃様怖ぁ~、貴族怖ぁ~。


 僕は、絡み合う腹黒い糸を想像して、足を取られないようにしなければ、と強く思った。



迷宮庭園→迷路庭園に修正します。

造語に迷ったんですが、

迷路のように植木を配した庭園ということで。


更新は火、木、土曜日を中心に頑張ります。

豆腐メンタルと遅筆で、すみません。

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