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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
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少女の事情2〈出会い〉

◆◆◆◆


 助けられたわたしは、腰を抜かしていた。

 それを知った冒険者のバフコさんは、『幼児(・・)である』(ここ重要!)エルバーラを抱き上げ、バフコさん達の野営場所に連れて行ってくれた。


 その途中、包まれた暖かさと異性の匂いに懐かしさを覚え、エルバーラはボロボロと涙した。


ーーって、アラサーのわたしじゃないのよ。幼児なりに安心したのと、バフコさんに感じた父性に悲しくなっちゃったんだと思うのよね。


 だって、庭師のおじちゃんも元家令のおじいさんも、エルバーラにとっては使用人さんだから。どこか遠慮があることを感じていたみたいだしね。


 まぁそんなわけで、前世で男性に縁のなかった私が、逞しいイケメンに初めて抱っこされたから泣いているわけではないと、強く言いたい。


 だがそんなエルバーラちゃんも、焚き火の前にいたワッフルシルエットに、目を大きく見開く。

「遅かったにゃ〜バフコっち子供さらって来たんにゃ」


 そこにいたのはたぶん獣人だーート○ロのお腹よりは細く、ダヤ○よりは太っている、長靴と胸当てを付けた二足歩行の、モフモフ三毛猫の獣人だった。


ーー顔が猫!抱きつきたぁい。ここは天国!?


 夢の世界かと錯乱しそうになりつつ、わたしは焚き火の前に下ろされた。すぐに火の熱さで、目がシバシバする。


ーーあ、やっぱり現実だ。


「さらうわけねぇよ。親がいなかったんだ」

「おりょ、捨て子にゃ?」

「いや、服が違うだろ」

「ほんとにゃ」


「スーシャさん。ハイブリッドウルフの迷い子だったよ。小さかったけど、この子を襲おうとしてたんだ」

「小さいのにゃ?後で見せてくれりゃ」

「ここで解体する?なんか変な感じの個体だったけど」

「ビーツの収納に余裕あるかや?この後、バーサーベアーは狩りたいにゃ」


「いや、子連れで狩りはやめよう。このまま下りてこの子をを引き渡した方がいい」

 ポンポンと交わされる会話を聞きながら、私は焚き火に温められて、うとうとする。緊張が切れたのだ。


子猫(キトゥン)ちゃん、名前は?」

「そういえば、名前聞いてないね」

「・・・えるばーら」

 三毛猫さんとビーツくんに聞かれて、急に疲れを感じた。舌が重い。


「エルバーラちゃんにゃ?わては斥候のスーシャにゃ。こっちのおじさんが剣士のバフコで、こっちの駆け出し魔法師がビーツにゃ。わて達、この近く、サーズの街の冒険者にゃ。エルバーラちゃんは自分のお家がどこかわかるかにゃ?」


「わからないとおもう。エルバーラは『いえで』したから・・・」

「ひとりで、にゃ?」

「うん。ずっとあるいてて、まよった」

「サーズの街の名を、聞いたことがあるか?」

 考えるように、バフコさんが聞いてきたので、私は軽く首を横にふる。

「近くの村の子とは違うのかな?」

 ビーツくんが言う。スーシャさんも一緒に首を傾ける。

「・・・とりあえずご飯にするにゃ」

 焚き火の横にあった、大きめの飯ごうの蓋を開けて、スーシャさんが厚い大きな葉の上に、パンと肉を水で煮崩したようなものを乗っけていく。


「さぁ食べるにゃ。これが冒険者めし、干し肉のゲンパにゃ」

「ぼうけんしゃめし!」

 そのネーミングに心をくすぐられ、また匂いを嗅いだ途端、お腹がぐぅ〜と鳴った。


「ゆっくり食べろよ」

 面倒見のいいバフコさんが隣に座って、湿らせた布でわたしの手を拭いてくれた。広げた葉っぱを差し出してくれる。


 これって手掴みで食べろってことよね。ちらりと見上げれば、頷くようにあごで食べろと示される。


 わたしはおそるおそる、ちっちゃい3本指でつまんで、固まりを口に入れた。

 「おいし!」

 食感はねっとりしていて、塩味が効いている。干し肉って言ってたから、動物肉のクセのような苦味が後からやってくるが、わたしは嫌いではない。分類するなら内臓系のおツマミのような感じだ。


「食べられそうだな」

「ええ。ぼうけんしゃになれそう」

「そうか」

「エルバーラちゃんは冒険者になりたいのにゃ?それで家出したのかにゃ?」


「ううん。ーーぼうけんしゃっていいなぁって、あこがれるけど、たぶんムリなのよね」

「そうなのにゃ?」

「チチオヤなんだけどねぇ・・・最低な人間(ヤツ)で、イヤでイエデしたの。きっとぼうけんしゃはダメなんだろうなぁ・・・」


 エルバーラちゃんの記憶を探りながら、これからを考える。

 基本、幼女の記憶から得られる知識は少ない。

 それでも日本にはない、まったく別の仕組みの異世界だと分かる。


ーーお花が笑わないもんね。使用人の仕事も、今思えば魔法を使ってるっぽいし。


 母親と祖父男爵、乳母と庭師と元家令夫妻に、伝聞の父親侯爵だけの小さな世界だ。でも男爵の話から考えると、父親は間違いなく最低の人間のはず。


 この年齢で自立はできないし、このまま戻らなければ、離れたくないと願った別荘の家族に、危害が加えられてしまうだろう。


「もどるしかない・・・」

 ぼんやりモグモグ言うと、ビーツが不思議そうに見ていた。


「エルバーラは人族じゃあないのか?年齢不詳のエルフか妖精なのか?」

「3歳のにんげんよーーってエルフや『ようせい』っているのっ!?」

「いるよー見たことがない?」

 うんうん、と頷く。

「この国には少ないだろ。元は人間の国だと言うし」

「わてら獣人も少ないにゃ。でも、東の辺境伯領は妖精族のテリトリーにゃ」

「王都と南は、ドワーフが多いか」

「さすがに魔族や妖魔はいないよね」

「妖魔はありえないにゃー」

 ファンタジーてんこ盛りの話に、わくわくしながらご飯を食べ終わる。


 今日は一緒に野宿をして、明日サーズの街の警備隊の所に連れて行ってくれることになった。

 警察みたいな組織らしいので、なんとかお家に返してもらえるよう頑張ろうと思う。


 バフコさんの外套を借りて包まり、焚き火の色を感じながら、しみじみと思う。


ーーいい人たちだなぁ。


 すごく自然体だし、気づかいもすごくさりげない。

 助けてくれたのが、バフコさんたちで良かったな。


 エルバーラになった初めての夜、わたしは平和ボケした日本人そのもので、のんきに就寝したのだった。


ちょこちょこ修正してます。すみません。

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