開始前〈血筋〉
エルバーラは第二王子の婚約者だから・・・フランチャスカ侯爵が後ろ盾になる?
僕は王女の婚約者になるからーー距離を取った方がいい!?
ーーそういうこと!?
でもさ、それなら最初からそう言ってくれたらいいのに。子供の僕が貴族の勢力図なんてわかんないよ。
いや、でもおかしくない?
そうだよ、エルバーラと初めて会った時のお茶会で、彼女は王妃様のお気に入りだってハナさんから聞いていたし。僕の〈独占欲〉って特殊な性癖がブラックとして具現化してーー僕の方からお願いしたけれど、フランチャスカ侯爵の嫡子との縁を、取り持ってくれたのは、ハナさんやテドさんだ。
その上、王女様との婚約も、第二王子の侍従のお勧めで回ってきたわけで、しかも無しにできないけれど、自力でなんとかしても良いって、ハナさんテドさんは言ってたし。
だからきっとモーグ家としては、フランチャスカ侯爵の事は付き合っても付き合わなくても大丈夫なんだ、たぶん。
今の時点での王子王女の後ろ盾だって、それがすぐに敵対関係になるわけでもない。どこぞの物語と違ってね。王子それぞれの後見の仲がいい事は、王家にメリットがあるはずだし。
ということは、やっぱりリンダお祖母様に何か考えがあるのかな?嫌悪の気持ちだけでなく、辺境伯爵家の方で不都合ってことなのか。でもなんでパーティーの前に、王妃様の名前を出してまで、釘を刺しに来たんだろうか。
エルバーラと王妃様の仲は触れないほうがいいよね。藪蛇で、僕がエルバーラに〈欲〉があるってバレても面倒だろうし。それなら。
思わず考え込んでしまった僕が、ふと顔を上げると、僕以外の3人がお茶を飲みつつ、こちらを伺っていた。
「王位継承問題に関わっているとは、びっくりです。でも僕もようやく幼獣から人間のお子様になったところですし、第二王子も同じお歳ですから、果たして今の時点で王妃様がそこまで目くじらを立てられるでしょうか?・・・どうせ学園に入園すれば、ジェムとは疎遠になりますよ。学年も派閥も違うのですから。今だけの幼馴染です」
この建前で納得してくれないかな、僕はにっこり笑顔を浮かべる。
「ふむ。子供らしくないがーー合格だな」
「ギーヴ君の成長がすごいのよ。そこまで考えられるなら元の話をしてもいいわーーどうしたって、ギーヴ君自身が考えなきゃいけないことなんだし」
「そういうことだ」
「あのねっ、ギーヴ君、実はね〈古の契約〉が発動したのよ」
「・・・〈古の契約〉ってなんですか」
また知らないワードだ。
「精王との〈古の契約〉よ」
「ようせいおう。。。」
一気にメルヘンだよ。ぶっこんできたなっ、おいっ。
魔法や魔獣だけじゃなく妖精ね。なんでもありあり、そ~ですか。〈俺〉と関わりますか。意味がわからなすぎて、異世界ってだけじゃなく、貴族って奥が深いよね、って明後日の解釈で納得するしかないのかよ。
「辺境伯の血筋だな」
「辺境伯のご先祖は妖精王と人間の子供なのよ」
「私達、妖精王の子孫なの。ヒミツだけどねぇ~」
と言うトリッシュお祖母様、リンダお祖母様、ハナさん。
そーですか、ありがちっちゃあ、ありがちデスネ。
モーグ以外にも、まだそんなめんどくさい設定が、僕にありますか。聞きたくないんですが。
あれかな、小学校の入学前に、『実は貴方はアメリカ人なの』って日本人の両親に言われる感じ。髪も目も顔かたちも日本人、喋るのも日本語なのにねーーってそんな友人いた気がする。
現実逃避中の僕に気づいたのかどうか、リンダお祖母様が表情だけ厳かにしつつ、説明してくれる。
「妖精王の血筋が穢れると、王国に禍が起こるって契約でね、その禍の前兆として、王家にある水晶が曇りだすんだけどーー曇っちゃったのよ。で、調べたら、今世の血筋顕現はギーヴ君ぽいということで、王妃様がフランチャスカ侯爵家に近づくギーヴ君を注視しちゃってるの。もちろん王位継承の警戒もあるのだけれどね」
近づいたのが不自然だったってことなのかなぁ・・・ほぼ2年前ですよ、今更デスヨネ。
「ギーヴ君がケガレちゃうわよって」
「・・・フランチャスカ侯爵は、まぁ、穢れているっぽいですが・・・」
そうそう、とフランチャスカ侯爵嫌いのリンダお祖母様が、大げさに頷く。
でもさ、穢って、モーグ家の歴史の方が穢れてない!?
そう思ってハナさんを見るとハナさんは楽しそうに笑っていた。トリッシュお祖母様は淡々とお茶を飲んでいる。
なんだかなー疲れるなぁ。
もう知らないよ、〈禍〉なんて。
招待状も出してるし、明日はエルバーラからペンダントを奪うつもりなんだから、僕は僕の予定を変えないよ?
穢れてたって、フランチャスカ侯爵家にこれからも関わるし、ジェムニールとは幼馴染を続ける。
だってそれが僕の〈欲〉だから。
妖精王だかなんだか、リンダお祖母様も、トリッシュお祖母様も、王妃様もーーみーんなの思惑なんて僕は知らないっ。
僕はエルバーラの事しか考えたくないんだからねっ。
だから僕は良い子のフリで、お祖母様達の心配をあっさり流したのである。
主人公はチート妖精王子です、一応。




