表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第1章
14/57

愛猫1

 

 ◆◆


「おう、ギーヴ。いいとこ来たな」

 ジェムニールと剣の手合わせをするようになって数カ月がたった。

 フランチャスカ侯爵家での手合わせは週に数度だったが、家でも剣術を習い始めたおかげで、最近になってやっとジェムニールの無茶振りに対応できるようになった。

 魔力制御と剣術、貴族としての知識全般に加え、モーグ家特有の法律の基礎知識を学び始めるなど、僕の日々は恐ろしいほど忙しくなった。前世の〈俺〉の方が余程のんきな幼少期を過ごしていたんじゃないか。本気でうらやましい。


 とはいえ、今日も今日とて忙しくてもフランチャスカ邸にはやってきた。

 もちろん、言葉を交わせるようになったエルバーラに少しでも遭遇したいからだ。


「いいとこ、ってなに?またろくでもない事じゃないよね?」

魔毒大鼠マジックポイズンヌートリアが手に入ったんだ。面白い見世物考えたから来いよ」

 ジェムニールは裏ではなく館の奥に進んでいく。僕も後に続いた。


 見慣れた廊下を過ぎ、幾つか角を曲がり中庭も横切る。古い渡り廊下を渡れば小さな古い別館が現れた。

「ここに何があるんだ?」

「あれだ」

 別館に入らずに、手入れのされていない庭園の方へついて行くと、使われていない噴水がありその縁にエルバーラが座っていた。その膝上には斑模様の猫が丸くなって寝ていた。のどかで平和な空間をジェムニールがふみにじる。


「ジェムニール兄さま?」

 いぶかしむエルバーラに近づき、ジェムニールはその膝から猫の頭をガッと掴みあげた。猫がギャッと鋭い鳴き声をもらす。


「やめてっ兄様っ!」

 エルバーラが腕を伸ばして猫を取り戻そうとした。それを無視して、ジェムニールが俺に言う。

「行こうぜ、ギーヴ」

「ーー殺したのか?」

 猫の身体はだらりと伸び、ぶらぶら揺れている。

 背後で息をのむ音が大きく響く。横目で見れば、エルバーラが口元を押さえて真っ青になって追いかけて来ていた。


「まだだぜ。餌として元気に逃げ回らないと面白くないだろ」

魔毒大鼠マジックポイズンヌートリアに追い掛けさせるわけか」

「逃げ足が速いんだよ。でも魔導具で拘束すると魔毒大鼠マジックポイズンヌートリアを倒す意味がねぇだろ。で、コレを追い回す魔毒大鼠マジックポイズンヌートリアを俺達で倒すんだ」

「猫じゃなく俺達に襲いかかって来るんじゃないか?」

「自分より小さい物を追いかけるさがなんだってよ」

「ふ〜んーーで、エヴァも見に来るの?」

 僕が声を掛ければ、彼女は目に涙をためて立ち止まる。


「ヤメて・・・マールをっ・・・」

「うるせぇ」

「魔獣の餌なんてヒドいっ、兄さま返してくださいっ」

 言葉を振り絞るエルバーラを、ジェムニールは嘲笑う。

「返す?勝手に住み着いた野良猫を始末して何が悪い。むしろ俺達の訓練に役立ててやるんだ。感謝しろよ」

「野良猫なんかじゃありませんっ!マールはっ、マールはっわたしのーー・・・っ」

侯爵家ここにお前の物はなに1つないんだよっ!ーーそうだ、お前も見物しろよ。ギーヴ連れて来い」

 ニヤリと凶悪に笑うジェムニール。こいつは言い出したことを絶対に曲げない。


 エルバーラに嫌われるのはツライけど、たとえ僕がとりなしたって、何かが改善するわけじゃない。むしろ僕の見えないところでジェムニールが行動して、結果大事になる方が困る。


「大事な物を作らない方がいいよ?」

 僕はにっこり忠告してエルバーラの腕を掴む。

「ギーヴ・・・」

「行こっか」

 絶望してふるえるエルバーラが可哀相で、すごく可愛かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ