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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
第7章
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ドリィギア

暴力的表現あり。苦手な方はページを飛ばしてください。

 剣術場の裏に僕が着いた時、ドリィギアはすでに上級生たちに囲まれていた。その生徒たちは見覚えのあるフランチャスカ侯爵家門下の舎弟ばかりだった。


 その内の2、3人が特に顔色を変えて、ドリィギアを怒鳴りつけている。ドリィギアが何かを言って反撃をするものの、多勢に無勢で結果的に殴られたり蹴られたりして膝を折っていた。


 そしてその様子を、ジェムが見下ろしていた。舎弟たちの後ろで腕を組んだ底意地の悪い薄笑いを浮かべている。


 隠蔽魔法を使用しつつ、僕は彼らが身近に見える茂みに身を潜めた。


「良くも、騎士コースを選べたもんだなぁ」

「さすがインチキ野郎っ!騎士の面汚し!」

「顔の皮がぶ厚いぜ、見せかけの名門さんがよぉっ!!」


ーーどういう状況?


「約束破りの卑怯者は、さっさと土下座しろっ」

「頭を地面にこすりつけろっ!」


ーー約束破り?卑怯?


「お、お祖父様に言われてはっ仕方ない・・・だっ、ろぉ」

「はぁ〜?誤魔化す気か?」

「『おじいさまぁ〜』とか、俺達にそんな事情関係ねーし」

「二度と騎士にはなんねぇって約束したから許してやったんだぞっ。自分の言葉の重さも分かってねぇヤツなんか、最低だろ。目障りだ。同じ騎士だと言われても認めらんねぇ。だろ?」


 単に言いがかりをつけられている感じではない。突発的に起こった事件ではなく、起因とする諍いが学院以前の過去にあったのかな?と思わせるやり取りだ。


「こんな弱くて卑怯な奴が、軍神閣下の孫とか終わってんな」

「第二王子の側近候補に選ばれたのも、やっぱり七光かよっ。格好わりぃ奴、恥も誇りもないのかよ!」


 靴の裏で後頭部を踏みつけられ、地面に縫い付けられたドリィギアは起き上がろうとジタバタ動いていたが、背中も他の生徒に踏みつけられて身動きが取れないようだ。


「どうします?」

 押さえつけられているドリィギアの顔をのぞき込んでいた生徒の一人が、振り返ってジェムニールに伺いを立てている。


 やはりジェムニールが暴行の主犯であることには違いないようだ。


「聞くまでもねぇだろ。約束は約束だ」

 ジェムが自前の剣を掴んで、ドリィギアの側にしゃがんだ。


「なぁ、知ってるか?魔物に喰われた手足を白魔法の魔導具で完全に再生しても、精神は再生できねぇんだ。手足があっても、食われた感覚も痛みも恐怖も心に刻まれる。刻まれるとどうなると思う?残念なことに、手足があっても無いのと同じ、喰われた手足は動かなくなり、痛みをずっと感じんだ。すげぇよなぁ?人間の記憶ってヤツはーー」


 淡々と感想を告げると、ジェムニールはドリィギアの目の前でゆっくり剣を抜いた。


「『ボナペの英雄』の孫だったか?英雄様の孫だっていうお前の精神や記憶は、どんだけ丈夫だろうなぁ?」

 薄笑いを浮かべたままのジェムニールが刃を潰していない真剣をドリィギアの肩に突き立てた。


 それからは、ただのリンチーー拷問だった。喚くドリィギアの口を塞ぎ、肩や腕、足に剣をつきたて、怪我をさせた上で、魔導具で治療を施す。


 痛みと安堵と、恐怖と怒りと表情を変化させ、ゆっくりと気持ちを挫いていくジェムニールの陰湿さ、を僕はただ観察していた。


ーー・・・潰したいんだ、ジェムはドリィギアを。


 肩や足を狙うのは騎士にさせないためのように見えた。執拗にその場所ばかり傷つけては治療するという行為を繰り返していたからだ。


ーー恐怖を植え付けて・・・なるほど、植え付けられたから、ジェム本人に仕返しするのではなく、エルバーラに矛先を向けるわけか。


ーー怒りや復讐は本人にしろ!と言いたいところだけど、それができる気概も実行力もない所が笑える。


「さて、そろそろ僕の出番かな」

 白魔法で治癒されているものの、繰り返される痛みと恐怖に動けず、放置されたドリィギア。


 ジェムニールは壊れかけたドリィギアの耳元に何事か囁いた後、ドリィギアを放置して舎弟の生徒を引き連れてその場を去っていった。


 ひとり、地面に倒れ込んだまま、動かないドリィギアに僕は足音を響かせて近づく。


 蔑んだ表情を浮かべて、僕は意地悪く声をかけた。




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