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悪役令嬢は執着されてハメられる  作者: ちょしゃなげ
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侯爵と侯爵2

 


 って!!!


 ーーコイツ脳筋バカだろぉぉぉっ!絶対っ!


 お茶会の3日後、早速フランチャスカ侯爵邸にやって来た僕は浮かれていた。

 だってやっとエルバーラと会えるかもしれないんだ。幻で見た館にようやく僕はたどり着けたんだと、馬車から降りた時点で、招いてくれたジェムニールのことは忘れていた。


 だが、エントランスで執事に手土産を渡したその後で、螺旋階段を飛び降りてきたジェムニールにヘッドロック(羽交い締め)を食らわされる。

 無情にも、努力の薄笑いも身体も吹っ飛び、僕はもう少しで気を失うところだった。


 何しやがる!お子さまの首はまだか弱いんだから大事に扱え!

 と、罵倒する隙もなく頭を抱えられられて引き立てられたのは、屋敷の裏側にある鉄板に囲まれた獣臭い場所だ。

 気のせいでなければ、物騒な唸り声がいくつも聞こえている。


「ジ、ジェムっ、ここは何ですか!?」

「そうかしこまるなよ、なっ、お前と俺じゃん」

 昨日このあいだの今日(会って2回目)で馴れ馴れしくなる脳筋バカ。怒りで声が荒くなる。

「・・・ジェム、ここは?」

「短剣持ってきたか?」

 疑問を疑問で返されて、本気でイラっとくる。だがそんな僕にはお構いなしに、ジェムは嬉しそうだ。

 マイペースな奴に怒っても仕方ないと諦め、僕は持って来た短剣を見せる。


「よしっ。じゃあすぐに魔物退治しろよ」

「・・・はぁっ!?」

「この中に魔物がいるんだよ。やっぱり実際に使ってみねぇと武器の良さはわかんねぇだろ」

「ここに!?なんで魔物がっ!?」

「領地からこっそり運ばせてんだよ、言ったろ?俺の趣味だって」

 フランチャスカ侯爵領は王都の横、王族領の北だ。近いとはいえまさか運んでくるとは、呆れて言葉もない。

 そもそも魔物は危険だからこそ駆除するもの、人間に危害を加える場合(・・)だけ危険をおかして排除するものだと習ったーーのに、これっていいのかよっ!?


「今朝届いたばっかの魔獣だぜ。お前のために残しておいたんだ。せっかく立派な刃びかりの武器があんだろ。短剣ぐらい使わねえともったいないぜ。さっ、やってみろよ」

「い、いきなり!?」

 なんでそうなるっ!?と叫びたい。

「っ、えっ、魔獣討伐どころか見たこともないのに!短剣だって使うの初めてなんだっ」

「そりゃあ良かった。誰にでも初めてはあるさ」

「はぁっ!?」

「大丈夫だって。今回は魔導具で後ろ足を繋がせたし、獲物は初心者に丁度いい狂猪バーサークボアだ。的がデカくて簡単だぜ、良かったな」

「・・・えっ、えっ、ええっ!?」

「刺せばいいだけだ。さっさと行けって!」

「はぁ!?って、おいっ!くそっ!」


 強引に連れ込まれた鉄箱の中はうす暗く、魔物の匂いと封じ込まれた獣魔力の圧力に満ちていた。奥まで行くと大きな檻が三つあり、真ん中は空っぽだったが、左右の檻は獰猛な唸り声と体当たりの振動にガタガタと揺れている。その度に魔導具が発動しているのか、檻の柵が明るく光っていた。


 ジェムニールは全く怖がらずに左の檻に近づくと、点滅する魔導具に触れた。すると柵が地面にパタンと倒れて、黒い陽炎のような魔力をまとった狂猪が這い出て来る。


「さぁ、勇敢なところを見せろよ、ギーヴくん(・・)

 ニヤリと底意地の悪い笑みを向けられる。


 ーーコイツ、性格悪すぎっ!?


 馬鹿にしたいのか、それとも試したいのか?いや、面白がっているだけの脳筋バカだろ!!


 目の前の事態を棚上げしてそんな事を考えている内に、ジェムニールは入り口付近に移動し、いっちょ前に腕を組んで寄りかかっている。見物を決め込むつもりだ。その横にはこれまで気づかなかったが、護衛騎士が2人、ひっそりと立っている。


 ーー最悪、死ぬことはないのだろうか。


 護衛の表情を伺った。

 これでも侯爵家の嫡男だ。しかも祖父の家格は四大公爵だ。いざとなれば助けが入るだろうと信じたい。

 僕は覚悟を決めて、うなりながら蛇のようにゆっくり這い出る魔物の方に向き直った。


「ツノに気をつけろ、痺れるぞ。急所は右側の首下だ。お前の短剣ならザックリいける!派手に刺せよっ!」

 背後からジェムニールの野蛮な声が飛ぶ。

 俺は囲いの真ん中に突っ立って、深呼吸を繰り返した。


 何かを殺すことになるとは、今まで一度も考えたことがない。貴族の家に生まれたおかげで、怖いと思うほど身の危険を感じたこともないのだ。

 しかもギーヴ家は剣ではなく、魔法で身を護るという考え方のせいか、魔法の練習は3歳くらいから始まったが、剣の修練は学園に入ってからでいいと僕も両親も考えていた。


 なのでこれが、本気で本当に初めてっ、剣を握って魔物を倒すことになる。

 しかも単独ひとり!?手伝いぐらいお願いしたい!

 だがジェムニールもその側に控えている護衛騎士も距離を取って見物姿勢、変わらずだ。

 ギッシュくらい連れてくるんだったと後悔しても遅い。


 汗が出る、ドッと出て、出続けて止まらない。

 でももう「できない」とも「手伝って」とも言えない雰囲気だ。例えもし「やりたくない」と言ったら?


 ジェムニールは確実に僕を下に見るだろう。仲良くなるのもここで終わりかもしれない。侯爵家に出入りできなければ、どうやってエルバーラに近づけばいい!?


 それにいずれは魔獣討伐の実践が必要になるし、学園に入れば男子は剣術が必修だという。領地にだって魔獣は出ると聞くし、領地以外にだって、この王都にだってそうだ。

 それが今、想像もできないところで、強制的に向き合うことになっているだけで、僕にできないことはないはずだ。


 そう、色々理由をこねてみても、体の震えは止まらない。

 それでも剣を鞘から引き抜こうと力を込めたら、短剣の上に小さな魔法陣が三つ縦に出現する。

 ジェムニールが触った時には現れなかったご先祖様の強化魔法陣だ。

 怖いという気持ちがぶわっ膨らんで、でも抑えつけようとして。


 ーー仕方ないだろっ!!


 ーーだって俺は(・・)ずっと(・・・)平和・・()()んでいた(・・・・)んだから!




 えっ!?


 異質な考え方ーー稲妻を浴びたように前世・・を思い出した瞬間、魔導具で繋がれていた狂猪バーサークボアが僕に飛びかかって来た。



やっとテンプレ踏襲(婚約破棄、前世、チート?)



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