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ショートショート「除霊」

作者: 蛙星

 作中に説明が無い場合はN博士とW君の二人が登場します。

 N博士:発明家。

 W君:N博士の助手兼モルモット。

「博士ー、幽霊って信じますか?」

「信じとらんよ。しかし、なんで幽霊なんだ」

「最近、毎晩見えるんですよ、それっぽいのが。それが最近、昼にも見えるようになってきたんです」

「ほうどんなヤツじゃ」

「昔の侍みたいなカッコしていて、何かをぼそぼそ喋ってるみたいなんです。気味が悪くって」

「確認じゃが、W君についているのか?」

「そうです」

「今も近くに、おるのか?」

「いるかもしれないですが、今は見えないですね」

「そいつは、残念じゃな」

「残念?」

「折角、珍しい現象を見られるかと思ったんじゃが」

「あの、除霊ってできるんでしょうか」

「幽霊を信じておらんわしに訊くのが間違っておるとは思うが、安心せい映画ゴーストバスターズは十回以上観とるわい」

「そんな映画知りませんよ」

「ダン・エイクロイドの名作なのに」

「だから、知らないですって」

「仕方ないな、真面目にやるとしよう。とりあえずは除霊するとなると、相手を知らねばならん。色々と準備が必要なんで、今日は帰っても構わんよ」

「はい、そうさせてもらいます」


 翌日

「実験の準備は完了しておるよ。さあ、自慢の幽霊とやらを出してくれ」

「自慢してないですし、自由に出し入れなんて出来ませんよ」

「普段から使えんヤツと思っておったが、肝心な時も使えんとは」

「無茶言わないで下さいよ。いや、待って下さい。出ました、見えますか、ほら僕の右斜め前に立ってます。博士が使えないなんて言うから、怒ったんじゃないですか」

「前言撤回じゃ、やれば出来るではないか」

(僕が出したわけじゃないけど、ここは良しとしよう)

「ふむ、わしからは何も見えんな。では、ビデオカメラには映るかというと、映らんのか。ふむふむ、お次は昔ながらのポラロイドカメラじゃ。はい、チーズ」

「あの、博士は怖くないんですか」

「恐怖には二つの種類があってな一つは予想された恐怖。身の回りに危険があることが分かっている場合、例えば山でヒグマに出会った場合じゃな。もう一つは、予想出来ないことへの恐怖、まさに幽霊がその典型じゃな。後者はなんとなくヤバいと感じておるわけじゃが、根拠のない思い込みでしかない」

「だからと言って、危険かもしれないでしょう」

「それはその通りじゃな。非科学的ではあるが自分の感覚を信じるのも大事じゃからな。

 話をしておるうちに、現像が出来たぞ。何も写っておらんな、ほれ」

「本当ですね、この辺りにいるはずなんですけど」

「昔の人はシャイなのかもしれんな。まだ調べる手段はあるから安心せい」

「今度はさっきのビデオとは違うんですか」

「こいつはサーモじゃ。って、こいつも駄目か。幽霊とは冷たいんじゃないかったのか」

「うわだっ、あっすいません。幽霊が何か喋ったんでびっくりしちゃいました」

「わしにも聞こえたわ。録音はしとるんで後で聴いてみよう。声が聞こえたということは、脳の錯覚でもない限りは空気を振動させられるな。

 ならばちょっと面倒じゃが、仕方ないな」

「博士、何をやっているんですか?」

「何、ちょいと警報システムにアクセスして、火災報知器のアラームをマスクするだけじゃ」

「は?」

「今から煙を出して空気の流れを確認するんで、念のためな」

「そういう意味ではなくて、なんで警報の止め方を知っているんですか」

「そりゃ便利じゃからな。おっと、また聞こえたな。さっきよりも聞きやすかったが、何と言っておるのか分からんのう」

「怒らせてないですかね」

「訊いてみたらどうじゃ」

「無理無理、嫌ですよ」

「やっぱり役に立たんのう。それでは、煙を出すからな」

「博士、これって」

「あぁ、いるな。なんらかの実体を伴っておるが目視できんとは、なかなか興味深いな。透明じゃとしても、光の屈折率が空気と異なると、そこに何かあるのが分かるもんじゃが、どうなっておるのやら」

「僕の方からは、普通に煙が避けているように見えてます」

「声が聞こえるということは、透明だが空気より密度の高い何かがあること考えるのが自然じゃな」

「ここから、どうするんですか?」

「期待薄じゃが、レーダーを試してみよう。まずは、赤外線から。

 やはり、反応なしか。そしてミリ波レーダー、こっちも駄目と。

 では、いよいよお待ちかねの物理的接触を試みるぞ」

「はい、分かりました」

「ではW君、触ってみたまえ」

「ええっ、なんで僕が、嫌ですよ」

「さっき分かりましたと、同意したではないか」

「そういう意味じゃないですよ」

「仕方ないな。では、このスチールパイプで触ってみるぞ。

 んん、確かに何かあるな。微かとはいえ抵抗がある。ただし、柔らかいクリームに熱いナイフを当てたように、するっと入っていったぞ」

「あの博士、この人不愉快そうにこっちを見てるんですけど」

「大丈夫、人ではなくて、元人なので気にしなくてもよい。それに物理的な接触が可能と分かったんじゃし良いではないか」

「博士は良くても、僕が困るんです」

『……がらな……だしは……ぁなだぁの……ごれ……だぁ……もる』

「また、聞こえましたよ。やっぱり嫌がっているんじゃないですか」

「ちょいと質問じゃが、幽霊もバラバラにしたら死ぬと思うか?すでに死んでいるんで、死ぬという表現はあれじゃが、どう思う?」

「除霊できるかってことですよね。分からないんですが、さっきの表情からすると効果はありそうな気がします」

「よし、ちょっと待っててくれ」

「えっ、どこに行くんですか。一人は嫌なんですけど」

「すぐに戻る。何かあったら、このスチールパイプで応戦してくれ」

「ははっ、えっと、仲良くしようね」


「W君、待たせたな」

「このたくさんある透明の容器は何ですか」

「使ったことなかったか?こいつはデシケータじゃ。減圧して真空状態を作り出すためのもんで密閉度の高い容器と思ってくれればよい。ありったけ集めてきた。こいつにその幽霊をバラバラに閉じ込めてやるのが狙いじゃ」

「そんなことできるんですか」

「ものは試しじゃな。ではデシケータに封印していくが、動いてくれるなよ」

「なんだか人体切断マジックを見ているみたいで、ちょっと気味が悪いですね」

「これで、全部デシケータに封印し終わったぞ。意外にも暴れたりしなかったな。このままマイナス200度で凍らせてやるわ。空気も凍る温度じゃが幽霊に効果的はちょっと分からんな。一晩様子をみてみよう」(何か忘れとる気もするが、まあええか)


 翌日

「博士、昨日はあの幽霊出ませんでしたよ」

「そいつは何よりじゃ。しかし、その怪我はどうしたんじゃ」

「これですか、何でもないところで転んで、擦りむいちゃいました」

「そうか、気を付けてな。さて、昨日冷凍した幽霊の様子を確認しようではないか」


「どうじゃ、何か変わっておるか」

「蛇が脱皮した後みたいなものがバラバラになって落ちてます」

「よし、これぞ科学の勝利じゃな。

 そういえば、昨日忘れておったんじゃが、幽霊の声を解析してみんか」

「そうですね、一応やっておきましょう」


「この設定で音声の自動変換してくれるはずです」

『怖がらないで、私はあなたの守護霊、あなたを守る』

「あのW君、これは取り返しのつかない事をしたのでは?その傷も、守護霊が居なくなったせい……」

 この話は珍しく、ネタが突然降ってわいてきました。

 普段はこういう感じの展開の話を書きたいか、これをネタにして何かかけないか?という考える時間があります。

 しかし、こいつは寝る前に前触れなしにやってきました。

 あとは二人が勝ってに会話をしてくれるので、ちょいちょいと修正してやれば完成です。

 幽霊ネタは一度やりたいと思っていたのですが、ここで使うとは思ってみませんでした。


 ちょっと話が長すぎです。個人的な趣味ですが、この半分ぐらいに収めるのが理想です。


 後で日本語読み上げソフトに読ませてYouTubeに上げるという目的もあるため、時間経過を除いて会話文で成り立っています。

 これはこれで登場人物に状況を描写させる書き方の練習になります。

 「何も写っておらんな、ほれ」

 というセリフの最後の「ほれ」だけで、N博士がW君に写真を渡したことが分かります。テンポ良く会話を続けたい時に、動作の説明を入れたくない場合に使えます。


 逆にこのスタイルでショートショートを書いていると、状況の描写を説明する技術が上がりません。

 世界観を表現するのにそういう描写は避けられないのですが、全然身に付きそうにありません。

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