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†ネメシスの使い魔† byエーテル出版社  作者: 木俣環(名無し)
地獄篇
5/11

第二歌 悪魔の道標

悪魔の道標

第二曲

「悪魔の道標」


夕暮れに真っ赤に染まる太陽が、ゆっくりとほの暗い空へとうなだれた。

地上の生き物は静まり、その労苦から解放されたであろう。

ただ私ひとりだけを残して。

「この運命みちと憂鬱の攻めにあたらんとすると。」

完全の記憶をここに刻む

この私が見た地獄の光景や感じたずべての苦しみを。


神は見ておられるのだろうか。見ているのであれば、どうかこの俺を救ってはくれないか。

・・・


「本当に自分でいいんですか。俺には何の才能もない。」


光能は言う。「君の能力であれば十分に活躍できる。君は逸材だ。我々と共により良い世界を作っていこうではないか。

まぁ、話をお聞きなさい。」

・・・

彼は多くのことを聞いたという。だから、俺にも話を聞けということだろう。

彼は経済的にも、社会的にも勝利を得て、時の人となった人だ。成功者の言葉は素直に聞いた方がいいんだろうか。

「あなたがまたここに来るのは、信仰という救いの道の始まりを持って帰るためである。」

「私はどうしてここに来るのでしょうか。誰が私に許可をくれたのでしょうか。私に耐えられるというのは、自分でも信じられません」

俺は彼に自分が地獄巡りをする理由を問いただすが、話は遮られ、俺の不安を払拭しようとする。


「人間の心は移ろいやすい。権力や金を手にすれば人は容易に暴君にも横暴にもなる。

人々はみんな、その高貴な目的に背を向けて、空虚な幻影に惑わされている。彼らは臆病な獣のように恐れて逃げていく。 私はあなたをこの恐怖から解放するために来たんだ。私がどうしてここに来たのかをあなたに話そう。


私は地獄の入り口で他の霊魂たちと一緒にいたんだ。そこで美しく尊い一人の女性が私を呼んだんだ。

私はすぐに彼女の命令を受けることを願ったのだ。」


彼女の目は星よりもキラキラしていて、まるで天使のような優しく包み込んでくれる光のベールのような声で私に語り掛けてくれた。美しくて優しいそんな女神が私に話しかけてくれたんだ。



『回想』


私の知り合いは荒野の山麓に閉じ込められて怖くて引き返そうとした。 


私は彼のことを天の声より聞いたところによると、彼は迷っているという。

そのために、私は彼を助けるために立ち上がったのだ。

遅れてしまうと大変なことが起こるかもしれないと不安がよぎったからである。


あなたの能力で彼を救いに行ってほしい。


我に救いを求めたのはカリナだ。

私は帰りたい場所から来たんだ。愛が私を動かしてあなたに話しかけたんだ。


私が神の前に立つとき

全ては肯定され、祝福されると…


黙ってしまった、私にそう言ったんだ。


美しく、徳の高い女性よ(人間界で最も小さな天にいるものの中で

誰よりも優れているのはあなただけだ) 


あなたが望むことは私の望みと同じだ。

これは我が運命と思い従うこととした。しかし、まだ遅れてることに気づいた。

あなたはもっと私に願いを伝えてほしいと思わないのか? 


ただ一つお願いがあるなら私に言ってください。

あなたは何も心配しなくてよいのです。


都心から離れて故郷を思う心に灯がともっている。

まだその中心に降りてこないの? 



彼は答えて言った

「あなたがこのことの詳細を知りたいなら

私はどうして恐れずにここに来られるのかを

簡単にあなたに教えてあげるよ 85-87


私たちが恐れなければならないのは

人に害を及ぼす力を持つものだけだ

それ以外には何もない

それが恐怖を引き起こすものでなければならない 88-90


神は自分の恵みで私を作ってくれたから

あなたたちの悩みも私には届かず

燃える炎も私を襲わない 91-93


一人の尊い女性が天にいて

あなたを送り出すことができるこの障害が来るのを

哀れんで天上の厳かな裁判を動かした 94-96


彼女はルチーアと呼んで頼んで言った

「あなたに忠実な人が今あなたに頼るしかない

私は彼をあなたに推薦するよ」 97-99


すべての暴力的なものの敵であるルチーアが立ち上がって

私の昔の恋人ラケーレと座っているところに来た 100-102


彼は言った

「ベアトリーチェ、神の真実の賛美よ

あなたはどうしてあなたを深く愛して

あなたのために世俗を離れた人を助けないの? 103-105

あなたは彼の苦しみに満ちた嘆きを聞かないの?

あなたは川が溢れて海も自慢できないところに

彼を襲う死を見ないの? 106-108

世の中の人が利益を求めて害を避ける急ぎ足でも

こんな話を聞いて 109-111

あなたの言葉が品があって

あなたの名声も聞く人の名声になると信じて

祝福された席を離れてここに降りてきた私は早すぎるとは思わない 112-114

そう言って涙を流して

そのキラキラした目で見回した

私が急いで来たのもこれが理由だ 115-117

だから私は彼の意志に従ってあなたに来た

美しい山の近道を奪う獣からあなたを救った 118-120

それなのにどうして?

どうして立ち止まるの?

どうして臆病を心に留めるの?

こんな素晴らしい三人の女性 121-123

天の王宮にいてあなたのために心を砕き

しかも私が伝えることでこんな大きな幸せを

あなたに約束するというのにあなたは勇気も信頼もないの? 124-126

例えば小さな花が夜寒くてしおれてしまっても

日が昇るときに全部起き返ってその茎の上に咲くように 127-129

私も弱ってしまったけど

私の心が強く励まされて

恐れるものは何もない人みたいに私は言った 130-132

ああ、慈悲深い私を助けてくれた女性よ

志高い彼が伝えた真実の言葉に従おうとするあなたよ 133-135

あなたの言葉で私の心が動かされて行くことを望んだ

私は最初の意志に戻った 136-138

さあ行こう、導き手よ、主よ、先生よ、二人で一つの思いだけだ

私はそう彼に言って、彼が歩き始めるとき 139-141

険しい荒れ果てた道を進んだ 142-144



「さて、初めに。

君は世界を変えたくはないか?」


その言葉の意味がよくわからなかった。狼狽している俺を見てその男はニヒルな笑みをこぼしている。


「この世の中はあまりに破壊的で、醜い。地獄のようだ。

人々が社会的または政治的な不正や抑圧に対して無関心である場合、その不正や抑圧は継続しやすくなる。例えば、選挙に参加しない、人権侵害に対して声を上げない、環境問題に無関心であるなどがこれに当たる。

それは政治だけに留まらない。人間関係においても、友人や家族が困難な状況に直面しているとき、無関心であると関係が悪化する。感情や問題を無視することは、相手を孤立させ、関係の断絶を引き起こす。

職場でのハラスメントや不正行為に対して無関心であると、その行為は継続し、職場の環境が悪化する可。学生が学習の困難に直面している場合、教師や親がその問題に対して無関心であると、学生の学習意欲や自尊心が低下する。 健康問題に対して無関心であると、病気や健康上の問題が悪化する。例えば、健康診断の結果を無視する、症状に対して適切な治療を受けないなどがこれに当たります。」


そんなことばかりだ。衆愚は見て見ぬふりをすることでしか自らを守れない。



あの、全く意味が分かりません。

貴方たちは誰なんですか?


「それは言えない」


あの時に見た夢……そして怪物のこと。あなたは知っているんでしょ?

俺はそれが知りたい。


「そうだろうな。

君が見たものはアートマンと呼ばれるものだ」


アートマン?


「詳しい話はまた今度にしよう。

君は今の世界を美しいと感じるかい?」


いや、別に俺は…


「まぁ、いい。焦ら無くてもいいんだ。

君には君の人生がある。

しかし、今の世の中は荒んでいるとは思わないか?

下らぬ茶番が跋扈したこの世界で、本当に真理を追い求める人間は少ない。世界は今正に変革の時にある。我々はその過渡期を生きてきたのだ。だが、それももう終わりに近づいている。

人類は新たなステージに立とうとしている。それは仕組まれた。いや、すべて計算されつくしたことなんだ。遅かれ早かれ私の理想は達成される。

君には人類の進化の一翼を担ってほしいのだ」


……


「良いんだ、君は必ずまたここへ来る。私にはわかっている」

-------------------------------------------------------


あの事件の後、色々な事が起きた。

毎日が騒がしくて、鬱陶しくて、忙殺されていた。


あの夜……

あの夜。部屋にいた例の不審な男と話した。

「お前、なかなかやるな。俺の出番がなくなっちまったよ」

あなたは誰なんですか?

「詳しくは言えないが、そうだな。正義の味方ってところかな」

意味が分からない。あの、勝手に人に家に上がり込むのやめてください。

「ちゃんと大家さんに許可取ってるよ。それにあんた。俺がいなきゃ死んでたかもしれないぜ」

はぁ?

「まぁ、いいや。

とにかく、よくやったな。怖かっただろ?」

そうですね。夢のことですよね。

「あの化け物を前によく戦った。俺はあんたに興味があってね。今日のこと。あの化け物のこと。知りたいだろ?

このメールアドレスに連絡してくれ。迎えに来るからさ」

はぁ……


知りたかった。あれが何だったのか。しかし、あの時は気が動転して何も考えられなかった。

陰鬱な倦怠感だけが私の体を構成していた。

だが、眠りにつくことはしたくなかった。またあの悪夢を見るのではない。そんな気がして恐ろしくなった。汗が止まらず、手が震え、吐き気も催していた。

本当に最悪な気分だった。


悪夢はその後も続いた。

翌日、警察が来た。

予想通り、木下さんのことについてだ。


彼が、何をしたのか。そのすべてを教えてくれた。

大麻の製造と使用、並びに殺人。

大麻の製造によって巨額の富を手に入れていたようだ。

しかし、本人自身も大麻の誘惑に取り付かれてしまったようだ。

大麻の使用による自己の肥大化。神と一体となったかのような万能感に満ちていたそうだ。

そして、彼は恋していた女性を殺した。それだけではない。以前から彼女の結婚を認めず、妊娠していた彼女を堕胎させようとしていた。

庭に植わっているホオズキ。

明日……7月9日、10日に行われるほおずき市に出店するのだろうと思っていた。

挿絵(By みてみん)

この両日は四万六千日の縁日であり、縁日にともなってほおずき市が催される。ホオズキには酸漿根の部分に子宮収縮作用のあるヒストニンという成分が含まれている。

だから、彼は彼女にホオズキを渡したのだろう。

彼が話していたことと合致している。本当のことなのだろう。

あの化け物の正体はおそらく彼の歪んだ願望や自己の肥大化がもたらした産物なのだろう。

人の醜さが生み出した哀れな怪物……

庭に垂れるホオズキにまじまじと見つめられているようで、落ち着かなかった。血眼の目が俺の動きを止め、石にしてしまう。

「てことでね、いろいろ悪かったね」

あの、今彼は?

「んー。どうも、精神的にまいっちゃってるらしくてねぇ……」

そう…ですか。

彼は今廃人になってしまっているらしい。

逮捕の後、指定入院医療機関へと送られたようだ。

「いろいろ騒がしくて、ごめんね。今隣の部屋を家宅捜索してるから。もう少し迷惑かけるね」

はい、あの、僕も隣の部屋見てもいいですか?

「いやー、それはちょっと……」

あーそうですよね。ごめんなさい。

「すぐ、終わるから、その後なら大丈夫」

わかりました。ありがとうございます。

「それじゃあ、失礼するね」

……

俺のしたことは間違いだったのだろうか?

いや、彼は凶悪犯。

間違ったことなどしていない。それにあれは夢だったはずなんだ。でも、確実に現実とつながっている。

一体どうなっているんだ。

わからない。理解できない。

それが何より、気持ちが悪かった。科学が急速に発展し、ありとあらゆる現象を解明できる現代に、こんなことがあっていいのか。

知りたい。

頭の中は破壊的な知的好奇心で満たされていた。

ただでさえ、理解不能なことが多々起きている中、頭の中が崩壊していくような痛みを感じる。

疲れた。

心身ともに疲弊し、満身創痍になっていた。


ちょっと、外の風にあたってくるか……


近くの公園。何一つかわらない景色。だが、遊んでいる子供たちの多くが日本人ではなくなっていた。気が付いたら、この町には多くの外国人が暮らすようになっていた。


大人たちが口酸っぱく言っていたグローバル化。今になって実感できるようになってきた。

昔の俺はとても愚かで、大人の言うことというだけで信じていなかったが、今にして思えば社会のことを何一つ知らない捻くれた子供だったな。


もう、舞台は日本だけじゃなくなった。幼い頃の小さな箱庭ではない。急速な世界の広がり。

俺が、この世界を……

挿絵(By みてみん)


家に帰ろう。

少し、落ち着いた。


帰路に就いたが、思考は止まることを知らず、頭の中を駆け巡っていた。あの時に見たもの、感じたものが何なのか。知りたくてたまらなかった。

しかし、決断することはできなかった。

一歩を踏み出せば何かが変わる気がした。しかし、その一歩を踏み出すことが恐ろしく感じた。

長く、退屈な学校生活を耐え抜き、数々の競争の中生き残り、内定も貰った。普通の人生が約束されている。


その、平穏を手放す勇気が俺にはなかった。


どうすればいいのか、わからない。自分が何をすべきなのか。神様など信じてはいなかったが、人間どうしようもなくなると神様に判断を委ねるのだと理解できた。

自分の中に存在する複数の感情が、因果が、理由が複雑に絡み合っているのがわかる。

自分が自分でない感じがした。俺には決められない…

誰か、誰でもいい。誰でもいいから、背中を押してほしかった。

誰でもいいから、俺の人生を決めてくれ。

俺には自分の人生を生きる勇気も能力もない。全く見えない不透明で真っ暗な将来にたじろいでしまう。

委縮し、小さくなった自分が情けなく、弱弱しく立っている自分を見てどこか安堵していた。


何もしなければ、何も起こらない。この平穏で平凡な幸せな日々が続く。

本心では、変わりたくなかった。変わることを恐れていた。しかし……

俺の人生は常に逃げていたのかもしれない。普通に甘んじ、自分の人生など1秒たりとも歩んでいなかったのかもしれない。

退屈であることも楽しかった。それでいいと思っている。

この胸の高鳴り。怖い、恐ろしい。しかし、何かが変わる。理想の自分になれる最後の光。

今のままでいいと思う自分。変わりたいと願う自分。

俺は……何も知らずに、何も成し遂げられず死んでいく。

この命は一体何のために生まれたのだろうか。


家に帰ると、大家さんが立っていた。

「なんか、大変なことになったわね……あなたも災難ね。まさか、大麻に殺人だなんて……」

はぁ、そうですね。

「警察の人も帰って行ったし、部屋に入れるみたいだけど、怖いからさぁ。ちょっとあなた付いてきてくれない?」

(調べたいこともあるしちょうどいいか)

いいですよ。今から行きますか。


部屋の前に立つと、異様な緊張感を感じた。何一つ変わっていない自分の部屋と同じはずの扉が禍々しく、威圧感を発している。全く別のものに感じた。


入りますよ……

扉を開けると、カーテンが風に揺れ、淡い光が差し込む殺風景な部屋が現れた。

どこか、懐かしい感じがする。自分が初めて部屋の借りたときもこんな感じだったか。


「あら、意外と綺麗ね」

たぶん、警察の人がほとんど持って行っちゃったんでしょうね。

残ってるもの出しますか?

「そうね、あの人たちももう帰ってこないだろうし、片づけたほうがいいわね」

じゃあ、上がります。失礼します。

誰もいないが、何も言わずに部屋に入るのも忍びないので、自然に言葉が出てしまった。


あたりを見渡すと、小さな笹があった。

(あれは、七夕の時の……)

笹には静かに垂れ下がる3つの短冊が付けれれていた。


(これは……!?)


「あら、かわいらしいクロユリ」

クロユリ……

花言葉は「恋」と「呪い」

アイヌ民族の伝説にこんなものがある「恋の花」

好きな人への想いを込めたクロユリを、その人の近くにそっと置き、相手がそのクロユリを手にすれば、二人は必ず結ばれると。

……


人間は、ヒトはなのを求め漂うのか。

この平穏で、平坦で、平凡な人生の意味を俺は知りたかった。

だから、決めたんだ。俺は世界を変えると。


彼の短冊には、こう書かれていた。

「愛する人に会いたい」

それはまるで織姫と彦星のような儚く、哀しい願いであった。


夏の大三角が輝く夜空に俺は誓った。

後に続く者のために、人類を新時代へと導く一翼になると。






ここか……

摩天楼にそびえる一つのビル。

21階。ここに何があるのだろうか。受付には電話が備え付けられている。

就職活動の時を思い出す。


メールには1984を打てと記されていた。

間違いがないかと恐る恐るゆっくりとボタンを押してた。

コールが鳴ると、しばらくして女性の声が聞こえた。

「加藤様ですね。お待ちしておりました。迎えに上がりますので、しばらくお待ちください」

少し待つと、女性が一人現れた。

「お待たせいたしました。ご案内します」

あ、ありがとうございます。

「こちらをお付けください」

彼女から、マイク付きのイヤホンを渡された。

「では、こちらに代表が待っていますので、ノックしてお入りください」


ここで、すべてが変わる……

大きく息を吸い込み、ゆっくりと息を吐いた。

コンコン!

失礼します。

部屋の奥には大きな机が備わっている。そして、一人の男が深々と座っていた。


「さて、初めに。

君は世界を変えたくはないか?」


その言葉の意味がよくわからなかった。狼狽している俺を見てその男はニヒルな笑みをこぼしている。


あ、え、あの、少し意味が分かりません。

あの、貴方たちは誰なんですか?


「それは言えない」


あの、えっと、あの時に見た夢……そして怪物のこと。あなたは知っているんですか?

私はそれが知りたくて。


「そうだろうな。

君が見たものはアートマンと呼ばれるものだ」


アートマン?


「詳しい話はまた今度にしよう。

君は今の世界を美しいと感じるかい?」


いや、私は別に…


「まぁ、いい。焦ら無くてもいいんだ。

君には君の人生がある。

しかし、今の世の中は荒んでいるとは思わないか?

下らぬ茶番が跋扈したこの世界で、本当に真理を追い求める人間は少ない。世界は今正に変革の時にある。我々はその過渡期を生きてきたのだ。だが、それももう終わりに近づいている。

人類は新たなステージに立とうとしている。それは仕組まれた。いや、すべて計算されつくしたことなんだ。遅かれ早かれ私の理想は達成される。

君には人類の進化の一翼を担ってほしいのだ」


……あの。

「今日はまだいい。君自身もまだ迷っているだろうからね。

また、ここに来てくれることを願っているよ」


はい……もう少し、考えさせてもらいます。



大学へと向かうために駅に向かう。何も考えないように、ただ無意識に。

逡巡してしまった……

(なにがなんだかわからない。

もう、自分の中では決心はついていたんだ。

それでも、即断することができなかった。

俺は、何がしたいんだ)

ぼんやりとした曖昧な思考が車輪のように巡る。ホームで電車を待つ数分の時間が刹那に感じた。

(あの、怪物……どうやって、現れたんだ……

あの時、死にたくないと思った。あぁ、思い出した。

海で溺れた時に似ている。あの時、生きたいと思った。苦しくて、苦しくて、それに反発するように生きていたいと思った。自分という存在が確かになった。自分は生きている。

また、死にそうになれば……)

いかんいかん。何を考えているんだ。

目の前を列車が通過していく。騒音の中で意識が研ぎ澄まされていった。

(落ち着こう。

学校行かないとな)


「おーす。なんか久しぶりに会ったな」

同じサークルの友人だ。彼にはノートやレジュメを貸し借りした戦友である。

あー、ずっと就活してたしな。単位もあるし、ゼミしか出ないわ。

「いいなー。ほんと4年になると講義めんどくさくてしょうがないわ」

まぁ、でも内定も貰ってるんでしょ?ならよくね?どうせ最後なんだし、勉強したほうがいいよ。家に居ても時間無駄にするだけだしな。

「おー、俺もそういうこと言ってみたいねー」

「お前はどこに内定貰ったんだっけ?」

……

まだ迷ててな。今三つ内定持ってるんだけど。一つはもう断った。

「大変だなー。でも早めに決めないと相手にも迷惑だろ」

わかってはいるんだけどなぁー。自分の人生を決めるってたいへんだよな。

どういう基準で会社選んだの?

「んー。何となく。勘というか、雰囲気というか。まぁ、直感だな。人生ってそんなもんだろ」

確かに。

直感か……ありがとう。参考になったよ。


「待っていたよ。

君は必ずここに来る。それは運命なんだ。」

なぜ?わかるんですか?

「君は私、いや、私たちと同じ人間だからだ」

私は、貴方のような優秀な人間だとは思えません。

「本質的には同じだよ。

その証拠に君はアートマンを発現させた」

……

「私は世界を変えたい。

バベルの塔。かつて存在したといわれる巨大な塔。人は神に近づこうとした。神は怒り、我々に罰を与えた。その結果。我々は意思疎通のために必要不可欠な言語を分断されてしまったのだ」


「しかし、今。私は違う言語であっても理解することができる。素晴らしいことにすべてはテクノロジーによって実現しうる。我々はインターネットを手に入れ、皆が繋がれるようになったのだ。

もう、神はいない。

いや、我々が神になる。そのステージまで来ているのだ」

「もう、我々には国境も通貨も言語も、はては人種も性別も既に溶け始めている」

「我々が再び一つになり、神へと昇華できる」

「これは仕組まれた……運命なんだ」

あの、私は何をすればいいのでしょうか。

「君にはこの世のすべてを見てきてほしい」

私がですか?

「大丈夫。頼もしい味方も付けるよ。

君の心配はすべてわかる。お金のことも気にしなくていい。君は世界に一人しかいないからね。1000万これでどうだろうか。とうぜん、成果に応じてもっといい報酬を出そう」

(そんなに給料を出されると怪しく感じるな……)

「我々も急いでいてね。君が見つかった良かった。自然にアートマンを発現させるものは非常に少ない。」

なぜ、私のところに来ていたんですか?

「間違った瞑想や薬物による自我の肥大化によってアートマンが不完全な状態で発現することがある。君の隣に住んでいた木下という男はこの辺では最も薬物売りさばいているブローカーでね。我々も彼のことを調べていたんだよ」

「その時に偶然君を見つけてね。嬉しい誤算だったよ」

私で本当にいいんですか。

「君でなければならないんだ」

……わかりました。


君は神を信じるか?


自分は神様はいると思います。


なるほど、では君が思う神はどんなものかな?我々人類はその神に成れるだろうか。


皆さんが考える神とは違うかもしれません。キリスト教徒でもありませんし、理論というか、法則というか…すべては神によって支配されていると思いますが、人類も神に成れると思っています、



翻訳


[3] これはゲームであり、私たちはシミュレーションされた世界でプレイしているということを忘れてはいけません。現実の世界が平和な世界であることを保証することは、現実の世界が平和な世界であることを保証すること以上にできないのである。


[4] 主人公は自分の死を意識していないというよりも、死後の人生の経験、つまり、人に囲まれていること、生命を感じていること、名前があること、生きていることなどに限定された知識しか持っていないのだ。しかし、この限られた認識の中でも、彼は有限の世界では自分は死ぬのだという事実に直面せざるを得ず、それは彼が望むと望まざるとにかかわらず、彼に結果をもたらすことになるのです。


[この人物は名前のある人間であり、名前がなければ見知らぬ人、孤児であり、それが彼を恐怖、同情、欲望の対象とする。ある意味では、名前のない男は死のアバターであり、しかしそれは彼自身が直面するかもしれない死とは違うものである。


[この劇は、自己の限界、自分の死についての探求である

冒険への誘い

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