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イバンのばか  作者: 夜間三
第二章 最初の戦い
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8.心配すること【ルキ】

「いいかげん、うんとかすんとか言ったらどうなの」


 ルキはしびれをきらしていた。

 元来気は長くない。

 なだめられるのも大嫌いだからこらえてきたのだが、そろそろ限界だ。


 先ほどから変わらぬ無表情でルキを見返してくるこの男は、いったい何なのだ。

 軍人とはかくも無感情なのかと呆れていれば、どういうわけか怪物の親玉を逃がす始末。

 敵を殺さないで、何が戦士だというのだ。

 そのうえ、いくらなじってもまるで反応を返さない。


 あの魔女と狂った男にはぐらかされたが、話はまだついていないではないか。


「仲良しこよしで今一緒にいるわけじゃあないのよ。得体の知れない奴に背中は向けられないわ」


 やはり返事はない。

 しかしあの騒々しい少年のように、ルキにおびえている様子でもない。


 じっと見上げると、無表情の中で伏せられた褐色の目が小刻みに揺れている。

 話を聞いていないわけではなさそうだ。だが、何を考えているのかさっぱり判らない。


 内心で舌打ちする。

 だから上背のある男は嫌なのだ。こちらがわざわざ見上げなければならない。


「ルキが心配することじゃないよ」


 前から聞こえた声に、もう一度、舌打ちしたくなる。

 いちいち口を挟んでくるこの異常に陽気な男こそ、全くもって得体が知れないというのに。


「誰が心配してるの。信用できないと言ってるのよ」

「俺は信用してるよ、お前さんのことも」

「お前が太平楽だろうがあたしには関係ないわ」


「……」


 オズモが何か言った気がして顔を上げる。

 無表情にしか見えないが、目を見ていたらなんとなく、彼が申し訳なく思っているようであることは分かった。


 しかし――後悔しているようには見えない。

 悪いことをしたと思っていないのか、と詰め寄ろうとして、再びイバンの声が割り込んでくる。


「でもルキは、ここにいるだろう?」


 前を歩くイバンはそう言って振り向き、笑った。

 いつだって笑っている。

 いったい何がそんなに嬉しいのだ。


「……そうね」


 仕方なく、認める。

 導くのはあの男だ。

 全く、癪ではある。


 少しくらい狂っていなければ、正義など為せないのであろう。

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