赤い実
よくあさ、カナはなきはらしためをこすりながら、小川のほとりでかんがえていました
バートンさんはどうしてわたしをおぼえてないのだろう
ジェフや村のこどもたちも、おなじようにわすれてしまったのだろうか
りゆうをかんがえますが、カナにはわかりません
「やっぱり、この赤い実のせいなのかな……」
カナがもつ枝には、もう赤い実はみっつしかついていません
「これで、みんなをもとにもどせるかな…」
カナは赤い実をてにとりますが、なぜか、そのねがいはかなわない、と食べるまえにわかってしまいました
「そんな、どうしたらいいの…?」
うつむくカナのめから、またなみだがこぼれます
もう赤い実を食べないほうがいいのだろうか
バートンさんもジェフも村のこどもたちも、ずっとわたしをわすれたままなのだろうか
カナにはどうしたらいいのかわかりません
そのとき、お父さんの木こりなかまのひとりが小屋へはしってきました
「たいへんだ!がけがくずれてきみのお父さんがおおけがをしたんだ!いそいできてくれ!」
「えっ」
カナはあたまがまっしろになりました
木こりのおじさんがお母さんをよぶあいだになんとかたちなおったカナは、おじさんとお母さんについてひっしに森をはしりました
「あなた!しっかりして!」
お父さんはあたまからちをながしてたおれていました
お母さんがよんでもめをさましません
「お父さん!お父さん!」
カナもひっしによびかけますが、お父さんからながれるちはとまるようすがありません
「あなた……おねがい……しなないで……」
お母さんはなきながらお父さんにだきつきます
そのとき、カナはみぎてに赤い実の枝をもったままだったことにきづきました
「この実のちからなら!」
おねがいします!お父さんをなおして!
カナはつよくねがいながら赤い実を食べました
すると、お父さんのあたまからながれるちがとまり、きずが少しずつなおっていきます
「こ、これはいったい……」
木こりのおじさんがとまどいながらも、お父さんのてあてをします
「あぁ……あなた……かみさま、かんしゃします」
お母さんはなみだをながしてよろこびます
しかし、お父さんのきずからまたもやちがあふれだしました
「そんな……」
カナはあわてて赤い実を食べます
ふたたびちはとまり、きずもしっかりとふさがりました
「あなた!あなた!めをさまして!」
お母さんがよびかけますが、お父さんはめをさましません
木こりのおじさんがお父さんのしんぞうに耳をあてて、たしかめました
「……ざんねんだが、もうしんぞうが止まってしまっている」
「あぁ……そんな……」
カナは、さいごにのこったひとつぶをつかんでくちにいれました
「お父さんをたすけて!!」
白くおだやかなひかりがふりそそぐと、お父さんはゆっくりとめをあけました
「あなた!あぁかみさま!」
お母さんがなきながらだきつきます
「よかった……」
カナもあんしんしてへたりこみました
お父さんはよろよろとからだをおこすと、お母さんをだきしめてなみだをながしました
木こりのおじさんもお父さんのぶじをよろこんでいます
ようやくおちついたお父さんはゆっくりとお母さんからはなれ、まわりをみわたしていいました
「たすかったのか……もうだめかとおもった」
「かみさまのきせきよ!」
お母さんがさけびます
お父さんはふいにカナをみつめて、ふしぎそうにいいました
「ところで……きみはだれだい?」