白いとり
カナは6さいになったばかりの女の子
木こりのお父さんと、やさしいお母さんと森の小さな小屋で暮らしています
きれいな小川とゆたかな森の恵にあふれ、しあわせな生活です
でも、カナにはどれもたいくつでした
お父さんもお母さんも昼間は忙しくてかまってくれないし、森も小川も、あまり遠くへ行くとしかられてしまうので小屋のまわりしか遊べません
同じくらいの子供たちがいる村へはお父さんの仕事についていったときしか行くことができないし、村の子供たちが仲良くしている中になかなか入っていけなくてさみしくなってしまいます
まだ小さなカナには、どれもたいくつでしかたがなかったのです
お父さんは森へ行き、お母さんは野イチゴのジャムを作っているのできょうもカナはたいくつです
小川のふちにある大きな石にすわり、木の枝をふりながらカナはためいきをついていました
もうすこし大きくなれば、小川を越えて森をたんけんできるかな?
森のおくにはなにかワクワクするものがあるだろうか?
たいくつなカナは、木の枝を小川のむこうめがけてなげました
そのときです
そらから白いなにか大きなものが、すごいはやさで森へおちていくのがみえました
いまのはなに?
きになったカナはおもわずたちあがりますが、小川のむこうにはいってはダメといわれています
みつかったらしかられてしまう
でも、おちたものをみてみたい
カナは小屋をふりかえりお母さんがでてくるようすがないことをたしかめると、そっと小川に入りました
冬がちかい小川はとてもつめたくて、あしがいたいけどふかくはないのでなんとかわたれます
小川をこえたカナは、森をまっすぐにすすみます
木のあいだを抜けてすすむとだんだんとうすぐらくなってきて、いつも遊ぶ小屋のまわりの森とはちがうせかいにきたようなきがします
ちょっとこわいな、とおもったカナですが、たんけんだとおもいなおしてすすみました
木々のすきまからあおじろい光がみえました
ちょうど、白いなにかがおちたあたりです
ちかづくと光はどんどんつよくなります
なんだかつめたくて、ちかづくほどにさむくなっていきます
「だれだ」
光からこえがしました
「わ、わたしはカナ」
びっくりしながらカナはこたえます
「ちかくにおいで」
おそるおそるちかづくと
あおじろい光はまっしろでおおきなとりからでていました
カナよりもおおきなとりをみあげながら、きいてみました
「あなたはだあれ?おちてきたの?」
白いとりはめをほそめながらこたえました
「わたしは冬の精だよ。冬をつげるためにとんできたのだけれど、おなかがすいておちてしまったんだ」
「まあ、それはたいへんね!わたしがお母さんにパンをもらってくるわ」
いまにもかけだしそうなカナを白いとりがよびとめます
「だいじょうぶ。わたしはにんげんのたべものはいらないんだ。かわりに、きみのこころのちからをすこしわけてもらえないかな?」
「こころのちから?」
「にんげんのもつこころのちからが、わたしのだいこうぶつなんだ」
「そうなの?よくわからないけど、どうすればいいの?」
「じっとしていてくれればだいじょうぶだよ」
白いとりはカナをつつむようにつばさをひろげ、つよく光りました
カナはきゅうにさむさがましたきがして、おもわずからだをぎゅっとちぢませました
「あぁ、おいしかった。すばらしい、なんてむくなたましいなんだ。ほんとうにすばらしい」
「おなかいっぱいになったの?」
「あぁおかげでちからがあふれるようだ。きみにはおれいをしなくてはね」
白いとりはくちばしをカナのあたまにちかづけると、いつのまにか赤い実のついた枝をくわえていました
「この実はねがいをかなえるまほうの実だよ。なかえたいねがいをおもいうかべて、実をたべなさい」
「すごい!ありがとう!」
「さぁ、もうかえりなさい」
「あなたはどうするの?」
「もうすこしやすんだらとびたつとしよう。さぁ、きをつけてかえるんだよ」
「うん、わかった」
カナは枝をしっかりとかかえると、あるきだしました
カナがさったあとで白いとりはぶるっとふるえました
すると、まっしろだったとりはまっくろなすがたへとかわりました
「ねがいのかわりに、のこりのたましいももらおうか」
小川までもどってきたカナは、枝をよくたしかめました
ほそい枝には葉はなく、赤い実だけがぽつぽつとついています
どんなねがいをしよう?
たいくつをけしさるようなたのしいねがいをかんがえよう
なにがいいかな
カナはたのしくてしかたがありません
小屋の裏の茂みに枝をかくして、カナは小屋へとかえりました