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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第一章 環境順応編
8/256

8 放置

 名前:ティグリス

 レベル:26

 種族:魔物

 称号:『アンブッシュ』

 耐性:『雷半減』『麻痺・魅了無効』

 取得スキル:『フレイム』『サンダーボルト』『潜伏』『高速止血』『魔力感知』『攻撃力+20%』



 地雷、地雷、地雷。

 歩く、爆発、歩く、爆発のコンボを繰り返しながら、ティグリスは向かう。

 足元が砂ぼこりと煙で見えないが、それでも歩み続ける影が見えるから、あまり効いていないんじゃないか?

 加えて、団の魔法使いが、遠方から魔法を放つ。

 これは、せこい……と思いきや、魔法攻撃も効いていないのが目に見えて分かる。

 傷や血も見えない。

 最初から勝ち目がなかったということか。

 卑怯な手でも、時間稼ぎにしかならない。

 魔力が無くなった者は、前線から撤収している。

 団員は、ざっと確認して、8人。

 撤収した魔法使いも含めて、15人か。

 隊長のデルトは、大剣を地面に突き刺し、状況を見ている。



 敵がこちらに近づく時、あることに気が付いた。

 もしかして、自分から地雷踏んでないか。

 走って突撃すれば、すぐに済むはず。

 なのに……丁寧に地雷を発動させている。

 もしも、ダメージの少ない弱い魔法がいつか自分を殺すのでは?

 もしも、これが油断させる罠で本当は強力な地雷が仕掛けられているのでは?

 慎重に、慎重に。

 油断は許さない。

 目の前の存在が弱くても、油断こそが自分の敵なんじゃないか。

 そんなことを考えているのかもしれない。

 そう思うと、この魔物が恐ろしく見えてきた。

 あらゆる可能性を考える知能こそが脅威だ。



 全ての地雷魔法を踏み、無事生還。

 傷なんて、ほとんどない。

 そして、こちらを敵としてハッキリと認識した。



「しっかり踏ん張れ! 地に足を引っ付け続けろ!」



 隊長の声が轟く。

 同時にティグリスが、頭を低くし突進してきた。

 頭突きで蹴散らす気だ!

 盾と鎧を身に着けた団員が、前に立つ。

 吹っ飛ばされる。

 盾は、衝撃を受け止めきれず大破。

 人は紙のような軽さで、思いっきり吹っ飛ばされる。

 ついに、俺の番がきた。



 もちろん、衝撃とともに体が打ち上げられる。

 今、気づいたんだけど。

 『ものまね』って相手の姿はもちろん、鎧とか持ち物も再現するんだな。

 これは、便利……だ、な。



 防具がひしゃげる音と、頭に衝撃が走る。

 頭から落ちて、首が折れ……そうで折れないから生きてる。

 痛い! で、済んだ。

 死んでいないけど痛いふりをし続ける。

 さて、ピンチになるまで慌てない慌てない、一休み一休み。

 剣士が敵に攻撃するも、大したダメージは与えられず。

 立っているのも、残り3人。

 ここで隊長が動いた。

 突き刺していた剣を抜き、構える。



「ハァー! 『貫通断裂』!」



 ティグリスに突き刺さり、デルトが渾身の力で薙ぎ払う。

 これまで弾いていた肉体に傷がつき、血が溢れる。

 胴体はバッサリカットされ、これにはティグリスも表情を曇らせる。

 軽そうに大剣を振り回し、切り裂いていった。

 ティグリスは一旦離れ、隙を窺う姿勢だ。

 残った団員も攻撃するが、容赦ない爪で切り裂かれていく。







「戦える者は、私以外いない……か。速く治療してやりたいが」



 遠巻きに眺めていた魔法使いも、村に逃げ帰った。

 ま、正しい判断かもな。

 やっと訪れたピンチ、ここからは俺に任せてくれ!

 『ものまね』を発動し、ティグリスに化ける。



《スキル『魔力感知』『潜伏』『攻撃力+20%』『フレイム』『高速止血』を獲得》



 今なら、虎の気持ちが分かるかも。

 変身することは、できた。

 隊長は見といてく……ぜーぜー言って倒れそうだな、おい。

 見てくれなきゃ、お前たちに評価されない!



「2体、いたのか……。クッ! もう死ぬというわけか」

「オイ!」

「ウッ……」



 あんた、隊長なんだろ。

 気絶した……のか。

 じゃあ、俺だけが戦場にいるのか。

 今いるの、俺だけなのか?

 もうちょっと早く出ていれば、良かったか。



 後悔と怒りが混じった頭突きだ!

 ティグリスに向かって、俺の頭突きを返してやる。

 全力の頭突きで、ちょっとはダメージを与えたものの効果が薄い。

 助手が『ダークネス』を放ってくれた。

 黒い玉が敵の肉体に当たると、穴をあける。

 反撃に『フレイム』を食らってしまい、体は燃え、焦げ臭い。

 魔法と言えども熱いな。

 嫌な臭いが漂う。

 なら、こっちも見せてやれ。

 助手が『フレイム』を唱える。

 ティグリスも同様に燃え広がる。

 ついでに、『ポイズン』も唱え、毒状態にする。

 更に『ダークネス』も発動!

 闇の玉が胴体に触れると爆発し、大きく肉をえぐり取った。

 抉りとった部位から、赤い鮮血が噴き出している。

 それでも、怯まず突進してくる。

 さっと避けて、『ダークネス』を発動する。

 あらぬ方向に突き進んだ、ティグリスに『ダークネス』を食らわせた。

 そのまま倒れてくれと願う。

 願った通り、脚を震わせ、姿勢を維持することができず、地面に倒れ伏したのだ。



《レベルアップ! 5⋙7》



 残念ながら、この光景の目撃者がいないので、ロボの形姿に戻す。



 どうしよう……村に運ぶか。







「う……ここは……」

「あ! 目が覚めましたか!」



 デルトが上体を起こし、状況を確認している。

 彼らを連れて、ケイトの家で治療していた。

 村の家と理解したようで、その後どうなったのか訊いてくる。



「奴が2体出てきたのに……誰が助けたんだ?」



 ここぞとばかりに、俺が前に出る。



「俺が助けたんだ。ティグリスに化けてな」

「は、何なんだ? このロボットは、君のか?」

「はい! 私のかわいいロボです!」

「話がややこしくなるだろ!」

「お前が助けたのか……レイヲイウ。他の団員の様子は?」

「早口で棒読みとはな。疑っているみたい……無視するな!」

「他の方も生きていますよ!」

「ケイトも話を進めないでくれ!」



 デルトは信じていないらしい。

 くそ、見捨ててやればよかったか!

 不幸になるがよい!

 軽く呪いっぽいものをイメージし、寝ることにした。

 肉体的疲労はないが、精神的な疲労が残っている。

 ……おやすみ!







「報酬金だ」

「ありがとうございます。ではまた……転移石!」

「おはよう……ってあれ!? 消えた!? 転移!?」

「おはよう、ミミゴン! どうしたの? そんなに慌てて」



 置いて行かれたのか!

 しかも、転移石?



〈転移石は、登録した地点に一度だけ転移することができるアイテムですー〉



 ええー!

 帰りは一緒に連れて行ってもらおうと思って、だらだら寝てたら、奴らは予想以上に早く起きて、報酬を受け取って転移した。

 放置されたのだ。

 最悪の事態だな。

 王国まで一週間は、かかるんだろ?

 歩いていくとか嫌に決まっている。

 それに、あいつらが倒したわけでもないのに、のうのうと報酬受け取ることが許せない。



(ひどい! ひどいな、ミミゴン)



 機械の体じゃなかったら、客が一人も笑ってくれなかった時と同じぐらい泣いてる。

 ありがとう、エルドラ……分かってくれるのはお前だけだよ。

 エルドラに頼みたいことを思いつく。



「エルドラ、呪いって使えないか? あいつらを呪うんだ」

(すでにやったぞ)

「さすが! で、どんな効果だ?」

(一度だけ一斉に転ぶ呪い。なかなかシュールな光景だぞ)

「しょぼいな」

(我は封印されとるし、弱体化してこれしか使えんのだ)



 呪いをかけてくれるだけでも、ありがたい。

 せめて、恥はかいてくれ。



 ……想像して、笑ってやることができたので、これは良し。

 うーん、やっぱり大人げないな。

 さてと、アイソトープの城づくりは、どうなっているだろうか。

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