表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第一章 環境順応編
7/256

7 討伐依頼

 『危機感知』が反応している。

 近づくなと、スキルが警告しているのだ。

 が、黙って静観しておく。

 エルドラが、どうにかするはずだ。

 そう信じてから、あの二人に近づいた。



「お待ちしておりました、ミミゴン様。私『アイソトープ』と申します。エルドラ様の下で、メイドをしておりました」

「『ラヴファースト』だ。エルドラ様の護衛をやっていた。『ミミゴン様』と呼ばせてくれ」

「よ、よろしく」



 敵じゃないよな、味方だよな。

 よかったよ、味方で。

 乱れた心が落ち着いていく。

 敵にまわしたくない、絶対。

 固い握手を交わしてから、挨拶した。



(アイソトープ、ラヴファーストよ。このロボットこそ、我の最高傑作しんゆうであり、我を超える力の持ち主……その名もミミゴンだ! 二人とも仲良くしてやってほしい! そして、ミミゴンの命令は絶対だ。忘れるなよ)

「畏まりました、エルドラ様」

「ミミゴン様、命令はないか」



 命令。

 いきなり命令か。

 俺、弱いのに上から命令するってのは気が引けるな。

 とりあえず、何させよう?

 このクレーター、直してもらおうか。



「よし! アイソトープ、ラヴファースト! この円形の窪地を直してくれ! これは、ある意味エルドラの恥の象徴でもある。すぐに隠せ!」

(い、いや、まー、恥っちゃ、恥だけど)

「かしこまりました、ミミゴン様」

「『世界を眺める羽ワールビューウィング』」


 

 ラヴファーストが唱えると、3人の背中に光る羽が生えた。

 鳥になって羽ばたきたい時は、ラヴファーストに頼めば叶うみたいだ。

 勝手に羽ばたき、俺を上空へ連れて行く。

 アイソトープが窪地に向かって、手を伸ばし。



「……『大地創造』」



 一瞬にして、平らな地形となった。

 俺たちは、元に戻った地に足をつけた。



「他にご命令は、ありますか」

「アイソトープ。ここに、巨大な城を建ててほしい。中身も、とびっきり豪華で」

「かしこまりました。数日で完成いたします」

「ありがとう、楽しみにしてる。ラヴファースト、周りの魔物を全て倒してほしいんだ。あと村から、ここに行きやすいように道も整備してくれ」

「分かった。任せてくれ」



 ラヴファーストは、村へと続く道へ向かった。

 アイソトープはスキルを駆使して、城を建てている。

 この間に、エルドラと色々話すか。

 と思ったら、向こうからケイトが歩いてくる。

 なんでここに来たんだ?

 それに鍋を持っているのか?

 しかも、ラヴファーストが後ろから、ついてきている。

 アイソトープも、仕事を中断した。



「あっ、ミミゴン! ここにいたんだ! アイソトープさん、ラヴファーストさん。今日も持ってきましたよ。じゃ~ん、シチューでーす!」

「ほう、おいしそうだ」

「ありがたく頂戴します」



 ケイトが鍋を置いて、背負っている鞄から皿を出し、シチューをよそっている。

 ヤクザとメイドがスプーンで、器からすくって食べている光景だ。



「ケイト、この二人と知り合いなのか?」

「うん。前に薬草を取りに奥の方へ行って、ここに来たんだ。そしたら、大きい窪みが出来てて、中央にこの二人がいたの。ご飯、食べてないようだから毎日、持って行ってるんだ」

「私たちは、食事する、必要が……ないのですが、うまい、この方が、食べに来させるので、仕方なく頂いてるということです、おいしい」

「食べながら喋ると、食べた物が出てしまう。要するに、おいしいんだな?」

「はい、そうです」

「へへ、ありがと」



 ケイト、知らないかもしれないが。

 この二人、化け物だぞ。



「ミミゴンは、どうしてここにいるの?」

「俺は、二人に会いに来たんだ」

「ミミゴン様が、私たちの王です」

「王様ロボットだったの!? 旅するロボットで王様ロボット。やっぱりすごいね!」



 この娘の俺に対するイメージがどうなってんのか、よくわからんが悪くはなさそうだ。

 俺は、すごいロボットとして存在しよう。

 すごいロボットらしいこともしないとな。



 二人が食べ終え、ケイトは村へ帰って行った。

 弱いとはいえ、魔物がうようよいるのによく来れるもんだ。

 もしかして、強いのか。

 ケイトは、髪を揺らしながら楽しそうに帰っていった。

 少し時間があって、エルドラが脳内に声を届けてくる。



(ミミゴン、我の脱出計画が為に、ラヴファーストが解決屋をまとめる長ハウトレットと顔見知りになってもらった。普段、一般人にも顔を見せないハウトレットだが、ラヴファーストなら会うことが出来る。ラヴファーストも連れて行くとよい)



 ラヴファーストさん、人脈を築いていたのか。

 さすが、エルドラに仕えていた化け物だ。

 楽々、終わらすことが出来るね。



「ラヴファースト、俺とグレアリングの解決屋まで付き合ってほしい」

「分かった。いつ向かう?」

「そうだな、村に世話になったと伝えた後、向かおう」

(ちなみに、転移魔法は誰も使えないから自分の足で向かうしかないぞ)



 使えないのか!?

 まさか、歩いていくとは……な。



「歩いて、どのくらいかかる?」

(順調に行けて5日、普通なら1週間はかかるな)



 エルドラが夢のような魔法を使えるから、こいつらも使えるのかと思った。

 楽して攻略したかったが、使えないなら仕方ない。

 それに、気ままに旅するのもいいな。

 村に帰って、お礼と一緒にエルドラの国を宣伝しておこう、そうしよう。



「旅の準備をしてくれないか。また、呼びに来るから」







 村に帰ると村長やケイト、村人が集まって、誰か知らない集団と話している。

 その集団は、武器と防具を身にまとっていることから、戦士と予想した。

 村長は顔を真っ赤にして怒鳴っていた。

 近寄って話を聞いてみる。



「それは、わしらに出ていけと言っておるのか!」

「そうは言っていない。あなた達が生き残るために避難せよと言っている」



 集団のリーダー格だろうか、冷静に対応している。



「避難するのは魔物が見えてからだ、ハンター達。目標がいるのは、まだ先ではないか!」

「来てからでは遅い。『ティグリス』は素早いんだ。我々で対応できなければ死ぬことになる。避難しておけば我々が殺されても、あなた達は生きることができる」

「生きることが重要ではない! わしらが、この場所を代々引き継ぎ生活してきた」



 集団の下っ端が出てきて、口を開く。



「ここがそんなに良いのか? 他に場所を移しても、たいして変わらないだろ?」

「貴様! 言ってはいけないことを口にしよったな!」

「おい、ウグルス! 余計な口を出すな!」



 リーダー格が部下を怒鳴る。

 顔を真っ赤にした村長が、話を続けた。



「いいか、ハンター達! ここの村に住む者には、受け継がれてきた誇りがある! 決して、この土地を手放してはならないと。なぜか、分かるか! ここの土地は、聖なる土地だからだ! ここで育つ農産物はどこへ行くか、分かるか! 各国の王様や貴族に届けられる! 土が違うのだ! 土が! 他の場所に移動して、同じ野菜が育つと思っているのか! わしらは、誰のおかげで生きていられるか分かるか! 相手にされないと、儲からない。避難することは、わしらに死ねと言っとるようなもんじゃ!」

「村長さん、落ち着いて下さい。私の部下が不快なことを言ってしまい申し訳ない」

「貴様ら自体が不快だ。とっとと魔物を倒してこい! 奴がここに来ないうちに倒せばいい話だ!」

「「「そうだ、そうだ! 依頼を受けたんだろうが!」」」



 村人がブーイングを浴びせる。

 どうやら、村の近くに潜む魔物”ティグリス”の討伐を解決屋ハウトレットに依頼したらしい。

 この集団は依頼を引き受けて来たが、村の土地を標的が狙っていると知って避難させようとしていた。

 だが、この土地で育った野菜は特別で、金を持った連中に好まれている。

 もし、野菜の価値が落ちたらどうなる?

 もちろん、お得意様は買わないだろう。

 美味を求めて、買っているのだから。

 しかし……聖なる土地とは?

 確かに、ここの野菜がうまいのは、ケイトの料理で知っている。



「助手、説明を」

〈任せてくださーい! ここの地底から、エルダードラゴンの魔力を感じますー〉

「エルドラの魔力がなんでここに?」

〈漏れているみたいですー。魔力が迷宮から地面を伝って、ここの地面に集中していますー。ティグリスは、地下に溜まった魔力を手に入れようと狙っているようですー〉



 ここに魔力が集まっている?

 こういうのは、だいたい地面に何か埋まってたりするんだよなあ。

 それにしても野菜がうまいのは、ここにあるエルドラの魔力のおかげなのか。

 エルドラの魔力が凄い。



〈狙っているのはティグリスだけでは、ありませんよー。当然、他の魔物も我が力にしようと狙っていますー。ティグリスがすぐ狙わないのは、ライバルを殺しているからでしょうー。そして、機が熟したら……ガブーッ! ここは奪われるでしょうねー〉



 なら、俺が解決して好感度アップを狙うか。

 そしたら、毎日おいしい野菜を食べれるかもしれない。

 エルドラの国にも、様々な援助をしてくれるかもしれない。

 こっちも得して、村も得する。

 両方WINWINだ。

 よし、一狩り行くか!

 助手、俺がティグリスに勝てる確率はどれくらいだ。



〈……50%でしょうかー〉



 50%……『ものまね』があるのに?

 50%もある、0%よりはマシだなと考えた。

 さて、俺の計画を話す。

 狩人集団について行って、全滅しそうなところで俺が颯爽と登場。

 ボコボコにして勝てば、解決屋に俺の良い評判が伝わる。

 どっちにしろ、やった方が得だ。

 負けそうでも、逃げればいい。

 アイソトープか、ラヴファーストでも呼んで、片付けさせればいいからな。

 嫌われたくないから、出来るだけ自分でやろうとは思うが。

 化け物に助けを求めるのは、最終手段だ。

 チームリーダーが頭を下げて、宣言していた。



「では、あなた達の期待に応えられるよう全力で挑みます」

「無事終了を祈っとるよ」







「……くそじじいが」

「黙れ、ウグルス。我々に報酬を渡す客だ。依頼者が機嫌を損ねて、報酬を貰えなかった日を忘れてはいないだろうな」

「ええ、覚えていますよ、デルトさん。僕の悪口が原因だったのを」

「ハウトレット様の恩で生きている。仇で返すようなことはやめろ」

「わかってますよ!」

「ウグルスだけじゃない! 皆もハウトレット様のために全力を尽くせ。いいな!」

「「「ハイッ!」」」



 団員が返事をし、ティグリスのいる場所へ向かう。

 ティグリスは、村から10分歩いた平原の洞穴にいるらしい。

 俺は『ものまね』で団員に紛れ込み、歩いて行った。



《スキル『プロテクション』『バリアガード』を獲得しました》



 俺が化けた団員は立派な防具と盾を持っている。

 前衛として活躍だろうな。

 攻撃は受けたくないが。



「ティグリスは、おそらくあそこに見える洞穴にいるだろう。前衛は前に出ろ。お前たちは、決死の覚悟で攻撃を受け止め続けるんだ。隙が出来たら、一気に叩き込む! 強化魔法をかけろ!」



 強化魔法を覚えている者は、どんどん味方を強化していく。

 俺も、さっき『プロテクション』を獲得したから使いたいんだが。



〈ミミゴン、私こと助手にスキル使用の許可をいただけませんかー? 許可していただければ、私が的確に相手の弱点に魔法を放ちますー。つまり、ミミゴンはサボっていても勝手に攻撃できますー。これで、勝率50%が90%になりますー〉

「許可するから、速く使用してくれ」

〈ありがとうございますー。『プロテクション』ー!〉



 助手が自動的に魔法を使用してくれる。

 これからの戦闘は、助手に任せよう。

 誰一人、ものまねされた本人さえも気づかず、皆は強化魔法をかけることに集中している。

 『高速詠唱』の効果で、他の誰よりも速く準備を済ませていた。

 しばらくして、全員の準備を終え、闘う覚悟を決める。



「仕掛けろ!」

「『マインストール』!」



 たぶん、踏むと爆発する地雷のようなスキルだろう。

 魔法使いがブツブツ唱え始め、地面に魔法陣を描いていく。

 あちこちに地雷スキルが仕掛けられ、穴から出てきた時点で、おしマイン・・・ということだ。

 なんと卑怯なことか、勝つためなら手段を選ばないらしい。

 ちょっとは、恥じらい・・・を覚えてほしいな。



〈……あなたもですねー〉



「ウグルス! 奴を引きずり出せ!」

「『大爆烈弾』!」



 ウグルスの武器、ライフル銃から発射された弾丸が、穴に吸い込まれるように入っていく。

 やがて、洞穴の内部で爆発音が聞こえた。

 中でぐっすり眠っていたらしいな。

 『危機感知』が音と共に発動し、強敵であることを知らせる。

 おはようございますの挨拶が爆発、最悪な目覚めで、さぞかしご機嫌ななめだな。

 穴から顔が見える。

 全貌は真っ暗闇で見えないが、かなりの巨体だ。

 『大爆烈弾』が奴を怒らせ、冷静な判断を無くし、足元の確認も怠る。

 出てきたところを地雷が出迎える。

 砂煙が舞い上がり、巨体は覆い隠された。

 それでもシルエットは見え、ティグリスが近づいてくる。

 砂煙から顔を覗かせ、寝起きドッキリの仕掛け人を確認していた。

 ゆっくりと、それでいて怒りを感じさせる歩行で、その全貌が明らかになる。



 虎のような魔物だ。

 背面には黄色く、黒い横縞。

 それだけなら、動物園にいるのと変わらない。

 明らかに違うのが、巨大な体長と体高。

 人間の、丸呑みは余裕で出来そうだ。

 住んでいた洞穴の入り口も、大きいしな。

 戦士の顔は圧倒的大きさにビビらず、始まりを待っている表情だ。

 勇敢だなあ、感心するよ。

 慣れてるんだろう、経験の差か。



 戦闘の始まりを知らせたのは、地雷魔法マインストールの爆発だった。



「突っ込め! 我が隊!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ