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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第三章 リライズ決然編
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名無しの家:オルフォード

「急に忙しくなりおって。エルドラを助ける可能性さえ、見つける時間もないわい」



 そうブツブツと独り言を発しているのは、全身がくすんだ白い毛に覆われた老人。

 名は、オルフォード。

 とうの昔に絶滅した種族『毛人えみし』の一人である。

 とまあ、ワシの客観的な説明はこれくらいにして『神の見極め』によるアンビバレンスの解析を進めるか。

 『超妨害』により情報の読み取りが遅れておるが、あくまで遅れておるだけじゃ。

 へちょい妨害など障害ですらないわ。

 が、ちょっと苦戦はしておるがな。

 苦戦しておると言ったが、完全に苦戦しておるわけではないぞ。

 ちょっとずつしか解析できないというわけじゃから、負けてはおらぬぞ。



「なあ、じいさんよー。聞こえてるかー?」

「なんじゃ、誰じゃ、何の用じゃ」

「あたしはニーナ! この子たちの安全を守ってほしいの」



 チラッと見ると立っていたのは、ニーナと名乗る鬼人と、鬼人や人間の子供がいた。

 まーた面倒が増えるのかと、ため息をつく。



「なあ、頼むよ! あたしは、レラたちを助けにいきたいんだ!」



 老人の体を、ニーナは揺する。

 ふん、持ってる杖でバコッと叩けば首を吹っ飛ばして、強制的に黙らせることができるが、ミミゴンがうるさいからのう。



「ったく、しょうがないのう。グレーよ、こやつらの面倒を見てやってくれ」

「分かりました。はい、騒がずにこっちに来てね」



 傍で戦場を観察していたグレーに命令させ、子供たちを隣の図書室に誘導させた。

 これで大丈夫じゃろ、と訴える目でニーナを睨む。

 図書室に案内されたことを見て、安心した表情をした。



「ありがとう、オルフォード様!」

「機嫌の良い時だけ、オルフォード様! とはのう。さっき、じいさんとか言うとったじゃろ」

「え、言ってないよ。あ、あと武器庫から何か借りていっていいかなあ?」

「別にいいじゃろ。それより、ワシを敬え。言葉遣いから教えてやろうか」



 露骨に嫌そうな顔を見せるニーナは、言い返した。



「だって偉そうに、ミミゴン様に言うからだよ」

「実際に偉いのだぞ、ワシは。歳は500を超えとるのじゃぞ。ほれ、偉いじゃろ」

「だからって、王様に偉そうに言うのが嫌いなの! じゃあね、バイバイ!」

「ちょいと待て。これをもってけ!」



 ポケットから取り出した小瓶を、ニーナに投げつけた。

 受け取ったニーナは不思議そうな顔をして、尋ねてくる。



「なに、この青い液体」

「そこらで採れるような雫じゃないぞ。それは『変若水おちみず』という一時的に自身の霊魂レベルを上げる伝説の薬じゃぞ。すなわち、スキルの威力を上げることができる代物じゃ」

「……ありがとうございます、オルフォード様!」

「使いどころは自分で判断するんじゃぞ」



 そう言葉をかけると彼女は走っていった。

 はぁ、機嫌の良い時だけ敬語を使うんじゃないぞ。

 じゃが、これを機に敬ってくれるじゃろ。

 くくく、やはり尊敬されることは気持ちが良いもんじゃ。

 と、彼女から「オルフォード様」と言われ、尊敬される想像をして、引き続き相手の情報を調べていた。







 むぅ? ツトムのところでも何かしら起こっておるのか。

 あのダンジョンには最高の魔石が数多くある不思議な場所じゃが、まさか奴らが襲ってきたのか。

 まあ、ツトムなら上手くやるじゃろう。

 心配いらんわ。

 それに奥の方までワシの”目”が届かんが、ツトムと修行しておる凄まじい奴がおるみたいじゃから、大丈夫じゃろう。



 それにしても、アイソトープのメイド共もやりおるのう。

 戦闘経験など、ほぼ皆無だというのに諦めずに戦っておるわ。

 これも、ミミゴンへの忠誠心がそうさせておるのか。

 ラヴファーストのところも、ツトムも、メイドも皆、王様であるミミゴンのため、奮起し挫けず挑戦し続ける。

 あやつを最初に見た時は頼りない奴かと思ったが、見込み違いじゃったか。

 エルドラのやつ、ワシの先を見通してくるとはのう。

 ワシも老いたものじゃ。

 さすが、エルドラか。

 情報収集の天才オルフォードでも、勝てないとは辛いのう。



(そうだろう、そうだろう! 我は、ミミゴンのことは既に見抜いておったぞ)



 急に嘘くさい声が聞こえてきたと思ったら、エルドラか。



(なぬっ、ばれ……いや、本当の本当にミミゴンはできる奴だと思った。うん、分かっとったよ)



 偶然、暇つぶしに作ってた機械にミミゴンの魂が宿ったのじゃろ。

 見栄を張るべきじゃないぞ。



(見栄は確かに張ったが、一度は世界を支配した帝龍王だ。人を見抜く能力は誰にも負けてはおらんぞ)



 確かに、そうじゃな。

 あの時、あの人物で、あの場所が続けば、世界は平和になるはずじゃったからのう。



(繁栄しすぎた罰だと今でも思っている。エンタープライズも栄えすぎは良くないとミミゴンに教えておかないとな)



 そうじゃろうか。

 お前さんを牢獄へ閉じ込めた青年は、国の事よりエルドラという存在に注意を向けていたと考えておるが。



(我が何か悪い事でもしただろうか。……まあ、偉そうな国は捻り潰したがな)



 ミミゴンの魂からは、あの青年に似た……いや、転生者と呼ばれる者に似たエネルギーを感じておる。

 同一人物とは言わないまでも、警戒しておくべきではないか。



(まさか、ミミゴンが敵になると? がーはっはっは! そんなこと、ありえんわ。この見通すエルドラ様が言い切ってやろう!)



 ふん、お前さんがそこまで言うなら信じてやるかのう。



(それにオルフォードやラヴファーストは、ミミゴン相手に苦戦せぬだろう。最悪の場合、我が直々に決着をつけてやろう。その時が来たらな。まあ、そんなことないがな!)



 それをどこかの言葉で、フラグが立つというらしいぞ。

 意味は確か、特定のイベントが起こる条件がそろうこと……じゃったか。



(かーかっかっ。クラブやらプラグやら知らんが、起こるものなら起こしてみやがれ!)



 ……ダメじゃ、ちょっと覚悟しておくべきか。

 そんな、くだらない会話をしている間に、アンビバレンスの完全な情報が頭に流れ込んできた。

 ん? 召喚者の名前が読めぬが、これをラヴファーストに送ってやるかのう。

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