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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第三章 リライズ決然編
61/256

56 名無しの家―7

 ……ここは?

 真っ暗闇というより、闇そのもののようで何も見えない。

 死んだのか?



〈おお みみごんー! しんでしまうとは なにごとだー! しかたのない やつだなー。 おまえに もういちど きかいを あたえ……〉



 いつまで、お前の茶番に付き合えばいいんだ、『助手』。



〈おまえが つぎのレベルになるにはー あと……〉



 いい加減にしてくれ。

 茶番に呆れて、声を荒げる。

 ここはどこなんだ!

 助手は、からかうような物言いで説明する。



〈そう、カッカしないでくださいよー。あなたは意識を失って、気絶しているんですよー〉



 気絶しているのにお前と話せるのかよ。

 ていうか、『妨害』でやられたのか?

 『見抜く』が『妨害』され、気を失った。



〈この私としたことがー。やられちゃいましたねー〉



 『妨害』を防ぐには、意識エネルギーで戦わなければならないんだよな。

 『妨害』を防ぐことができなかったら、意識が奪われる。

 だけど、俺は『全障害ステータス無効』によって意識が奪われることはないと、最初のほうで『助手』が説明していたじゃないか。



〈ええ、意識が奪われることはありませんがー、なんらかの原因で同時に『気力』も失われたんですー。あなたが気絶したのは『気力』を失ったからですよー〉



 『気力』だって?

 なんだそれは。

 気力っていうのは人が持つ動力源というか、元気の素みたいな力だよな。



〈そうですー、その気力が尽きたのですよー。『妨害』失敗と『ものまね』によってー〉



 『妨害』されてしまったのは分かるが、『ものまね』だと?



〈『ものまね』が発動しませんでしたよねー。エルドラになりたくてもー〉



 そういえば、そうだ。

 そう、そのことについても聞きたかった。

 なぜ、発動しなかったんだ?



〈さぁー?〉



 さぁー、ってなんだよ。

 解説してくれ、お前が好きな解説を。



〈解説は好きですよー。もちろん、解説をー……と思ったんですが正直、知らないんですよね『ものまね』のスキルがー〉



 知らないだって?

 この世界のことなら大抵知っている、あの助手が?

 それは言い過ぎだ、と照れる吐息に続いて、話を始める。



〈全く未知のスキルなんですよー。いったい、誰が生み出したスキルなのかー。気になって詳細を検索したのですがー、全くの不明なんですよねー。効果は分かるんですがー、作成者不明ー。何を消費するのか不明ー〉



 ここにきて急展開って感じだな。

 誰かが生み出したスキルだから存在しているんだよな。

 スキルを生み出す存在と言えば、エルドラとかできるらしいが。



〈そして、エルフですねー。エルフの誰かが生み出したスキルなのでしょうかー? それにスキルの誕生には『対価』を求められますー。『スキル創造』という使命を持つエルフですが、そもそもスキル一つ造るのに『対価』を求められますから、バンバン造ることはできないんですよー〉



 スキル創造への『対価』ってなんだ。

 さっきから理解が追い付かないのだが。



〈とにかくー、私の推測によると『ものまね』は、ノーコストで発動できるスキルではないということですねー。私は『魔力』や『回数』が関係しているかと思いましたが、『気力』が関わっているとー〉



 つまり『気力』がなくなると『ものまね』が使用できなくなるというわけか。

 だが俺の気力って、どのくらいあるんだ?



〈不明ですねー。もちろん個人差はありますしー、『見抜く』などでも分かりませんからねー。ですが、もし『これ』が関係あるとしたらー〉



 『これ』?

 もったいぶらずに教えてくれ。



〈『ものまね』する対象の『レベル』が関係しているのではないかとー〉



 『レベル』か。

 魂の経験値だよな。

 魔物を倒すことで得られる力、と言い換えても差し支えない。

 ただ、レベルであると導いた過程が気になる。

 どうしてそう思ったんだ?



〈あくまで推測ですから、期待しないでくださいねー。この前ー、新都リライズに向かう電車で襲撃されたじゃないですかー。覚えていますかー?〉



 ああ、傭兵派遣会社VBVが魔物を大量に送り込み、傭兵の竜人二人が襲撃した事件だったな。

 ダンダンと楽しく会話している最中のことである。

 ダンダンは無事だろうか?

 あれだけご教示いただいたんだ、エンタープライズに招待してもてなしたい。



〈その戦いで、大量の魔物を『ものまね』しましたよねー? ですが今回、エルドラ1体分で気力が尽きましたー〉



 気力が回復していなかったんじゃないのか?



〈その説も理解できますがー、電車の出来事から1日あいているんですよー。ホテルで泊まって寝ましたよねー。気力は寝れば回復しますー。一回睡眠をとれば全快すると仮定してー、エンタープライズから新都リライズまで”人間”、”魔物”と実に数多く『ものまね』しましたがー、影響は特に現れませんでしたー。

 ですがー翌日、新都リライズから現在に至るまで、明らかに『ものまね』した回数は少ないでしょー? ですから『回数』は関係ありませんねー。ここから『レベル』ではないかと導き出したのですー。高レベルのエルドラ、ラヴファーストに今日何回もなっていますしねー〉



 現実世界であれば首を頷いているだろう。

 ただ、『魔力』の可能性もまだ消えてない。

 俺も『ものまね』のスキルに関する考察に興味が出てきた。

 恐らく、俺だけが取得しているスキルだと思っている。

 長年生きているエルドラが『ものまね』というスキルに驚いていたし、オルフォードも言及していない。

 いや、情報オタクのオルフォードなら何か知っているかもしれないが。

 『ものまね』は、これからも主力になるだろう。

 使う本人が詳細を知らないというのは恥ずかしいし、不測の事態に陥ることもあるはずだ。

 ……うん、今の俺みたいにな。

 すっかり最強スキルだと信頼しすぎていたし、依存しすぎていた。

 それが、災いした。

 反省、後悔は終わってからするとして、俺は『魔力』の可能性も考えてほしい。



〈『魔力』も消費している可能性ですが、ハッキリと言って不明ですねー。スキルの発動に『魔力』が消費されていないかもしれませんしー、消費していたとしても常用スキルの何かが消費を抑えているかー、もしくは『魔力』の消費が0になったかもしれませんねー。どっちにしても『魔力』が関係しているかは依然として曖昧なままですねー〉



 俺が持つ『魔力』の最大値は結構高いようだ。

 ゆえに魔法による攻撃が本当は望ましいのだが、横文字に弱い俺は物理で殴ることしかできない。

 『魔力』が関係していようがしてまいが、『気力』そして対象の『レベル』が関係している公算が大きいことは分かった。



〈あっ、そろそろ目覚めますよー。今、持ち合わせているスキルで可能な限りの回復を行っていますがー、それでも十分治癒できていないはずですー。起きたら、すぐに『テレポート』でエンタープライズに帰りましょー!〉



 助手の提案に引っかかる。

 名無しの家の住民を置いていけと言うのか。

 エルドラを一撃で殺せる奴もいるというのに?



〈ですが、現時点で私とミミゴンは会話していますー。つまり、生きているということですー。再び、あのビームを放つには、インターバルを置く必要があるのだと思いますー。殺したいのでしたら、既にミミゴンを殺していると思われますしー。早く起き上がって、インターバルの間に行動できなければ、今度こそ殺されますよー! いいんですかー! あなたが死んだら、私は……私は……〉



 もしかして……。







 俺が大切な存在になってしま。



〈――私に殺されたいんですかー? いいですよー、いつでもあなたの命、停止できますのでー〉



 冗談です、冗談です。

 ちょっとした戯れですよ、怖いな。

 というか、勝手に人様の命、握ってんじゃねぇよ。

 まったく『助手』に世話を焼かれるなんて、何十年も生きた大人とは思えないな。

 そして、視界に光が差し込んできた。

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