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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第三章 リライズ決然編
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51 名無しの家―2

〈『ものまね』ー!〉



 目の先にいるロボットを睨む。

 人間の肉体を、二足と二手の付いたロボットへと姿を変えた。

 無機質な印象を与える体だが、明らかに人間味あふれる生命を宿したロボットと言えるだろう。

 生き物ではないがいけるか、助手?



〈ロボットに化けても、何も得ないのですねー。勉強になりましたー〉



 魂の宿らないロボットに、スキルは所持できないからな。

 おっと呑気に考えている場合ではないぞ、ほらまたミサイルが飛んできたぞ!



〈迎撃ミサイル発射ー! そして、全ミサイル発射ー!〉



 自身のあちこちからミサイルが現れ、発射される。

 ミサイル同士がぶつかって、爆発。

 残ったミサイルは49号に飛んでいくが、突然方向転換し、こっちに帰ってくる。

 おい待て、帰ってくるな!

 どういうことだ助手!



〈ミサイルがハッキングー、操作されちゃいましたー〉



 操作されちゃいましたー、じゃないんだが。

 こっちもハッキングとやらをしてやれ!



〈ごめんなさーい。どうやってやるのかー、分かりませーん〉



 ミサイルは迷いなく突っ込み、エネルギーが炸裂する。

 直前に張った『バリアウォール』で何とか防いだ。

 よし、殴る!

 物理で攻めるぞ!



〈力こそパワーだー!〉



 地面を蹴って、勢い良く飛んでいく。

 鉄の塊であっても、速度は中々のものだ。

 ミサイル、レーザーなど次から次へと繰り出してくるが、こちらはチュートリアルをやっていない初心者パイロットの操縦なので殴るか蹴るかの攻撃しかできない。

 49号は常にこちらと距離を置いて、遠くから攻撃している。

 卑怯だが、製作者の技術力が目に見える。



〈こっちだって、卑怯の塊みたいなもんですよー〉



 だったら卑怯な攻撃、見せてやれ。



〈『トニトゥルース』ー! 『トニトゥルース』ー! 『トニトゥルース』ー!〉



 空中に浮かんだ49号を、天からのいかずちで叩き落とす。

 地面に墜とすことはできても、有効的なダメージは与えられていなかった。

 それでも『トニトゥルース』の連続魔法で、再び上昇しようとする機体を墜とす。

 その間に近づいて、思いっきり殴る。



〈オッラー! 見たか、コラー! 『トニトゥルース』ー!〉



 口が悪くなっているが、それにしても酷いハメ技である。

 49号は逃げることもできず、反撃することもできず、ただひたすら殴られ蹴られ、魔法で墜とされ。



 やがて、甲高い声を出して49号はストップした。

 もう降参です、と泣いて謝っているように聞こえる機械音だ。



〈よっしゃー! 私の勝ちじゃーい!〉



 倒れたロボットに、柱のような足で何度も踏みつけている。

 あまり傷付けないでって言われてるからさ、やめよう。

 弁償金、高くなっちゃう。



 『ものまね』で人の姿に戻り、爺さんのところに戻る。

 当然『ものまね』の発動を見られているため、爺さんと少女は訝しげに凝視してきた。



「お前さん、人か? いや、生き物か、と訊いた方がよいか」

「おまえ……にんげんじゃない。のら、のら……」



 少女は爺さんの後ろに隠れ、俺を窺っている。

 魔物と同じくらい怯えているだろう。

 しまったな、つい『ものまね』を使ってしまった。

 闘いは有利でも、話し合いでは不利になったな。

 諦観のため息をついて、爺さんは顎をさすった。



「まあ、よいわ。レモ、家に入ってゲーム作っとけ」

「じいちゃんになにか、あったら」

「こいつは良い奴だ。信じて待っとけ」



 少女は工場へ帰っていった。

 時折、心配そうにこっちを振り返りながら。

 その度に爺さんは、笑顔で手を振る。







 少女が工場へ入った姿を見て、一息ついたところで話が始まる。



「あの娘は、爺さんの孫か?」

「拾い子だ。捨てられておったんだよ、このスラム街にな。もう、10歳になる。まともな教育は受けとらん。が、ゲーム制作の才能があるみたいでな。プログラミングから、イラストもストーリーも全部、あの子が作りおるわ。パソコン与えたら、いつの間にか新都で人気のゲーム制作者だ。面白い子だろ」

「名前は、何て言うんだ?」

「カリフォルニア・レモレモ。そう呼んでやってくれと、あの子が入っていたカゴに書いてあったわ。ジュース、飲むか?」

「ああ、欲しい」



 近くに備え付けてあった自動販売機に硬貨を入れ、「好きな物選びな」と勧められた。

 お言葉に甘えて、メロンソーダのボタンを押す。

 まともなのが、これしかなかったからだ。

 落ちてきた真緑のメロンソーダを取り出して早速、飲みながら質問する。



「爺さんがエックスか? 【名無しの家】の長だという」

「おう、オレがアキダクト・エックス。一応、おさとなっとるが長らしいことはしとらん。皆がそう思っとるだけだわ」

「俺は、エンタープライズという国の王様をやってるミミゴンだ。よろしく」

「一国の王様が、この地に何の用だ。見ての通り、何もないぞ」



 何もない?

 いや、結構すごいけどな。

 多種多様なロボットに職人。

 新都をそれほど見てはいないが、ここから見える景色にあらゆる技術が使用されているのではないかと思うほど、血気盛んな『家』である。

 それに皆、幸せそうだ。

 組織として成功している空気を感じる。

 エックスの人をまとめる能力が垣間見える環境だ。



「とてもスラム街とは思えないが」

「そらそうだ。ここには数多の天才たちが集う『家』だからな! ここの奴らは新都リライズから、追い出された者ばかりだ。なぜ追い出されたか、分かるか?」

「政策に反抗したり、国の意に沿わない者とかか?」

「違うな」



 この広い一本道には、たくさんの職人が見える。

 ハチマキを巻いて汗を流して、他人が見たら苦労しているように見えるかもしれない。

 だけど、表情は無垢な子供の笑顔だ。

 エックスは、職人一人ひとりを見て声を出す。



「才能を見いだせなかったからだ。生まれながらに、才能は持っている。だがな、すぐに見えるものと見えないものがある。分かるだろ? 最初から知ってたら、人生困らないからな」

「ここにいるドワーフは、国で見つけることができなかったということか。自分の才能を」

「国は即戦力を求めている。学校で才能を見つけなければならない。でないと、社会追放。ヴィシュヌにも最低クラスと評価される。そこから、のし上がることなど、どう頑張ったって無理な話だ」



 それが、リライズという国の方針か。

 ドワーフは戦う力が弱い。

 他国と争うことなど不可能なため、作り続けるしかないのだ。



「ミミゴン、用件はなんだ」

「単刀直入に言うと、ここにいるドワーフが欲しい。俺の国は、差別のない平和な国の実現を目指している。そのためには、モノづくりの才能をもつドワーフが必要なんだ。もちろん、ただで働かせはしない。安全な住居を提供するし、金銭に関しても問題はない」

「エンタープライズは、国民を大切にするのか? 信頼できる関係は続けられるのか?」

「ああ、もちろんだ! 俺の言葉に嘘偽りはない。信じられないなら、一度来るといい。大歓迎しよう」

「なら、今日の夜! 集会を開き、オレから話をしよう! 今すぐ、ここを離れたい奴もいるかもしれないな。その集会に、ミミゴンも同席してくれるか?」

「ああ、もちろんだ」

「集会の時間まで、自由に見て回っておけ。オレは、このことをあちこちに知らせてくる」



 これほど話が上手くいくとは思っていなかった。

 ただ、あんなにも楽しそうに働いているのだから、離れたくない者が多い気もするが。

 まずは、第一の壁を突破だ!

 自分を褒めて、自身を成長させ、次に繋げる力をつける。

 集会まで遊んでおこうかな。

 疲れも癒しつつ、人々も知りつつ。



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