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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第一章 環境順応編
5/256

5 初戦闘

 迷宮の周りは、木々が生い茂って鬱蒼とした森だ。

 だが、木漏れ日のおかげで、進みやすい道を映してくれている。



「ここが迷宮の外……」

〈【迷いの森】と言われていますねー〉

「――助手!? 俺が言わなくても、出てくるのか!」

〈ミミゴン、解説させてくださーい。私は、あなたの役に立ちたいのですよー〉

「そ、そうか。これからも解説、頼むぞ」

〈はーい! お任せください!〉



 なんだか嬉しそうな声だった。

 世界を知らない俺に解説してくれることは、ありがたいけどな。

 スキルに自我があるのか分からないが、仲良くしておこう。

 怒らせて、いざって時に使えないと困るしな。



「さてと、適当に散歩するか」



 タイヤを動かし、散策する。

 ウィーンとラジコンカー特有の走行音を出して、あちこちを見渡す。

 日本でも見かけた小動物も、いるなあ。

 小鳥にリス、ヘビまで。

 あれが、魔物か。

 狙うのは、緑色の大きいトカゲっぽいやつ。

 どれくらいの強さなのか、スキル取得も兼ねて試すか。



「『見破る』!」



 名前:ベノムサウルス

 レベル:14

 種族:魔物

 称号:『毒使い』

 耐性:『毒半減』

 戦闘用スキル:『毒牙』『ポイズン』

 常用スキル:『毒成功確率UP』

 特殊スキル:なし



 毒を使う魔物か。

 レベルも高いな、俺レベル1だぞ。

 レベルってのもゲームで見たように高くなればなるほど強くなると考えていいかな。

 『ものまね』を使用して攻撃しても、毒属性だからダメージは与えにくい。

 それでも努力するのが俺だよ。

 物は試しだ。



「『ものまね』!」



 宝箱の姿から、トカゲの姿に変身する。



《スキル『毒牙』『ポイズン』『毒成功確率UP』を獲得しました》



〈『ポイズン』は、相手を毒状態にする玉が使用できるようになりますよー〉

「さっそく、使うぜ。『ポイズン』!」



 俺の頭上で作られた毒の玉が、ベノムサウルス目がけて飛んでいった。

 見事、命中!

 が、それほど効いていなかったし、毒状態にもなってなさそうだった。

 毒相手に毒は、効き目が薄いか。

 ベノムサウルスは、俺を敵と認識したようで二本の牙を見せつけ襲いかかってきた。

 攻撃を避け、すかさず『毒牙』で奴の体を噛みつく。

 牙に毒が流れているようだった。

 『毒牙』が発動しているようだ。

 毒の牙から逃れようとジタバタ暴れるが、俺は踏ん張って毒を流し続けた。

 ようやく、毒状態になったようで急激に力を失い、やがて死に至った。

 やったぞ、俺!

 これが元人間の力だよ。



「やっぱり、『ものまね』は使えるなあ」

(そのようだな、ミミゴン!)

「エルドラ!? 姿は見えないけど……」



 辺りを見回しても、エルドラの姿はなく、ベノムサウルスの死体が転がっているだけだ。



「どこにいるんだ?」

(迷宮の中だ。お前が心配でな。『天眼』っていう動かなくても、あらゆる場所を見通すスキルと、『念話』という離れていても会話できるスキルでサポートしようと思う。ちなみに我の声は老化して発音できないから『念話』で直接、ミミゴンに話している)

「そうだったのか」

(それはそうと、出口は分かるか?)

「いや、分からない。適当にレベル上げでもしようかと思っていたところだ」

(そうか、レベル上げも必要だな。この森は大きいから、出口を目指しながら上げていくと良い)

「ああ、了解。じゃあ、エルドラ。案内、頼めるか?」

(任せておけ! 我の案内は、確実だ。信用してくれ!)



 エルドラの案内に従い、トカゲの姿で目指した。







 40分は、歩いたと思う。

 蛇の魔物に化けて、ゆっくりと這っている。

 疲れはしないものの、出口が見えてこない不安があった。

 案内をするエルドラに「大丈夫なのか」と口にしたが。



(大きい森林なんだ。迷宮の場所は奥深くだから出口まで遠いのは、当たり前だ)



 そう言って、再び案内を開始した。

 まあ、嬉しいこともある。

 道中、ウッドウルフやヴァイパーなど魔物を『ものまね』しながら倒しているので、

 レベルが上がっている。

 けれど、この森……なんとなくだが魔物の数が少ない気がする。



 名前:ミミゴン

 レベル:3

 種族:兵器

 称号:なし

 耐性:『全障害ステータス無効』

 戦闘用スキル:『見破る』『毒牙』『ポイズン』

 常用スキル:『消音行動』『危機感知』『毒成功確率UP』

 特殊スキル:『ものまね』『機械』『助手』



 これが素のステータスだ。

 レベルも上がった。

 新たに2つスキルを獲得した。

 いいぞ! この調子だ!



 ん? 何か嫌な気配が。



(ミミゴン! 右だ!)

「――グッ!」



 ……こういうことも、ある。

 不意打ちを食らってしまった。

 『危機感知』で気配は分かっても、対応を急がねば意味がない。

 思いっきり吹っ飛ばされ、ヘビの姿である魔物「ヴァイパー」に化けていた姿が元に戻ってしまった。



〈『ものまね』で化けていたヴァイパーの体力がなくなってしまい、効果を失ったようですー〉

「ヴァイパーだったら死んでいるダメージを食らったわけか」

(奴は、この森で一番強い魔物。その名も『イエロードラゴン』だ!)



 正面には、黄色い外見で二足歩行をしている巨大なドラゴンがいた。

 大きい腕をこちらに向け、魔法を放ったようだ。



〈『サンダーボルト』ですー! 避けてくださいー!〉

「簡単に言うんじゃねぇ!」



 ロボットのタイヤが右に曲がり、加速して間一髪、避けることができた。

 あぶないところだった。

 直前までいた場所にある、木に大きく穴があいていた。

 油断ならねぇな。



「『ものまね』!」



 すぐにイエロードラゴン、そっくりの姿に変わる。



《スキル『サンダーボルト』『ダークネス』『高速詠唱』『MP消費0』を獲得しました》

《耐性『雷・闇属性無効』を獲得しました》



 勝てる! 油断しないかぎり!

 助手に訊きたいことが増えたが、今は戦いに集中だ。

 どうやって戦う?

 サンダーボルトとダークネスは使えないだろう。

 属性無効をもっているのだし。

 毒魔法で相手を毒状態にするか。

 こっちに敵が近づき、魔法を放ってくる。

 残念だが、耐性もってるんだわ。

 体にさっきと同じ雷の魔法が当たるも、効かず。

 毒で弱らせる!



「『ポイズン』!」



 前に『ポイズン』を放った時よりも、速く大きな毒の玉が形成され、イエロードラゴンの方へ放たれた。

 『高速詠唱』の効果と化けたイエロードラゴンの魔力が合わさり、より強力で速い毒魔法ができたのだろうな。

 毒の玉は、奴にぶち当たり毒状態になったようだ。

 こっちが有利になったな。

 サンダーボルトが効かないと知り、ダークネスを放ってきた。

 どうやら、バカらしい。



〈『ダークネス』ですー。避けなくていいですー。そのまま、やっちまえですー!〉

(奴の頭に思いっきり、パンチしてやれ!)

「はいはい、見ておけよ。渾身の一発を!」



 奴の放った魔法は、俺の体に当たるも消滅して不発に終わる。

 焦っているように見えたが、俺は気にしない。

 隙を逃さない、俺。

 何か魔法を唱えていたようだが、顔面を躊躇なくぶん殴った。

 魔法が効かないなら、物理で攻撃すればいい。

 簡単だな。

 よろめいたものの、まだ立てる力が残っているらしい。

 だったら、倒すまで殴り続ければいい。



「ウォーーー! ぶっ倒れろ!」



 1分ぐらい、一方的に殴り続けた。

 さすがに、かわいそうだなと思っても殴り続けてしまった。

 生きるか死ぬかの闘いだからな。



《レベルアップ! 3⋙5》

《称号『殴打』の獲得により、スキル『格闘』を獲得しました。

 『殴打』の称号を表示している間、素手による攻撃時『攻撃力+100%』の効果》



 はー、疲れたわー。

 よく頑張ったよ、俺。

 ここらで一息つ……え。



「いたぞ! イエロードラゴンだ!」

「『シャイニングレイ』!」

「いてッ!?」



 背後から突然、魔法が。

 体を魔法の光線が突き抜く。

 振り返ると、二人の人間がいた。

 イケてる男と女である。

 この世界にも、ちゃんといるんだな人が。



(ボーッとしてる場合か! 逃げろ!)

「腹に穴が開いて、痛いんだ」

(奴らは強い! 逃げたほうがいい!)



「『操魔剣 ドラゴンキラー』!」



 男の背後に、禍々しい剣が浮かび上がる。

 なんだあれ!?

 剣は、俺の方に突っ込んでくる。

 逃げるしかないだろ!

 『ドラゴンキラー』とか言ってたし!

 すぐさま、左に避け、足を一生懸命動かす。

 操魔剣は、追ってきたようだった。

 嘘だろ!? 追尾機能とかあんの!?

 かっこいいな。



「うぅっ!? さ、刺さったのか」



 剣は、背中から突き刺さり体を貫く。

 突き刺さっている剣は、役目を終えたようで消えていった。

 ぽっかりと穴のあいた胸からは、蛇口を捻ったように血が溢れ出してくる。

 魔物の姿で逃げるよりも、ロボのほうが速い!

 そう判断して『ものまね』を解除する。

 車輪を必死に回し、全速力で走る。

 以前、聞こえていたウィーンという駆動音は『消音行動』によって無くなったんだなと、このような状況でも考えていた。







 どうやら、撒いたようだ。

 後ろには、先ほどまでいた森がある。

 一心不乱に森の中を駆け巡り、ようやく眩しい日の光を拝むことができた。

 太陽のもたらす光に安心感があった。

 しばらくは落ち着けるか。

 これからのことを、エルドラと相談する。



「どうする? 近くに国でもあれば行くか?」

(……ミミゴン、疲れているだろう。近辺に上質な野菜が特産品の村がある。そこに行こう)

「で、どこにあるんだ? エルドラがまた案内してくれるのか?」

(案内するのは、我ではない。……そこの娘だ)



 前から、黄色に近い赤髪の若い女性が歩いてくる。

 肩までかかる髪をなびかせ、顔に喜色を浮かべている。

 俺に気づいたのか、走って距離を狭める。

 すると、俺を抱きかかえて。



「かわいい! ロボット!? 村に来る?」

「ああ、ぜひ連れて行ってくれ」

「うわ!? しゃべ……った!?」



 驚いて、俺を離しやがった。

 だが、猫のように華麗に着地する。

 ロボットが喋るのは不自然なのか?



(ロボットというのは、普通は戦闘用だったり、探索用だったりする。だから、喋る機能など一切無いのだが。それでは、面白くないと思って発声機能を付けてみたというわけだ)

「よく造れたな」

(ある少女が、喋るロボットを造っていたのでな。ちょいと技術をパクってみた)



 目立たないように喋らないほうがいいのか?

 別にどうでもいいことだが。

 それより、この女性は目をキラキラさせて俺を見ている。

 モテているわけではないだろうが、このままだと話が進まないので、こっちから話しかけてみた。



「近くに村があると聞いたんだが、あなたは場所を知っているか?」

「え、あ、うん! 私が住む村のことだね! すぐ行こう!」



 再び俺を抱きかかえて、村の方まで走って行った。

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