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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第三章 リライズ決然編
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エンタープライズ:ノウア

グラティア村の神父ファーザー・ノウア。村を奪われた彼が、神に導かれ到達した国エンタープライズで得た職業とは。

「ここは、エンタープライズです! 私の名は、ノウアと申します。案内は、私にお任せください! 誰よりも、ここを愛しておりますので、知らぬ場所などございません!」



 別に誰かに、話しかけているわけではないのです。

 そう、私ファーザー・ノウアは、コンシェルジュとして任命され、エントランスホールの目立つ場所に、チョコンと設置された受付カウンターで仕事しています。

 一人ただじっと座って、時間の流れを感じ続けています。

 さっきの言葉を、早く私は言いたい!

 「ここは、エンタープライズです! 案内は私に……」と、誰かを案内したい!



 ここの王、ミミゴン様から頂いた『コンシェルジュ』という仕事ですが、いまいち存在意義が理解できないのです。

 完成されたばかりの国。

 来客は少なく、いつも訓練に向かう者達が前を通過するか、メイド達が掃除に来るか、ぐらいです。

 仕事内容について、ミミゴン様からは「究極のパーソナルサービスとして、頑張れ」としか言われていないのです。



 それで、私なりに考えたのが「案内」「苦情の受付」「連絡係」です。

 が、「案内」なんて人が少ないんですから、しようがありません。

 「苦情の受付」に関しても、誰も苦情を言いません。

 「連絡係」としては、役立てる可能性があります。

 近くに、トルフィドの村というのがあるのですが、そこからケイトという女性がよく、主に料理に携わっている使用人達に料理を教えに来たり、採れた野菜を持ってきてくださりと、してもらっています。

 ケイトさんに「あの人はどこにいますか」と訊かれるので『念話』で、お呼びしたりしています。



 それぐらいでしょうか、私の仕事は。

 あと、たまに来られる商人の方から、荷物運びを手伝わされたりしてます。

 ……私が望んでいた労働では、ないのですが。

 私は守っていただいている国のために、汗水垂らして働くんだ、と思っていました。

 この仕事は楽といえば楽ですが、暇です。

 コーヒーを啜りながら、今日も流れを観察していきましょうか。







 まず、全使用人の長であるアイソトープ様。

 私と一緒に避難してきた人間も加わったことで、出来ることも増えてきたらしいです。

 女性の大半は、使用人となり『領域の番人テリトリーキーパー』に加わったのである。

 『テリトリーキーパー』とは、アイソトープ様率いる使用人の軍団名ですね。

 掃除班、食糧班、医療班に分かれています。

 アイソトープ様は、ミミゴン様の次にお偉い方、ちゃんと挨拶しておきましょう。



「おはようございます! アイソトープ様!」



 挨拶というのは相手に自分を覚えてもらい、自分が存在する証拠になるのです。

 今日も、コンシェルジュとして頑張っていますよ!



「……おはようございます、ファーザー・ノウア様。今日も、よろしくお願いいたします」



 はい、頑張ります!

 アイソトープ様は「絶世の美女」といっても、過言ではないでしょう。

 その整ったスタイル、髪は色も相まって「金の海」のようで美しい、そして引き締まった凛々しい顔。

 笑った顔を想像できないほど、仕事を熱心に取り組まれる。

 常に誰に対しても、気を引き締めているのでしょう。

 なにより、彼女の纏う雰囲気が違います。

 冷え切っているといっては失礼かもですが、とにかく普通の人間には出せない雰囲気なのです。

 それに途轍もなく、お強いとも聞きました。

 食料が不足していた時期、近くにいた魔物を討伐されたというのですが。

 その魔物のレベルが、90を超える「ミーノタウロス」だそうでした。

 ミーノタウロスといえば、神が創り出した化け物といわれ「目撃して、生きて帰れる者いないランキング(自分が作った)」でも上位を争う魔物です。



 ……一撃だったそうです。

 いえ、その光景を目の当たりにした者に言わせれば、一撃さえなかったと言います。

 ただ奴の前に立っただけで、即死……。

 伝説の魔物が攻撃することも出来ず、肉料理にさせられたのです。

 私もいただくことが出来、一口食べると口の中に楽園が広がりました。

 そして、筋肉ムキムキになりました。

 贅肉など全くない「筋力」というのが、端的に表現されている肉体へと進化したのです。



 当然、全員ですのでアイソトープ様の後ろを歩く、メイド達も無駄のない引き締まったボディを獲得しております。

 そして称号『星の子』を獲得し、更には大量の経験値も獲得、レベルも40を超えました。

 私は戦士ではないので、レベルなんて一桁だったのですが、この結果です。

 ということで、この国にいる者全員、もれなく強者になったのです。

 もちろん例外なく、子供たちもです。

 もしかしたら戦争を軽く、終わらせることが出来るかもしれません。

 私は戦争を憎んでいますから、今すぐにでも向かいたいくらいです。



 これらの事からアイソトープ様の種族は、人間ではないという結論に達しました。

 人間の姿をした化け物ではないか、ということです。

 ですが、私にも親切にしてくださいますし、何より国を守るという共通の目的がありますから、敵ではないということです。

 味方で、安心します。







「おーい! ノウア、案内してやってくれ!」



 あ、案内ですと!?

 よよよ、喜んでやりますとも!

 どうやら、ミミゴン様が何人かドワーフを引き連れて、戻ってきたそうです。

 ミミゴン様が「あとは、よろしく!」と、私に仕事をくださいました。

 その後『テレポート』で、どこかに行かれましたが、私はウキウキしています。

 何故なら、このセリフを言えるからです。



「ここは、エンタープライズです! 私の名は、ノウアと申します。案内は、私にお任せください! 誰よりも、ここを愛しておりますので、知らぬ場所などございません!」

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