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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第三章 リライズ決然編
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42 新都リライズ:道中―真価

 夜ではない、昼間だ。

 タナトフォビアは、ゆらゆらと何かに向かって手を伸ばしている。

 そいつは、開けた湖に漂っていた。

 『透明化』を解除すると同時に、光魔法『ジャッジメント』を放つ。

 背後の魔法陣から、光線が飛び出し、一気に貫いていく。

 一撃であった。

 死体など残らず、俺の糧となったのだ。

 俺の経験値となってくれたか。

 と、唐突に体が燃え始めた。

 熱いとは感じない、死霊スキル『スピリサファー』か。

 すぐに消火して、放った奴を見つける。

 どこにいるのか、と振り返った時、真ん前に佇んでいた。

 タナトフォビアが5体も。

 さっきのは囮か。

 こちらが動くよりも先に、即死スキル『キル』を飛ばしていて、食らってしまった。



 が残念ながら、即死は効かない。

 『ものまね』で、タナトフォビアに化け、すぐさま攻撃に移る。

 さて、化けたから何が貰えるかな。



《スキル『キル』『スピリサファー』『レベルマイナスデス』『死の宣告』『下位死霊召喚』『記憶に残る最期の瞬間』を獲得しました》



 大量に取れたが、恐らく化けたこいつが、既にエルドラの魔力を吸って強くなったのだろう。

 名前が『タナトフォビア』ではなく『死霊の頭領』という名前に変わっている。

 だが、姿は変わっていないみたいだ。

 見分けがつかん。

 それでも、まとめて倒すんだから意味ないな。

 ところで助手、第三闇魔法は何なんだ。



〈『ブラックホール』ですー。ちょっと特殊ですー〉



 と、解説してくれるのは嬉しいのだが、名前を言うと共に発動した。

 突如、大きな穴が空間に出来ていく。

 そして真っ黒の穴は広がると、全てを吸い込み始める。

 タナトフォビアは、その穴に吸い込まれ、出てくることは叶わなかったようだ。

 おかしなことに俺も、穴に吸い寄せられていた。

 湖の水も吸っていくので、光景が幻想的だが、俺も巻き込まれるとは。

 霊の体を素早く動かし、遠ざかろうとしているが吸引はまだ続く。

 おい、どうすれば止まるんだ!



〈自分で止めないと永遠に続きますよー〉



 だから、早よ言えよ、それ!

 で、どうやって止めるんだよ!



〈しょうがないですねー。それー!〉



 ぽっかりと空いた穴は塞がっていく。

 これで一安心かと思った瞬間、映像が目に焼き付けられる。

 タナトフォビアと湖の生物にズームされ、『ブラックホール』に吸い込まれる映像、というより実際に今起きているかのように追体験させられる。

 そう、それぞれの生物が死ぬ瞬間を映し出しているのだ。

 なんだ……これは、気分が悪くなる一方だ。

 そして現実に引き戻される。

 直前まで眠っていたかのようだ。

 助手の説明が聞きたい。



〈『ものまね』でー、先ほど獲得したスキル『記憶に残る最期の瞬間』というのがあったのを覚えていますかー。その効果は自分の攻撃で殺した相手の最期を、相手の視点で見るのですー。魔物スキルですから、人類には獲得できないスキルですねー〉



 なんつう悪趣味なスキルなんだ。

 殺した瞬間が好きだという、猟奇的な奴サイコパスにうってつけなスキルか。

 こんなスキル、消したいんだが。



〈消すなんて勿体なーい! 活用しましょー!〉



 このスキルを活用するだと。

 助手の発言を聞いて、絶句する。

 魔物を殺すことが、億劫になるなんて嫌だぞ。



〈これは『ものまね』を進化させる素材ですよー。まあ、聞いててくださーい〉



 何やら、おかしいことをしでかすみたいだが、黙って傾聴しとくことにした。



《スキル『ものまね』に『記憶に残る最期の瞬間』を統合し、進化させますか?》

〈イエース! しちゃってくださーい!〉

《統合開始……スキル構築中……》



 助手のことだ、何か良いことがあるんだと信じて、結果を待つ。



〈出来上がるまで時間がかかるのでー、今の間に埋葬物を掘り出し、破壊された環境を元に戻しましょうかー〉



 見渡せば、『ブラックホール』が周辺の地形を歪ませていた。

 地面は抉られ、湖と呼べない状態になっており、大変なことになっていた。

 責めるのなら俺ではなく助手ではないか、と考えてしまうが。



〈そうやって、人のせいにするのは良くないことですよー。知らなかったのか…? 責任だいまおうからは逃げられない…! ですー〉



 なるほど、回り込んで逃げられなくするか。

 分かりました、俺の責任です、はい。



〈ようやく理解できましたかー。ちゃんと、ミミゴンには『空間修復』という、スキルがあるんですから、次からは自分でやってくださいねー。一応、言っておきますが、私のせいじゃないのでー。『空間修復』ー!〉



 速攻、喧嘩売るのか。

 欠けていた地形は、元通りになっていき、訪れた時と違いが分からない状態へと戻った。

 湖にも水が満たされたが、魚は一匹もいない。

 何だか罪悪感が半端ない。

 本当にすまない、魚。

 それと、エルドラの魔力が込められていた物も掘り起こした。

 よく分からない化石だった。

 オルフォードのところに『転送』して、解析してもらう。







《構築完了。統合され『ものまね』は『真・ものまね』に進化しました》



 おー『真・ものまね』が完成した。

 ……それで、何が変わったんだ?



〈今まで目の前のものにしか、効果を発揮しませんでした。ですが『真・ものまね』は、一度化けた人物にいつでも化けることができるのですー。つまり、本人がその場にいなくても、『ものまね』することが出来るのですー!〉



 そりゃ、すごいな。

 だっていちいち、エルドラの所に行かなくても、化けることが出来るんだろ。

 真、と名を冠するだけあるな。

 工夫すれば、どのような相手でも倒すことができるはずだ。

 それに、タナトフォビアから手に入れた死霊スキルって、即死系だから強すぎないか。

 考えただけで、威張ってしまうな。



「試しに、トウハに化けてみるか」



 一度、暇なときに化けたのだが、試しにとやってみる。

 死霊の姿から鬼の姿へと、変化した。

 水の鏡で、その変化を確認する。

 おー、普通の顔でも怖い怖い。

 子供が近寄らないわけも理解できる。

 笑顔の練習でもさせれば、改善させることができるのだろうか。

 こいつの笑顔を最高級にするか。

 はい、じゃあ笑顔の練習!



「あ! は! は! は」

〈――何やってるんですか、人来ますよー〉



 ……『テレポート』。

 教えてくれてありがとう、助手。

 今の見られてたら変な人だと、トウハにレッテルが貼られるところだった。

 ていうか、何であんなところに人来るんだよ。







 サカイメの街から出ようと思う。

 さて、今自分には、車を運転したいという欲望がある。

 ですが、お金がない。



 だから、賢い自分は思いついた。

 そうだ、車になろうと。

 何言ってんだ、この大人、という言葉が聞こえてきましたが助手。

 『ものまね』って人だけじゃなくて、物にも化けることが出来るんだよね。



〈えー、出来ますよー〉



 というわけで、通りかかったセダンタイプの自動車に化けます。



 『ものまね』を発動させる。

 よし、成功!

 無事、車になりたいという夢が叶ったので、運転してみよう。

 おー、動く動く。

 ちゃんとガソリンを消費して、動いている。

 タイヤも回転し、前後左右自由に動かすことが出来た。

 それに合わせて、自動運転の車のようにハンドルが回される。

 人が乗っていないのに、勝手に動く車である。

 グレアリング領には舗装された道路が無く、車を走らすことなどできないだろうが、リライズ領は、舗装されているので、快適なドライブを楽しめる。

 ヘッドライトも点け、夜の道を照らす。



 ある程度、走ることができたので、この辺で休むことにするか。

 路肩に寄せ、停車する。

 今日は疲れたな、お休み。

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