41 新都リライズ:道中―暴力
「いや、傭兵じゃないんだが。ってさっきも言ったな。あんた、何者だ?」
「さー、当ててみては」
クイズ番組やってんじゃねーよ、答えろよ。
うーん、助手は分かるか?
〈おそらく、竜人でしょうかー。かなりレベルの高い方ですから、進化した龍人ですねー〉
竜人!? いや、龍人!?
けど、顔が竜っぽくないぞ。
顔をまじまじと見つめて、確認する。
気持ちの悪い笑顔が張り付いている。
〈それは戦闘の際『竜化』や『龍化』を発動させることで、全身が竜のようになるのですよー。普段は力を温存するため、人の姿なのですー。人といっても人間と同じではなく、体格も大きいですし、角も生えていますー。この男は、その角をニット帽で隠しているのでしょー〉
そういうことか。
この前、グレアリングでの騒ぎにいた、ラバートっていう竜人は『竜化』していたわけか。
じゃあ、エルドラは?
常に竜の姿だが、いや龍か。
(ん、我か? 人の姿に戻ることは出来るぞ。神龍人だからな。だが、人の姿では牢獄が広くなって、不便なのだ。それによぼよぼのジジイになるし、ブサイクで嫌なのだ)
移動が面倒で、姿を見られたくないと。
どうせスキルで、どうにかなるんだろ。
とりあえず、謎の男の質問に答えた。
「龍人だろ。それにニット帽で、龍人の証拠である角を隠しているとみた」
「お見事! さすが強者は違うねー」
パチパチと拍手している。
そして、ニット帽を外し、黒い角が二本現れた。
以外に小さいんだな。
女性のように艶やかな長髪を垂らし、握手を求める手を出してきた。
細目が、俺を捉えている。
「僕の名前は『ラオメイディア』! ラオって呼んでくれて構わないよ。スカウトマン兼社長だよ」
「社長? 何の」
目を光らせて、俺の手を握る力が強くなる。
口角を上げた後、ゆっくりと話し始めた。
「傭兵派遣会社『VBV』だよ。聞いたことない?」
「聞いたことないし、やってることは非人道的なんだろ。誰がついていくか。じゃあな」
逃げるように去ろうとするが、ラオの手が拒んでくる。
「君のパワーに一目惚れさ。ハンターやるより、もっと稼げるけどなー」
「俺が金で動く男だと思ったか、社長さんよ。今度、お宅の会社を潰して……」
何かが音と共に迫ってくる。
振り返って、説得しようと思ったが、目の前に剣先を突きつけられ、何も言えなかった。
なるほど、脅しか。
「僕と一勝負してみないかい? 君が勝てたら、退いてあげるよ」
「めんどくさいな。はいはい、勝負ね。一旦距離を置いて、始めようか」
「いいねぇ!」
互いの距離が広がっていく。
広い草原、近くには倒したラフレシアビュースの焼死体、草を揺らす風。
ラオと俺が向き合い、戦いの時を待つ。
と、戦いの前に聞いておく。
「あのさ、『VBV』って何かの略なの?」
「あー、『Violence・Breeds・Violence』だよ。暴力が暴力を生むってね」
英語も、この世界にあるんだな。
いや、各国の言語が混ざっている世界なのか。
俺は転生してきたのではなく、もしかしてゲームの世界に入ってきたとか?
今は関係ないため、脳内から弾き出す。
「いつでもいけるか!」
「ええ、いつでもかかってきなさい」
余裕溢れる笑顔を向けて、言い放つ。
じゃ、遠慮なく行かせていただくわ。
「『テレポート』!」
「……!? え、え、え、え」
戦う気なんて最初からない。
暴力が暴力を生むんだろ、じゃあ俺は戦わない。
『テレポート』で、サカイメの街に戻ってきた。
社長の誘いは無視だ無視。
ラフレシアビュースが討伐されたからか、最初に訪れた時よりも活気に満ち溢れていた。
特に解決屋の連中によって。
『地獄耳』のスキルで、遠くから盗み聞く。
あと念の為に『透明化』で、姿を隠しておいた。
「赤髪の兄ちゃんが、瀕死の俺たちを治していったんだ! それにあいつが、ボスを倒したんだとよ! レイランが言ってたぞ!」
「そうだ、受付嬢さんよ。あの人に会って、お礼がしてえんだ! どこにいるのか、わかんねーのか。家族とかは。ハンターなら登録してあるだろう」
「そう言われましても、討伐報酬はまだ受け取っておられませんし。それにたとえ、ハンターだとしても個人情報をお教えするわけには」
あいつら、俺が治した連中じゃねーか。
フフフ、堂々と姿を出したら……。
嬉しい想像をするが、うん分かってる。
めんどくさい事になるのがオチだ。
そうなる前に、おさらばするか。
で、どうやってリライズに行こうか。
エルドラ、案内頼む。
(そうだな、本来なら報酬を貰って、電車でリライズに直行してほしかったのだが。ミミゴンは旅を楽しみたいだろう)
その通りだ、エルドラ。
で、ちょっと考えたんだが、車に乗ってみたいと思ってな。
(ほう! 車か! 我も乗ってみたいものだ! 車なら二日で着くだろう)
二日もかかるのか、いや二日で済むのか。
よし、レンタカー会社でも探してレンタルしてみようか。
歩いて数分、やってきたのは車を貸し出す会社。
昭和の自動車から、見たことのある自動車、路面以外も走れるバギーカーもある。
免許持ってないけど、いけるだろ。
元の世界では持ってたし。
運転方法も同じだろ、簡単だ。
さてと、値段は……。
6時間、7000エンか。
金無いし、無理だな。
軽乗用車で、この料金。
乗りたいものだが、我慢して歩くことにするか。
エルドラ、リライズまで歩いて何日ぐらいだ?
(うーんと、1週間はかかるな。それに道中、魔物で溢れている。あまりお勧めでは、ないな)
『テレポート』が使えたら……。
一度行った場所じゃないと、転移できないのが弱点だな。
どうやって行こうかと、悩んでいると頭にしわがれた声が響く。
(ミミゴン、忘れておらぬか)
オルフォード……あっ。
ここが襲われる原因である、魔力の溜まった埋葬物を掘り出さなくてはならない。
さて、どう探すか。
オルフォード、案はないか。
(魔力が込められとるなら『魔力感知』で、位置が特定できるはずじゃ)
なるほど、早速試してみようか。
今まで切っていた『魔力感知』をオンにして、探ってみる。
波紋が広がるように、感知の範囲が広がっていく。
……大きな反応を発見した。
場所を確認し、『自由飛行』で空から向かう。
街中は結構入り組んでいるので、歩いていくのは賢くない。
「懸命に」ではなく「賢明に」を教えられてきたからな。
ズルしてもいいから楽を極めろ。
ただし、人に迷惑をかけるものはダメだ。
『自由飛行』を持ってるなら、使えばいいってこと。
それに……ウワッ!?
カラスが、腹に突撃……ぃ。
『透明化』だから見えてないのか、こいつら。
さっさと『疾風迅雷』で『高速移動』より速い移動をする。
ほぼ雷の速さで、飛ぶ。
楽ちんであること、この上なし……ウッ!?
また、カラス……ぅ。
ど、どんだけ当たるんだよ。
ちょっと不運すぎないか。
問題なく――まあ、カラスの件はあるが――到着した。
が、先客がいた。
この前、こいつに殺されたといってもいいだろう。
白装束を纏う死人、タナトフォビアが漂っていた。




