40 新都リライズ:道中―問答
謎の男はただじっと俺が何をするのか、隅から隅まで観察している。
ほぼ監視と言っていいかも。
で、正面の化け物をどう倒すか。
んじゃ、魔法でも使って、終わらせてやる。
そうはさせないぜ、と太い茨の腕で叩き潰そうと攻撃してきた。
攻撃を避けて、両手を挙げる。
それぞれの手から『インフェルノ』を繰り出す構えだ。
「両手『インフェルノ』!」
発射された二つの巨大な火の玉が直撃し、大爆発して煙が出来上がる。
終わりだろ……くそ、タフだな。
植物は火に弱いと思っていたら、大間違いだそうだ。
とんだ偏見だったようである。
まったく効いていないわけではないが、中に火が通っていないのだろう。
魔物は長くて棘のある触手を、数に任せて襲ってくる。
手を広げ、『バリアウォール』を発動。
バリアに触手が覆いかぶさり、日光を遮られてしまった。
時間が経過するたびに、バリアがへこんでいく。
上から無理矢理、押しつぶされ、バリアを解除しようものなら、すぐに薄くペッチャンコにされるだろう。
そんなことされたら、血がぶちまかれ、モザイクでないと見られない姿になってしまう。
いや、モザイクでも見られない!
『テレポート』で脱出だ!
近くに退避し、元居た場所には見ていて痛々しい茨で埋め尽くされていた。
さ、助手よ、クールなスキルを紹介してくれ。
〈自分の、オリジナリティー溢れる剣を造られてはいかがでしょー。『武器創造』で自由にイメージした武器をー。『チャージタイム0』のスキルもありますから、すぐに出来上がりますよー〉
ほう、面白そうじゃないか。
イメージね、イメージ。
と、思考している内に奴が迫っていた。
だが、『思考加速』のおかげで十分、時間があった。
さあ、出てこい。
俺の剣よ!
手に握られていた武器は。
ラフレシアビュースと同じぐらい巨大な大剣であった。
重ッ!?
ドシンと、地面に落とし、地面に窪みができる。
とてもじゃないが、片手では扱えない。
両刃は鋭く、どんなに大きかろうと叩き斬れるだろう頼もしさはあるものの、反面重すぎて引きずるようにしか動けない。
ああ、もう、しょうがねぇ!
これでも、いいから食らえ!
突進してくる敵に向き、走る。
大剣を地面に擦りつけて、目の前まで迫ってきた巨体に、全身に力を入れて振り上げた。
弾かれることなく、スパッと気持ちよく、迫る触手と茨で守られた身を斬った。
斬られた触手も体も、すぐに再生する。
効果は薄いか。
それにしても、腕が痛い。
重すぎる、こんなのイメージしてないぞ。
〈『武器スキル付与』で『無重量』を付けてみてはどうでしょー〉
あ、そんなのできたの。
だから、早く言えよ、それを。
じゃあ、それも試してみるか。
「『武器スキル付与』! 『無重量』!」
即座に効果が発動したようで剣が輝き、軽くなった。
軽ッ!?
片手で持てるどころか、小指でも余裕だ。
何だか遊びたくなってきた。
またまた詰め寄ってきた、ラフレシアビュースに対し、武器を持ち上げ待機する。
触手を伸ばし、牽制のつもりだろうが、お構いなく切り裂く。
接近した奴は、レイランを苦しめた青いブレスを放ってくるが効くわけがない。
俺はチャンバラごっこのように楽しく振り回し、傷つけていく。
触手が生えては斬り落とされ、ボトッと地面に落とし、再び生やす。
剣技スキルも発動させてみる。
「『貫通断裂』! 『プラントキラー』! 『斬撃飛ばし』! 『魔法剣:炎』!」
助手から教えてもらったスキルを、試して遊んでいた。
相手は怒りで我を忘れ、腕をあっちこっちに振り回し、青い霧も常時出ていた。
俺は無双ゲームのように、めちゃくちゃに斬る。
これで終わらすとしよう。
助手に言わせれば、剣で放つスキルで最も強いスキルを使用する。
大剣を軽々と動かし、逆手に持つ。
刃に宿る炎の火力を、魔力で更に高める。
下校中、傘を逆手に持って「アバンストラッシュ!」なんて言ってた頃のように、思いっきり腕を振る。
「『命絶つ聖剣』!」
光燃え盛る剣は、ラフレシアビュースの巨体を真っ二つにし、更に断面は燃え、再生不能にさせる。
一撃必殺のスキルを受けて、生きていられたらたまったもんじゃない。
火に包まれた巨体は地面に倒れた。
無事、討伐成功だ。
楽しかったな。
「あの化け物を、一撃で……な、何者なんだ! Aランクハンターなのか!」
どうやら、レイランはさっきの瞬間を確認していたらしい。
いきなり起き上がって、質問攻めである。
「さっきの技は! ハンターなのか! ランクは!」
「え、あー、ハンターじゃねぇよ」
「じゃあ、今の職業は!? お前、絶対ハンターの方が稼げるさ! 俺の紹介があれば、すぐにAランクになれる! どうなんだ!」
唾を飛ばし、興奮が収まらない様子だ。
近づけてくる顔を、手で押し返し話す。
「今の職業は、その、傭兵だ。そう、傭兵で各地を歩き回っている。偶然通りかかった街が、大変なことになっていると聞いて、助けたんだよ」
「よ、傭兵……」
傭兵という言葉を聞いたとたん、信じられないという表情が一変し、怪訝な表情へとすり替わった。
徐々に軽蔑する目で睨み始めている。
え、何、この世界じゃ傭兵って嫌われているのか?
ジョシュー知恵袋で答えを。
傭兵について教えてください
質問者
ミミゴンさん
異世界では、傭兵というのは嫌われているのでしょうか?
傭兵と職業を名乗ったところ、差別するかのような目を向けられました。
傭兵とは、どのような仕事なんでしょうか?
教えてください。
閲覧数:1 回答数:1 お礼:チ1000枚
ベストアンサーに選ばれた回答
賢くて頼りになる助手さん
まず、ハンターについて考えてみましょー。
ハンターとは、解決屋にて活躍する職業ですー。解決屋では、モンスター退治はもちろんのこと、人探し、依頼された物の採取、護衛、情報収集、未開の地の調査等、幅広く依頼を受け付けていますー。
察しの良い質問者さんなら、もうお分かりかと思いますー。
そうですー。解決屋では頼めない依頼を担当するのが、傭兵なのですー。殺人の依頼、暗殺、誘拐、強奪などー、人の道理に反した行為で稼ぐのが、この世界での傭兵なのですー。
ですから、人々から嫌われた職業なのですー。ぜひ、今度嘘をつく時は、傭兵とは名乗らないよう気を付けてくださいねー、ミミゴンさーん。でないと、その口、二度と開けないようにしますよー。
質問した人からのコメント
分かりやすい回答、ありがとうございます!
そうですか、私の中での傭兵のイメージではカッコいいと思って、それで答えてしまったので次からは気を付けようと思います。あと、最後の一言はいらないと思います。あなたこそ、二度と解説させないようにしますよ。
回答をいただいたところで、レイランはさっさと街に戻ろうとしていた。
「レイラン、実を言うと……」
「もう俺の前に、姿を現さないほうがいい。じゃあな、ミミゴン」
「おい、おーい! 傭兵じゃないんですけどー」
耳を傾けることすら許さないレイランは、サカイメの街に戻っていってしまった。
いくら嫌われているといっても、あそこまで反応するものなのか。
姿を現さない方がいいって。
まあ、俺が悪いっちゃ悪いんだけどな。
傭兵と嘘偽ったわけだし、正直に話せば良かったか。
俺も帰るとするかな。
「やーやー、君! ミミゴンっていうんだっけ? 傭兵なんでしょ。どこの所属かな?」
わ、忘れてたわ、お前の存在。
ニット帽を被って、ニッコリと笑っている男が立ち塞がっていた。
にやけて細くなった目の色は、赤だった。




