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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第三章 リライズ決然編
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39 新都リライズ:道中―戦闘

 人は洗濯機で洗濯するように混ぜられ、地にトラックが落ちれば衝撃が全身に響く。

 もう、この時点で運も体力もない者は死んでいる。

 どうなってんだ。

 生きている者は素早く戦闘態勢に入ろうと身構えるが、何かによって体を拘束される。

 植物の蔓か、あれは。

 這いつくばりながらも、横転したトラックから脱出する。

 植物の魔物が出す蔓を避けて、一旦離れることにした。

 拘束された者達は縛られていき、首を絞められ、胴体も絞められ、そして絞め殺される。

 頭は上空を飛び、首からは鮮血が噴き出して、上半身下半身はお互い別れを告げた後、重力に逆らうことなく、華麗に落ちていく。

 むせるような匂いを放つ血と、小雨が土に吸収され続けている。

 悲鳴、叫びが一瞬にして満たされた空間へと早変わりした。

 トラックの陰に隠れ、様子を見ようとしたとき。



「あんたは、どうする」



 隣に、あの男がいた。

 剣を持って、一緒に隠れている。



「おい、戦いにいけよ煙草野郎」

「あんたもだ。俺は状況を見極めて、斬りこむのさ」

「俺もそうだ。もうちょっとしたら、行く」

「先に出ている第一陣の奴らは全滅だろうな。ほら、見ろ。平原のあちこちで戦っているように見えるが、ハンター側がやられてる。俺ら第五陣が来たところで、意味ないんじゃないか」



 魔法を放ち、武器で抵抗しているハンターがチラホラ見えるが、こいつの言う通り、ほとんど防戦一方のようだ。

 かなりの強敵なのか、こいつらからしたら。



「俺の名は、テル・レイラン! レイランって呼んでくれ。あんたは?」

「ミミゴンだ」

「ミミゴン……また会えることを楽しみにしてる。じゃあな!」



 レイランは、魔物の群れへ駆け出していった。

 剣を器用に振るって、敵を掻っ捌いて無双していく。

 『見抜く』で強さでも見てみるか。



 レベルは……33か。

 あいつ結構、強い方なんだな。



「『魔法剣:炎』! 『肉体強化』!」



 剣が燃えただと?

 『魔法剣』というスキルだろうな。

 周りのハンターよりか段違いに強く見える。

 蔓による攻撃をかわし、即座に蔓ごと敵を斬り去っていく。



 放っておくか、あいつは死ななそうだし。

 こっちはこっちで、さっさと終わらせよう。

 レイランとは、逆の方向にいる群れへ向かう。



 うわぁ、ハンターの体が醜い。

 酷い死体が多い。



 バチッ!!



 細長い蔓が勢い良く、体に打ちつけられた。

 いた……くはないが、無数の鞭でしばかれているようだ。

 被虐性欲は持ち合わせていないし、打撃音がうるさいので終わらせる。



「助手、凄いの頼む」

〈イエスサー! 『トニトゥルース』ー!〉



 瞬間、天から一筋の雷が落ちてきて、魔物に直撃したかと思ったら、周りにも拡散し、他の魔物も食らって息絶えた。

 ギリギリ見えたけど、あっけない。

 奥から更に、植物系魔物の塊が押し寄せてきた。

 睡眠効果や麻痺の効果があるらしいブレスを吹きかけてきた。

 当然、全障害ステータス無効の俺なので効き目は無く、助手が第三位魔法を発動する。



〈ミミゴンの体、操らせてもらいますよー。『アースシェイク』ー!〉



 俺の意志で放たれたわけではない右の握り拳が思いっきり地面を殴り、地震を起こした。

 助手に乗っ取られたのか、俺。

 立っている周りの地面が盛り上がって、魔物を上空へぶっ飛ばした。

 盛り上がった地面は魔物を飛ばして、元に戻った。

 環境破壊ではない、魔法だ。

 地に落ちてきた魔物は、グチャッと潰れて、死ぬ。

 大量に。



〈続きましてー。『テンペスタース』ー!〉



 異変に気付いて、挑んできた群れへ無慈悲な嵐が襲った。

 山のように大きな暴風が、地から天を目がけて発生し、巻き込まれた魔物が舞い上がっていく。

 この前の暴発させた『ストーム』よりも巨大で、威力のあるそれは天に到着する前に身をバラバラにされ、血を纏った風となっていた。

 サーっと消えていき、ただ魔物だけが消え去っていただけだ。



〈まだまだこれからですよー! 『アイスバーグ』ー!〉



 ボーリングを転がすように腕を振るうと、それにあわせて氷が地面を支配していく。

 やがて、こちらに気づいていない魔物達の方へ氷山が出来上がっていき、魔物も含んだ氷の山と化した。

 その山を渾身の右ストレートで突き抜くように破壊し、氷の塊が風に吹かれて塵となった。

 最上位の魔法クラスである、第三位魔法。

 本当に強いな、簡単に取得できない理由が分かる。



〈この辺は片付いたので、激戦区に飛び込みましょー! 『疾風迅雷』ー!〉



 おい、また勝手に!?



 乗ってきたトラックの横を一瞬で通り過ぎて、空に移動していた。

 もう、助手のされるがままだ。

 何だか楽しそうである。

 まあ、俺は見てるだけなので、楽ではあるのだが。

 空中で腕を広げ、背面に複数の魔法陣が展開していた。



〈『ジャッジメント』ー! よいしょー!〉



 パンチするように手を動かすと幾多の魔法陣が光輝き、光線が発射された。

 光は数多くの敵を貫き、肉体と共に消滅する。

 それまで必死に戦っていたハンターは、驚愕の目で現状を把握しようと努めている。

 しばらくして、大魔法を放ち、降りてくる俺に視線が注がれた。

 ゆっくりと地に足をつけて、ボス『ラフレシアビュース』のもとへ向かう。

 ていうか、何であいつにも撃たないんだよ。



〈それじゃあ、面白くないでしょー。ちゃんと、ミミゴンにも活躍の場を与えようと残しておいたのですよー〉



 それは、ありがた迷惑というやつだ。

 戦闘に関して、もう全部助手に任せたいんだが。



〈えー、助手なんですよー。『賢王』なんですよー。戦うことが、メインのスキルじゃないんですよー。もし私がいなくなったら、どうするんですかー?〉



 ……はいはい、分かりました。

 ここは素直に従って、ちゃっちゃと終わらせるとするか。

 道中で負傷しているハンターを『マイクロヒーリング』というスキルで、傷を癒した。

 後ろから感謝の言葉が聞こえてきて、正直嬉しい気持ちだが、手を振ってその場を後にした。







 レイランは、ボスの攻撃をかわしながら、剣を振るって、太長い蔓を断ち切っていった。

 だが、断面からまたも再生して、再びレイランを襲っている。

 これでは、キリがない。

 それにレイランは疲れが見えてきて、間もなく全身に強烈なムチが打ちつけられ、吹っ飛ばされてしまった。

 すぐに駆け寄って、回復スキルを発動しようとしたが。



「回復はいい。俺はピンチで強くなる……男なんだ。『魔法剣:炎』! うおおおおー!」



 無謀というんだよ、それ。

 レイランの剣は『魔法剣:炎』というスキルによって、刃の部分が炎で燃え盛った。

 果敢に突っ込んでいったレイランだが案の定、素早い攻撃を避けることが出来ず、逆戻りである。

 それでも、剣を支えに立ち上がって、また挑む。

 それでも、挑む。

 それでも。

 おい、とボロボロの体を無理やり制止させ、落ち着かせる。



「レイラン、分かってるだろ。頑張りすぎだ」

「はぁ!? これで……頑張りすぎだと? 努力して勝って、街を守るんだ!」



 止める手を払いのけ、敵に刃を向け、突進していく。

 ラフレシアビュースは、今までの蔓攻撃を止め、何かをしようと構えていた。

 まずいやつじゃないか。

 体全体が膨らんで……一気に放出される。



 巨体の下部から、真っ青なブレスが吐き出された。

 レイランを包むブレスは、たちどころに状態異常にさせる。

 猛毒、麻痺、睡眠、魅了、スキル封じ、呪い、沈黙……。

 障害ステータスのオンパレードだ。

 迅速にレイランの体を抱えて、青の霧から抜け出し、治療を開始する。

 助手、こいつを治してやってくれ。



〈早くしないとですねー。彼の体に手を添えてくださーい〉



 言われた通り、悪夢にうなされているような表情をするレイランに触れる。

 彼を侵食する霧が、触れた俺にも乗り移ってくるが。



「俺の体は、受け付けないってよ」

〈いきますよー! 『パナケイア』ー!〉



 真っ白な光が霧を晴らし、レイランを治癒した。

 おー、完璧に治ってる。

 そいつは笑顔を浮かべて、気持ちよく眠っていた。

 ま、起きるとうるさいから、睡眠効果だけは取り除いていない。

 これで、冷静に名声を得る倒し方を考えられるわけだ。



 振り返って、観客はどのくらいいるのかと、思ったら……。



「誰も、いない! おい! トンズラこいてんじゃねーよ、腑抜け共!」



 またこれか!

 毎回毎回、肝心な時にいない。

 神が降臨されたぞー、とかないのかよ。

 いや、案外どっかで見てるのかも。

 『気配察知』、『魔力感知』、『生命感知』……。



 うん、いないな。

 周囲に人ひとり、いな……。

 ん、近くに一人いるな。

 どこかな……。



「危ないよ! そこの、お二人さん!」



 注意を呼び掛ける声で見上げる。

 ラフレシアビュースの太い蔓で、叩きつけられそうになっていた。

 俺は大丈夫だけど、レイランが。

 あー、慌てるな俺!

 えーと、えーと……。



「こっち! 『ワープ』!」



 声が聞こえたと思った瞬間、景色が変わって、さっきの場所から移動していた。

 もしかして、転移させられた?

 そして、鳴り響く衝撃音と衝撃波が、俺らを襲った。



 直前まで、いたところには、窪みができていた。

 危なかったー、危なかったー。



「さーさ、立ち上がって! あいつに、一番のスキルでやっつけて見せてくれよ」

「あ、あ、あー」



 腕を引っ張られて、強引に立たされる。

 何なんだ、こいつ。

 深くニット帽を被って、ニヤッと笑っていた。

 背中を叩かれ、せかされる。



「しゃーねーな。一回だけだぞ」

「期待期待! 楽しみにしてるよー!」



 極太の茨で巻かれ、頭頂部には大きく花が咲いている。

 ウニョウニョ、と棘の生えた植物体を動かしているラフレシアビュースに向き直す。

 ちょいと、進化した俺の練習に付き合ってくれ。

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