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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第三章 リライズ決然編
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38 新都リライズ:道中―襲来

 ノウア達の一件は、リーダーに任せて……。

 いよいよ、リライズに向かう。

 『自由飛行』のスキルと『高速移動』のスキルがあるから、楽に行ける。

 ……などとは思っていないし、むしろ旅を楽しみ、リライズをよく知りたいと思い、ゆっくり行くことにした。

 難民の一人に化け、ここからリライズまで、どのくらい時間がかかるのか調べてみる。

 化けたのは、ちょっと痩せていて赤髪の男だ。

 準備は整った、いつでも行ける。

 それじゃあ出発、の前に。



「助手、どうやって行けばいい?」

(案内は、我に任せろ! でないと、我の出番がないではないか)



 エルドラが『念話』で心配そうに話しかけてきた。

 まあ、確かにそこから動けないんだから、出番なんてないよな。

 ならばここは、エルドラにナビゲートしてもらおう。



(任せろ任せろ! さー、行くぞ!)



 エルドラの案内に従い、歩き進んでいく。

 『天眼』っていうスキルで、上空から見下ろして道案内しているんだろうな。

 と考えている時、エルドラが。



(なあ、前の事だが)



 と話し始める。

 前の事?



(魔神獣『蛇足』と戦った時の話だ)

「あーあれか。苦戦したなぁ。だけど、おかげで恐ろしいぐらい、強くなったけどな」

(我に化けて、戦っただろう。実は今の我、かなり力を失っていて、弱くなっているのだ)



 あの強さで弱いというのか。

 最強の名も伊達ではない、と思いながら戦っていたが。

 エルドラの本当の強さは、あんなものではないのか。



(うむ。全盛期の我なら『蛇足』など、軽く葬れただろう。すまんな、ミミゴン。痛い思いをさせてしまった)

「おいおい、謝ることかよ。むしろ、衰えていたおかげで……俺の中で名場面だ、あの戦い。変なこと言っているような気もするが、それでもお前がいなければ勝てなかったんだ。感謝すべきは、俺の方だ」

(ミミゴン……我が親友よ……)



 泣きそうな声で……いや、もう泣いている声を出している。

 他のどの生物より長く生きているのに、涙もろい。

 優しいこいつと出会ってよかった。



 泣き声で、エルドラは伝える。



(どこ行ってるんだ。さっきの分かれ道を、右だ)



 早く言ってくれ、もう結構離れてんじゃねーか。

 急いで、分かれ道に戻った。







 今ではグレアリングに向かった時の、ラヴファーストのように圧倒的レベル差で魔物を恐れさせている。

 まるで、RPGで出会うモンスター、全て逃げていく状態になっている感じだ。

 この例えは、シンボルエンカウントのゲームのみだが。

 グレアリングとリライズの境界に位置する街で、今日を終えることにしよう。

 エルドラの案内で『サカイメ』という街に辿り着いた。

 太陽は沈み、すっかり夜となっている。

 さて、宿屋を探すか。



 街に入って、俺は耳を澄ませた。

 そこらから車のエンジン音が聞こえてくるからだ。



 街中に入ると、普通に車が走っていた。

 ていうか、街がどこか日本のように感じる。

 和風というわけではなく、現代。

 あれは電車じゃないか。

 あそこには日本でも見た、ファストフード店にそっくりだな。

 あれも見たことがある、コンビニエンスストアというやつだ。

 近寄ってみたけど、コンビニそのものだ。

 ファンタジーとは感じない街並みだな。

 ん、あれは宿屋でいいのかな。

 発見したのは日本旅館に似ている建物だ。

 入口付近に立てかけてある店の看板には。



[全室インターネット回線完備。ビジネス・出張でご利用いただくお客様でも、快適にお過ごしいただけます]



 全室インターネット回線完備って。

 よく見たら、若者は歩きスマホをしている。

 若者といっても、人間やドワーフが混じっているわけだ。

 リライズに来てみたが日本にいる気分だ、と納得して宿に泊まることにした。



 部屋には畳が敷かれ、テレビも置いてある。

 頭を掻いて困惑しながらも、テレビをつけてみる。



『これな、めっちゃ凄いぜ』

『どれぐらい、凄いの?』

『CMの後、いよいよ公開!』



 化粧品のコマーシャルが流れたり、武器の宣伝もしている。

 出演者は全員、背の小さいドワーフで気になったが。

 そこだけ違和感がある。

 見る限り、便利な道具ばかりだが、どうしてグレアリングにはなかったんだ?



〈リライズは、中立を貫く国ですー。原則として、リライズの技術をグレアリングやデザイアに持ち込むことができませーん。そういう決まりですからー〉



 だが、武器とか防具とか戦闘に使用する道具なんかは大丈夫なのか。



〈戦争経済で成り立つ国ですからねー。この国は、他国同士の戦争を望んでいるんですよー〉



 てことは、裏で争いを勃発させてたりとか。



〈ありえますねー。ノウアが言っていた戦争が中々終わらないのも、リライズのせいかもですねー〉



 ある意味、マッチポンプともいえるな。

 複雑だなあ、国については。

 今日は十分歩いたし、熟睡できるはずだ。

 温泉もあるみたいだが、別にいい。

 不快感というのは全くないからな。

 部屋の明かりを消して、今日に別れを告げた。







 ……大きいあくびが出てしまったな。

 日が昇って……おらず、雨が降っている。

 黒い雲が日光を遮っているようだ。

 窓から覗ける街中が、やけに騒がしい。



 支払いを済まして、部屋を引き払って外に出る。

 街中の一部分に人垣ができていた。

 どうやら騒がしい原因は、サカイメの解決屋にあるようだ。

 雨の中、職員が必死に呼びかけている。



「戦える方、いませんかー! ハンターでなくても、構いません! この街に向かってくる魔物の討伐に挑んでくださる方、キッチリ報酬を支払います。どうか、街の防衛に協力してください!」



 魔物の討伐?

 サカイメの街を目がけて、その魔物が向かっているということか。

 それらのことを、エルドラが教えてくれた。



(ミミゴン! 大量に植物系の魔物が向かってきてるぞ!)



 植物系の魔物だと?

 何で、そんなのが。

 お金があまりないし、受けてみようか。



「あの、俺……やります」

「ありがとうございます! こちらの紙にサインと、デバイスに手を置いて下さい」

「デバイス?」



 これ、タブレットだな、板状コンピューターの。

 紙にはペンで名前(偽名)を書き、デバイスの黒い画面に手を当てる。



『登録完了しました』

「はい、手を離してくださいね。では、あちらのトラックに乗ってください」



 細い指が差した方向には軍用トラックがあり、荷台に人が座っている。

 俺もそれに倣って、カーゴトラックの側あおりに背を当て、腰かけた。

 男ばっかりで暑苦しいし、煙草をバカスカ吸っているので煙たい。

 おまけに雨だから、下がびちゃびちゃだ。

 ……さっさと抜けたい。



「ご機嫌はどうだ、元気か? 一本どうだ?」



 煙草の箱から煙草、一本飛び出ていて、いかにも取ってくれと言わんばかりだ。

 隣の男が差し出している。

 異世界の煙草は吸ったことがないし、試しに。

 一本取って、ライターで点けてもらおうと手を伸ばしていたが。



「ん? 吸わないのか?」

「いや、点けてくれないか」



 苦い顔をされ、指摘された。



「それぐらい、自分で点けろよ。まさか、簡単な炎魔法も使えねぇのか」



 そいつは煙草の先端に人差し指からポッと出した火を当て、吸っていた。

 え、ライターとかないのか。

 助手、恥ずかしいから火を点けてくれ。

 俺の人差し指からも小さな炎が現れ、それに先端を当てた。

 煙草を唇の間にくわえ、紫煙を吐き出す。



 …………んー。



 やっぱ俺には、あわないな。

 隣の男は気持ちよさそうに味わっている。

 何もかもを忘れているような恍惚とした表情だ。

 詰め込まれたトラックは走りだした。

 こっそり煙草を『助手』に消してもらい、じっとしておく。

 舗装された道路の上を走っているので、そこまで振動はこない。

 到着する前に、情報収集でもしておくか。

 口をパクパクさせながら『念話』は怪しいので、『助手』が補助して脳内で話す。

 エルドラ、植物系魔物ってのは何だ?



(ボスが『ラフレシアビュース』。周りの雑魚が『丸呑み花』、『ヒガンバナ』とかだな。数も多いし、レベルも高い。並みの者は、手も足も出せず殺されている)



 これは、異常事態なのか?

 あまり詳しくはないが、そんな気がしてならない。

 グレアリングでも、魔物に異常が発生していた。

 それらと同じ臭いがする。

 オルフォードに聞いてみるか。

 オルフォード……サカイメの街で起こっていることだが。



(ラフレシアビュースか。奴は街ではない。エルドラの魔力に向かっておる)



 エルドラの魔力。

 トルフィドの村を襲おうとしていたティグリスの件も確か、エルドラだったな。

 エルドラの漏れ出た魔力が、埋められている物に吸収されている。

 魔物の集団も力を手に入れようと、邪魔者を排除しているわけだな。

 で、普通に倒せば問題ないか?



(問題はない。そして事を終えたら、地中の物を取り除け)



 助かった、オルフォード。

 進化後、初の戦闘だ。

 助手、ほどほどの力を見せてくれ。



〈いつでも来い! ですー〉



 そして、目的地到着。

 トラックは止まり、ハンターが一斉に荷台から降りようとした、その時。



 突き上げるような衝撃によって俺たちを乗せたトラックごと、宙に放りだされることとなった。

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