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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第三章 リライズ決然編
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36 安居楽業

「クワトロ。とりあえず、今欲しいものリストだ」



 翌朝、城の前でクワトロに出会い、リストを確認してもらっている。

 とりあえずは食器、調理道具等々。

 うんうんと頷き、店に向かっていく。



 しばらくして戻ってきた彼の手は、注文した品を抱えていた。

 それらをテーブルへ雑に並べ、イスに座った。



「注文の品さ。それで足りているか、確かめてくれ」



 クワトロは葉巻をくわえて、空を見上げた。

 ……一通り、揃っているな。

 アイソトープ班を呼び、持って行ってもらった。

 これでオッケーか。



「ありがとうな、クワトロ。また、来てくれ」

「おい、待てよ。ほら」



 目の前に突き出されたのは。



「請求書……」

「そうだ。払ってくれなきゃ、困るんだわぁ」



 無料だと思ってた、って言い訳、通用するか試してみるか?

 いや、やめておこう。

 とりあえず、宥めないと。



「今月は無理だな。来月なら払えるから、それまで待ってくれないか?」

「……今後とも、ごひいきに。さ、出てけ。店、畳むから」



 明らかに不機嫌になったクワトロが、俺を追い出す。

 さっきまでいた店は箱に戻って、キャリーの背に付けてから自分も乗っていた。



「旦那ぁ! 来月だ、来月。楽しみにしてるぜ。クワトロを刻め」



 手を振って、キャリーは飛び立つ。

 大きい翼で羽ばたき、やがて空高く飛行していった。

 来月までには、資金もあるはずだ。

 国づくりの一歩、また進むことができた。

 これからもよろしく頼む、クワトロ!







 暗い空間で、壁に等間隔で設置された松明が頼りの光となる、ここは……。

 ツトムのいるダンジョン。

 謎の洞窟である。

 なぜか隠すように土が覆ってあり、アイソトープが掘り起こしてくれたわけだが。

 何なんだ、この洞窟は。



「グラルルルゥ……」



 おっと。

 いつの間にか囲まれていた。

 体表が硬質な甲殻で覆われ、禍々しい爪を持った二足歩行の魔物。

 『見抜く』によると『ハーディアン』、レベル78。

 それが、6体。

 しかし、最初の俺ではない。

 『覇王』とやらの力、発揮してくれ助手。

 そう思った直後のことである。



「『ナンバー:0117』」



 天井から敵目がけて、ミサイルのようなものが連発される。

 ミサイルは、敵に接触すると爆発を引き起こした。

 ハーディアンは硬い甲殻で守るものの、ダメージを吸収しきれず、終わりを迎えた。

 一瞬で、高レベルの魔物が片付いたのだ。

 このスキルは。



「お久しぶりです、ミミゴン様」

「……ツトムか。元気そうで何よりだ」

「すみません、すぐに片付けます」



 ツトムは、死した魔物の血を歯で吸っていく。

 見る見るうちにしぼんでいき、血を失った。

 要領よく、次々と『吸血』して経験値を稼いでいく。



「なあ、ツトム。魔物の血って不味いんだろ?」

「ええ。ですが、今は『味覚変化』で美味しく頂けます。ですから、心配は不要です」



 スキルポイントで獲得したのか。

 これで、人を襲う確率は減ったと思うが。

 それはそうと俺がここに来た理由は、ツトムに呼ばれたからだ。

 何か発見したみたいだが。



「ツトム。『念話』で言ってた物って何だ?」

「僕に、ついてきてください。お見せしますよ」



 ツトムの後をついていく。

 まるで迷路のように道が分かれていて、かなり複雑に入り乱れている洞窟内だが、ツトムは迷うことなく向かっている。

 それにしても、最初ツトムに会った時とは大違いだな。

 こいつ、敬語で喋るような格好には見えないのに。

 何と言うか、違和感がある。

 スーツの浴びた血は、いつの間にか消えていた。

 顔も綺麗に洗っているのか。

 髭も剃っているみたいだ。

 小さい角3本も綺麗で、ツヤがある。



「先ずは、こちらに」

「ここ……か?」



 正面の木で出来た扉を開け、中に入っていく。

 俺も続いて進入する。



「ここが、僕の基地です」



 ランタンの光が全体を照らし、空間をハッキリ確認できる。

 一応『暗視』の目だが、光があれば、よりハッキリと見ることができる。

 ドローンの回転翼を回して飛び、辺りを見回した。

 広い……とは言えないが、人ひとりが住むには十分すぎるスペースだ。

 ツトムが、木の机から何かを手に取る。

 振り返って、俺に見せてくれた。



「ツトム……これは?」

「詳しくは分かりませんが、恐らく天然の魔石。高純度な物かと」



 これが魔石か。

 赤色に輝く石もあれば、黄色にも青色にも輝く石がある。



「この3つだけか?」

「はい、ここの洞窟で採掘できたんですよ」



 魔石には魔力が込められていると、オルフォードが言っていたな。

 ツトムが高純度と言ったから、含まれている魔力の量が多いのだろう。

 『魔力感知』が強く反応してますー、と助手が言うので間違いない。

 これが、ここに……。

 もしかしたら、儲かる話になるかもしれない。

 これは、詳細を知っておかないと。



「よし、これが取れる場所まで連れて行ってくれ」

「はい、ミミゴン様」







 眩しいほどに輝いてる!

 壁一面、魔石なのか!

 ツトムに連れてこられた場所には、大量の魔石の塊が壁いっぱいに埋まっていた。

 火がなくとも、魔石が放つ光で幻想的な空間を演出していた。

 これが全部、金に変わるとしたら、どれくらいだ……。

 大金のイメージを抱きながら、助手に尋ねる。



〈そうですねー、オルフォードに解析してもらってはどうでしょー? 私には価値判断不可なのでー〉



 どうやら、助手の専門外らしい。

 持ち帰って、オルフォードに預けるか。



〈それよりもー、『危機感知』が反応していますー。更に奥のようですねー〉



 『危機感知』か。

 一応確認だが、俺は強い部類に入るよな。

 だって、レベル100だし。

 『覇王』のスキルとか、『絶対君主』とか謎のスキルを扱えるんだ。

 そこらへんの魔物より、遥かに強いはずだが。

 レベル100以上ってことか。



「ツトム、奥に何かいるみたいだが」

「ええ、いますよ。強者が」

「俺が倒そうか?」



 慌てて、首と手を振る。



「それは僕の課題です! ここのダンジョンに関しては、僕に任せてください!」



 おい、どうしたんだ。

 強者に対する反応がおかしい。

 ……一目見たいな。



「分かっている、ツトム。だが、俺に一度会わせてくれないか」

「はい、それなら」



 俺は再び、ツトムの背中を追いかけた。







 魔石の壁が続く先には、広い空間が現れた。

 ドーム状になった空間にも壁、天井、あらゆるところに魔石が埋まっていた。

 まるで、プラネタリウムだ。

 こんなにも美しい洞窟があったとは。

 魔石が生み出す光景に見惚れていると、中央に誰かが座っているのが見えた。

 あれだ、ツトムの言う強者とは。

 証拠に『危機感知』が、そこから強く反応している。

 竜人か?

 エルドラのように、頭から二本の角を生やしている。

 が、エルドラよりかは遥かに小さいし、若い。

 何より人の姿に近いのである。

 その者が口を開け、言葉を発した。



「ツトムと……ミミゴンかな」

「そうです。僕らの王、ミミゴン様です」



 ツトムが前に出て、竜人に近づく。



「さすがは、王と呼ばれるだけの力を感じるな」

「それは、どうも。あなたは誰だ」



 あぐらを掻いて目を閉じ、瞑想している体勢だ。

 ほのかに感じる……落ち着いた雰囲気は、この男中心に発生しているということ。

 殺気というのを感じない。

 感じないというより、感じさせないということかもしれないが。

 まあ、話し合えることが出来る相手のようだ。



「名は、グラウンディングな。竜人だが、進化した龍人だな」



 その辺の竜人じゃないということか。



「グラウンディング。ここは何だ。ここで何をしている」

「ここは【トレーニング・ルーム】な。強者が修行する場所な。世界各地に繋がっているから、移動にも便利な。だけども、最強クラスの魔物がウロウロしているから、気を付けることな」



 トレーニングルーム?

 修行場所ってことか。

 強者専用トレーニングルームと考えていいか。

 世界各地に繋がっているということは、かなり広い。

 地下が、こうなっていたとはな。

 グラウンディングは顎をさする。



「ここで『領域管理者』として、いるわけだな。ここに来た者への案内だな。ま、滅多に来ないがな」

「領域管理者……暇じゃないか?」

「暇などないんだな。世を感じているんだな。例えばだな、味を感じたり、景色を感じたり、音を感じたり、これが面白いんだな。引きこもりながら、世界の料理、風景、音楽を感じられるとかな」

「引きこもりを極めし者、ってことか」



 プロ引きこもりのグラウンディングが、頷いて肯定する。



「他にはな、こいつと遊んだりな。暇がないということだな」

「僕は遊んでいるのではありません! いつか絶対、倒しますから!」

「クフフー、楽しみだな」



 ツトムとこいつは戦っているのか。

 ツトムの課題とは、グラウンディングを倒すこと。

 まあ、修行になるし、暇もないだろう。

 ここでは、自由にしておくか。



「グラウンディング、ツトムを頼む」

「ミミゴン、任せておきな。ツトムを、いずれは『領域管理者』にしてやるからな」



 いや、領域管理者は不要だ。

 世界を救う力を身に着けてほしいんだが。

 やがて、吸血鬼として恐れられるのではなく、勇者として頼られる人物になってくれ。

 ツトムの強さを確認し、魔石も手に入り、満足な俺はダンジョンを出た。

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