表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第二章 グレアリング騒乱編
36/256

34 グレアリング王国:画竜点睛

「……ゴン様! ミミゴン様! ミミゴン様!」



 視界に光の道が切り開かれていく。

 ……ここは。

 クラヴィス、ラヴファースト、アイソトープ、オルフォード、レラ、ニコシア……。

 俺の部屋か。

 ベッドなんか置いてあったっけ……まあ、いいか。



「おはよう……いや、こんにちは、か」

「違いますよ、まだ夜は明けていません」



 ところどころ傷を負っているクラヴィスが、まだ蛇足を倒した夜だと言う。

 意識の無くなった俺を、ラヴファーストが受け止め、現在に至ると補足してくれた。

 まだ、そんなにしか経ってないのか。

 俺は機械の宝箱に戻っている。

 進化がどうのこうの言っていたが、あれは……いつでも可能なのか。

 が……頭が痛い。

 意識が水面の波のように揺れている。



 それよりもだ、リーブ王に倒したことを報告しないと。

 エルドラ……グレアリングは、どうなっている?

 『念話』で、エルドラに尋ねる。



(ミミゴン、目覚めたか! 魔物は解決屋と衛兵に全て討伐され、残るは会場にいる敵三人組だけだ)



 そうか、それは良かった。

 俺も『テレポート』で会場に向かおう。

 全員と目を合わせた後、スキルを叫んだ。



「『テレポート』!」

「は!? ちょっと、ミミゴン様!」



 クラヴィスの驚く声が聞こえたのを境に、光に包まれた。

 助手、俺は十分回復しているだろう?



〈はいー。体内、脳内、異常なしですー! まあ、ちょっと戦うのは無理ですがー〉







 会場内を想像し、瞬間移動に成功する。

 リーブ王はボロボロ。

 トウハ、現在竜人ラバートと交戦中。

 互角か……お互い、苦しそうな呼吸で睨みあっている。

 ラバートは長剣を持って。

 トウハは戦斧を持って。

 女王のプレンリは離れた場所から、リーブ王を心配そうに見つめている。

 ……ん、アルテックもいたのか。

 王子のトリウムと戦っていたようだが、まあアルテックの方が有利だ。

 グレアリング最強の剣士は噂通りか。

 仮面の女は……頭を抱えて足に根が生えたように、その場で立ち尽くしている。

 その上、何やら独話しているみたいだ。



「どうしてどうしてどうして、そんなはずないそんなはずないそんなはずない……そんなはずなーい!」



 急に大声を出して、今この場にいる者達、全員を振り向かせる。

 声量を抑えてくれ。

 ていうか、出ていってくれ。

 そう願いながら、中央に歩き進めた。

 ラバートがトウハを警戒しつつも、マナディに尋ねる。



「マナディ、どうかしたのか?」

「……蛇足がやられた」

「なんだと!」



 トリウムが衝撃を受けている。

 ここで、俺が名乗りを上げた。



「やあやあ、大変みた」

「――あの魔神獣が、やられるはずがない! あれを研究しているマナディなら、よく理解できるだろ!」

「ええ……けど、蛇足と魂の繋がりが、途絶えた」



 会話の途中に口を挟むんじゃない、出来損ないの王子。

 誰も、俺の声が届いていないみたいだ。

 胸の内が燃え滾っているような嫌な感情。

 腹が立つというよりも、話を先に進めたい気持ちだ。

 大声で叫んでやる。



「一体、どこの機械が、ぶっ殺したんだろうなー!」

「ミミゴ……ン?」

「ミミゴン様! あの化け物を倒せたんだな!」



 トウハだけ、俺をミミゴンだと分かったみたいだ。

 そういえば、リーブ王とアルテックは知らないんだったな、機械の俺を。

 法則解放党とかいう連中は驚きを隠せないほどに顔が歪み、鋭く睨みつけてきた。



「残念だったな。頼りになる最強の味方がいなくなった今、それでも挑もうと意地を張り続けるか? 俺はまだ余裕があるぞ」



 もちろん、ブラフでしかないが十分効果があったようで。



「――くッ! 退くぞ!」



 ラバートが『テレポート』を唱えようとしている。

 トリウムが、父に向かって吐き捨てるように宣言する。



「次、会う時には全て終わる。いくら対策しようと無駄だ。分かったな、グレアリング・リーブ。もう、俺の父ではない」



 三人は光って、ここから去っていった。

 システムを書き換えるとかいう集団は脅威になるのか。

 魔神獣といっても『蛇足』だけではないはずだ。

 それが塊になって襲ってきたら、いくら俺でも対処できない。

 もうあんな連中、関わんのはごめんだな。

 さっさとエルドラ解放して、平和な国つくって、異世界から脱出するか。







 プレンリ女王は、リーブ王の胸に顔を埋めて泣いていた。

 トウハは駆け寄って、隣に立つ。



「ミミゴン様、そろそろ帰ろうぜ」

「その前に、だ」



 これを言っておかないと無駄働きになる。



「リーブ王! 頼みがある」

「王に向かって……」



 アルテックの言葉を、王は手で制する。



「ミミゴン……なのか」

「これが、本来の姿だ」

「ロボット……いや、深くは聞かないでおこう。金だな」



 さすがだ、話が速い。

 リーブ王は割られた食器が散乱する場に座り込んで、ため息をつく。

 息を整え、静かに金額を聞いてきた。



「望みの額は」

「巨富の国からの支援金今月分だけ、エンタープライズにまわしてほしい」

「グレアリングがどういう状態か知っていて、言ってるのか!」



 アルテックが口を挟んで、分かり切ったことを言う。

 そんなことは知っている。

 だけど、報酬はこれだ。

 エンタープライズには、ほぼ金がない。

 と言うより、よく金を一銭も使わないでやれてるな、と思っている。

 アイソトープが凄すぎて、必要なかったと言うべきか。

 だいたい、大量の報酬金をどうするのか。

 給料だ。

 懸命に働く仕事人に、給料を払わないといけない。

 だから、大金が必要なのだ。



 リーブ王が、発話する。



「いいだろう。今月の支援金すべて、そちらに渡そう」

「リーブ! 民を導く正しき王だろう! 現状を理解できていないのか!」

「アルテック! 彼らは恩人なのだ。国が無くなるのと、治る傷を負うのと、どっちがよい?」

「リーブ……なかなか、治らない傷だろうがな。……それでも、俺の信頼する王の決断だ。間違いないはずだ」



 アルテックは信じ込ませるように呟いた。

 ようやく、話がまとまったみたいだな。

 辛いだろうが、我慢してほしい。

 さあ、これで帰宅できるな。



「リーブ王よ。立派な苦痛を伴う決断、感謝する」

「また、いつか遊びに行かせてもらおう。それに、エンタープライズの宣伝もしておこう。素晴らしい国だと」

「感謝する、リーブ王! では! 『テレポート』!」



 こうして、大混乱を起こした王国グレアリングの悲劇に幕が下りた。







「お帰りなさいませ、ミミゴン様!」

「ああ、ただいま」



 メイド達が、ただいまの挨拶をする。

 自分の部屋へ瞬間移動して、すぐの挨拶は気持ちがいい。

 ああー帰ってきたんだな、という安心感が湧く。

 玉座に深く座った。

 傍らに立っていたアイソトープに命令する。



「アイソトープ。一人きりにさせてくれ。食事はいい。今日は、ゆっくり休みたいんだ」

「かしこまりました」



 アイソトープが班員を連れて、部屋から出ていく。

 静かな空間を味わい続ける。

 音がない。

 光を散乱させ美しく照らす華美なシャンデリアが輝き、空間全体を明るくしている。







 ……助手、進化の時間だ。



〈お任せをー! 最強にして差し上げましょー!〉



 俺は疲れを癒すため、眠りにつく。

 睡眠中に、助手に改造してもらおう。

 何者が相手だろうと、無双する存在に。

 守らなくてはならないのだ、王様は国民を。

 グレアリングのような悲劇を起こさぬよう、力を求めた。

 後は任せたぜ、最強の『助手』さん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ