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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第二章 グレアリング騒乱編
32/256

30 グレアリング王国:来訪

「……お前が見たものか」

「はい、これがそうです」



 ミネラルの偵察報告に驚く。

 エンタープライズ、ミミゴン……。

 忍者の目を使い……重ねて、ならず者連中の力を借り、本気で潰そうと計画していたが。

 私は難しい顔をしているだろう。

 暴力で勝てない、と言われているようなものなのだから。

 ミネラルには帰らせ、コカとアルテックを呼ぶ。







「コカ、アルテック。来たか」



 二人揃って、私に凛々しい顔を見せる。

 奴らの所へ赴く日。

 あの約束から三日後の今日、エンタープライズへ足を運ぶ。

 土地の確認、国家の承認。

 それだけではない、力も確かねめば。

 我々の脅威となりうる敵を上手く懐柔する。

 敵として認識するのではなく、友達になろうと誘う。

 そうすれば、戦争も。

 神よ、どうか我らに味方を。

 見捨てられた土地に一瞬で転移できる転移石を使用し、三人で移動した。







「ようこそ、いらっしゃった! 我が城、エンタープライズへ!」



 この前の、金髪の男が迎えた。

 笑った表情で、手を異様な城へ向ける。

 メイドの列が左右均等に、入り口へ誘導するように並んでいる。

 ふと横を見ると、アルテックがミミゴンに鼻を近づけ、臭いを嗅いでいた。



「この臭い……一度会ったことがあるか」

「し、知らないなー」



 腰に差した剣の柄頭をなでるように触りながら、話す。



「ここ最近、嗅いだ臭いだ。俺は嗅覚が他の人間より、優れていてな。この独特の臭いは……」

「さあ、グレアリング王! こちらへどうぞ!」



 ミミゴンが逃げるように、歩いていく。

 アルテックは歴戦の剣士だ。

 何か、奴から嗅ぎ取ったのか。

 コカは辺りを見渡しながら、警戒しながら歩く。

 城の内部へと向かっているが、ここはまだ敵地だ。



 ミネラルの情報通り、広いエントランスホールで煌びやか。

 明らかに私の城が負けている。

 美を追求した、あらゆる物。

 誰がこれほどの物を造れるというのだ。

 謁見の間に案内され、メイドがお茶を用意する。

 コカが、お茶をこぼして、ちょっかいを出すも軽く避けられた。

 「失礼しました」と立ち去っていくメイドに、コカは怒りの目を向ける。

 アイソトープと呼ばれる――ミネラルに言わせると化け物だそうだ――者ではなく、さっきのは普通のメイド。

 それが、コカの素早い一撃を華麗に避けたのだ。

 コカは再び出されたお茶を、怒りと一緒に飲み込むようにグイッとあおる。



 ミミゴンが一口飲んでから、本題を切り出す。



「さてと、慣れてきたでしょう。本題に移りたい」

「土地の話なら、喜んでさしあげますとも」

「貸しではなく?」



 わずかに驚いて、疑ってくる。



「もちろんだ。あなた達なら、忘れられたこの場所を有効活用できるでしょうという期待を込めてだが」

「ええ、国を……エンタープライズを承認してくださればの話ですが」



 ミミゴンの目が光る。

 言葉が武器である戦場へと雰囲気が変わる。

 コカが手を上げ、先制攻撃だ。



「率直に申し上げて、我々にどのようなメリットがある?」

「去年、大地震が起きたんですよね。破壊された村、街の復興が進んでいないと聞いていますが」

「ああ、それがどうした」

「復興の目途が立たないのは、人手不足から。そして、金銭。我々の兵士が被災地に赴き、手を貸しましょう。自費で食料も配給します」



 いかが、と言いたげな微笑みで様子を窺ってくる。

 かなりありがたい申し出だ。

 難民問題もある。

 救助を待つ者が、まだたくさんいる。

 軍事力の視点で、コカは尋ねた。



「人間と竜人の争い。存じているだろうが……」

「我が兵士を戦争屋だと勘違いしだしたか? 彼らは、殺しあうための力を持っているのではない。自衛のための力を身につけさせている。あなた達が起こした火を消火するのは、あなた達でやってくれ」

「チッ……」



 コカはそっぽ向いて、握りこぶしをつくる。

 彼としては、早く終わらせたいのだろう。

 無駄な争いを。

 だが、負けるわけにはいかないのだ。

 この戦いは爺の代より続く、互いの誇りをかけた戦いなのだ。



 ミミゴンが、更に提示する。



「リライズからの建設業。つまり、復興にも多額の金が動いている。それを我らにお任せできないだろうか。これ、家の修理をするドワーフなんですけどね」



 手に持っている大量の写真をばら撒き、見せつけてくる。

 写真には酒を飲んでいたり、煙草を吸っていたりとするドワーフが写っていた。



「王はあまり関心がないでしょうが、このドワーフ達は復興作業せず、毎日あなた達のお金でサボっていますよ。復興を信じて払うお金が、無駄になっているというわけです」

「まさか、こんなことが……」



 あのドワーフが、仕事に忠実な種族が。

 戦争ばかりに目が向いていたが、こっちでも問題か。

 だが。



「彼らの技術力は素晴らしい。だが、この者達は仕事を評価されず、不貞腐れているのだろう。私が声をかければ……」

「問題ないと? それはどうだろうか。見られていないと、仕事をしない連中ですよ。まだ、信用すると?」

「それは、そちらにも言えるだろう。それに、彼らの技術なくして復興など」



 チッチッと指を振って否定される。



「ドワーフという種族は体力がない。それなのに、こうして力仕事しているから不貞腐れやすい。いかに進んだ技術だろうが、暑いこの場所での長時間作業は体に大きく影響します。もう、お分かりですね」



 この男に知恵を与えているのは誰だ。

 交渉においても、手も足も出させない。

 我々の痛いところを上手く突いて、治療方法を目の前に差し出す。



「将来的には優秀なドワーフも揃え、リライズに対抗しうる技術力を持てるかと。技術に関しても時間があれば解決します。これらが、エンタープライズを承認することで得られる利益です」

「……我々の助けに、積極的に答えてくれるな?」



 不敵な笑みを浮かべて。



「はい、もちろん。それが協力、ですから」



 王として、潔く決断すべきか。

 アルテックとコカに合図を送る。

 私は手を差し出し。



「認めよう。グレアリングの承認国として」



 相手は差し出した手を握り。



「よろしくお願いします、グレアリング・リーブ王」







 コカは不満げな顔を、アルテックは俺必要だったかという顔、私は内心ヒヤヒヤしたものの無事終えることができ、安心している。

 さきほど飲んだお茶だという、袋に詰まった茶葉――「おつかれちゃば」とかいう味も改良した特産品――をもらい、転移石で帰ろうとするが、あることを思いつく。



「ミミゴン。明日、城でパーティーがある。良かったらそこで、お互い語り合おう。どうかな?」

「ええ、喜んで」

「グレアリングの転移石だ。これで来るといい」



 転移石を放り投げて、彼に受け取らせた。

 こうして、交渉を終える。

 国民にも公表しないとな。

 重圧から解放され、グレアリングへと帰るのだった。

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