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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第六章 デザイア終戦編
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218 神からの招待

 エンタープライズ城前には、戦闘機トラオム・フリューゲルがとまっていた。

 メイドや兵士が、アルティアたちの見送りに来ている。

 アルティアは一人ひとりに手を振り返していた。



「ミミゴン!」



 戦闘機の操縦士ペンティスが、こちらに駆け寄ってきた。

 近くに寄ってから、不意に「あっ」と呟いて、申し訳無さそうに背を丸める。



「……ミミゴン様、だよな」

「様なんて付けるな、ペンティス。ばあさんと、お前の夢を応援する……相棒、だろ? 今度、余裕ができたら、船に乗せてくれ。空中幻園を探しに行こうぜ」

「……変なやつだぜ、ミミゴン。だが……頼もしい。空中幻園を探すときが来たら、ミミゴン……頼りにしてるぜ! じゃあな!」

「ああ!」



 拳を打ち付け合い、約束を結ぶ。

 ニカッと笑うペンティスはトラオムに乗り込み、エンジンをかけた。

 エンジン音が響き渡り、トラオムを中心に風が舞い上がる。

 アルティアとメリディスは窓から、俺たちを眺めていた。

 トラオムフリューゲルはゆっくりと浮き上がり、脚部を折り畳んで、空高く昇っていく。

 そして、魔力を充填させた推進装置がドッと火を吹いて、発進した。

 一瞬で、空の彼方へと消えていったのだった。



 アルティアが最後に伝えた言葉を思い出す。

 アヴィリオス教皇からの伝言。



「神殿に来い、か」

(ミミゴン、やはり行くのか?)



 エルドラからの問いかけに頷く。

 俺は踵を返して、エンタープライズ城に戻った。

 出かける支度をする。

 といっても、神都ユニヴェルスに行くだけだ。

 メイドに申し伝えるぐらいしかしない。

 民は王様が急にいなくなっても、心配しなくなってきた。

 少しだけだが、のびのびと動ける雰囲気になったようで嬉しくなる。



(アヴィリオスを信頼しているようだが、奴がミミゴンを消しにくる可能性も考えられる。いざというときは、攻撃をする準備を整えておけ)

「俺を消す理由はないはずだ」

(我は神に逆らった行為をしている。だから、我は先代マーテラルに捕らえられた。そんな我に仕えるミミゴンにも、罰を与えるつもりかもしれんぞ)



 アヴィリオスが何を考えているか、その手の内が分からない。

 といっても、奴は神として法則解放党に罰を下そうとしている。

 その点では、利害が一致している。

 だから、俺に攻撃を仕掛ける可能性は低いと考えた。

 だが、エルドラに言われたことも考慮しなければならない。

 別離の大戦を引き起こし、平和な世界の秩序を乱したエルドラ。

 幽閉したエルドラを解放しようと企む俺を、先代の意思を継いだアヴィリオスなら止めようとすることも十分に考えられる。



「だが、アヴィリオスはこんなことを言っていた。俺に会うために、千年待っていたと。あいつが何者か分からないが、俺を消すためだけにわざわざ千年も待つとは考えられない。とりあえず、話を聞く。もし、あいつが俺を消しにきたなら……全力で抗う。神様だろうが倒して、生き残ってやるさ」







 神都ユニヴェルスは前に訪れたときと同様、穏やかな様子だった。

 まだ、アルティアたちはエンタープライズのことを難民に伝えていないのだろう。

 神殿前では、神官や衛兵らしき者たちが徘徊している。

 人間の『ものまね』をしている俺に誰かが声をかけるかと思ったが、誰も咎めようとしなかった。

 神殿近くに人間がいることを気にしてはいないようだ。

 そういうわけで、あっさりと門をくぐって神殿に入ることができた。

 白を基調とした神聖な空間は静まり返っており、響くのは自分の足音のみ。

 不思議なことに、内部に人の姿が見当たらない。

 アヴィリオスの居場所を誰かに尋ねたかったが、人がいないようではどうしようもない。

 人を招待しておいて、この扱いかよ。

 不満が口に出そうになった瞬間。



「こっちです、ミミゴン」

「うわっ!?」



 背後から、アヴィリオスの声がして咄嗟に振り向く。

 アヴィリオスは肩を震わせながら笑い、細い通路へと入っていった。



「急に驚かせるなよ」

「たまたま、ミミゴンが前にいたのでね。それはともかく、神殿まで来てもらって申し訳ない」



 声音は謝っているように聞こえるが、布の向こうの顔はほくそ笑んでいるかもしれない。

 不気味な奴の背中を追うように、俺は付いていく。

 付いていった先には、ここには似つかわしくない木の扉があった。

 焦げ茶色の扉を押しのけるように開け、アヴィリオスは入っていく。

 俺も扉をくぐった後、中を見渡す。

 大広間の部屋に通されたようだった。

 なんというか普通の部屋だ。

 何か家具が置いてあるわけではないので、ひどく殺風景である。

 何より、真っ白なのが殺風景を強調させた。

 アヴィリオスが手を振ると、背後の扉がひとりでに閉じる。



「この部屋には、ちょっとした工夫されていまして。感知、干渉するスキルを防ぐことができるのです。君を見張るエルドラの『千里眼』は途切れたでしょう。『念話』もね」

〈その者の言う通り、『千里眼』で中を覗くことができなくなりましたー。おかげで、エルドラが物凄く心配していますよー〉



 エルドラが暴れるように心配している様子が目に浮かぶ。

 助手から大丈夫だと伝えておいてくれ。



「で、アヴィリオス。なんで、ここに連れてきたんだ? エルドラに聞かれてはマズいことなのか?」

「いえ、エルドラは関係ありませんよ。それより、法則解放党に注意しているのですよ。法則解放党は君を脅威として認識しているはず。ミミゴンの動向を窺っていてもおかしくはない。あるいは彼女らが既に、エンタープライズに対して手を打っているかもしれない」

「まさか、スパイが潜り込んでいるとか」

「そんな可愛いものならいいんですけどね」



 ため息をついて、アヴィリオスは杖を呼び出した。

 握りしめた杖の先を、俺に突きつける。



「何をする気だ」

「『明晰夢』」



 アヴィリオスがスキルを唱えた瞬間、視界の光景が流れ落ちた。

 自分は意識を失い、膝から崩れ落ちたのだ。

 抵抗することを考える間もなく、俺は倒れたのだった。



「さて、どんな夢が見られるか……楽しみですね」

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