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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第六章 デザイア終戦編
244/256

209 魔神獣:毒空木―4

 巨大な樹木の幹から生える無数の触手。

 色合いも全体的に紫がかっており、毒を持っていますと言わんばかりである。

 ムチのようにしなる触手は、周りに浮遊している七生報国たちに向かって振り払われた。

 雷が光る一閃の如き、速さで飛んでくる触手を彼らは容易く躱し、反撃に転じる。

 ラヴファーストは『召喚刀』で呼び出した二本の刀を両手で掴み、躱した触手を断ち切った。

 戦場に似合わぬメイド姿のアイソトープは触手を腕で受け流し、手刀で切り落とす。

 切り落とされた触手は地上へと真っ逆さまに落下していった。

 一段落ついたのも束の間、次の触手がアイソトープへと伸びる。

 しかも、三本がほぼ同じ速度で飛来する。

 だが、アイソトープは余裕を持って、攻撃を避け、両手を打ちつけた。



「『燎原ノ火』」



 直後、爆発するように触手は炎上し、炎の勢いは本体へと走っていった。

 触手は燃焼しながら垂れていき、途中で折れて落下していく。

 激しい炎は毒空木の体に到達したが表面を焦がし、一部を欠けさせただけだった。

 アイソトープは空中で体勢を整え直し、右手に力を集中し始める。

 再び、毒空木はアイソトープを狙って触手を飛ばす。

 今度は、十本の触手が槍のように先を尖らせて襲った。

 集中し始めたばかりで、咄嗟に避けることができそうになかった。

 とここで、アイソトープの前にオルフォードが出る。



「『制圧波』!」



 毛むくじゃらの左手を突き出した瞬間、目前に迫る触手が一斉に静止した。

 止まった隙を突いて、ラヴファーストが触手がまとまっている部分に刀を振り下ろす。



「『裁きの大太刀』!」



 十本の触手がまとめて、切断された。

 落ちる触手の合間を縫って、オルフォードが飛行し、杖を構える。

 凄まじい速度で毒空木の前に立つと、杖を表皮に叩きつけた。



「『完全制圧司令塔』!」



 相手を完全に操る究極スキルを発動したのだ。

 しかし、オルフォードは悔しそうに舌打ちして、上から降ってきた触手を避けて退く。



「ワシの力も衰えたものだ。ちょっとぐらいは操ってやろうと思ったが、まさか通用せぬとはな」

「オルフォード、根の成長を妨げることくらいはできるでしょう。私が、これ以上成長できないよう、地下に障壁を張ります」



 アイソトープの提案に渋々頷き、丘のように表出している根へと飛び立った。



「ラヴファーストは私の援護を」

「分かった」



 アイソトープが重力に従って、下に落ちる。

 その上をラヴファーストが位置し、次々に襲ってくる触手を斬っていった。

 両手の二刀だけでは絶え間なく襲ってくる触手に太刀打ちできなくなったため、更に『召喚刀』を二本、増やす。

 

 

「『日雷ひがみなり刀』『晨星落落しんせいらくらく刀』……思う存分、力を振るうがいい」



 落ち行くラヴファーストたちを飲み込もうとする触手の群。

 完全に飲み込まれようとした途端、真下から二本の煌めく刀が触手に突っ込んだ。

 無数の光が瞬く。

 数秒後、密集した触手はバラバラに切り裂かれ、木っ端微塵となって崩れ去った。



『光の速度をお見せしよう』

『一つ一つ確実に消し去ってやる』

「降り注ぐ触手を斬っていけ」



 黄色の刀と赤黒い刀が空へと駆けていき、触手を切り落としていく。

 そろそろ地上間近となり、アイソトープは右手を地面に向けて構えた。



「『一帯防壁』」



 輝く右手を地面に打つと、白い輪が円状に広がっていった。

 遠くまで広がったかと思えば、途端に動きが止まる。



「根の先が、あそこまで達していましたか。ですが、それ以上、伸ばすことはできません」



 アイソトープが地面から膝を離して、毒空木を睨みつける。

 直後に、小さな点々が影となって付近に現れる。

 上から触手の雨が降り注ごうとしていた。

 アイソトープは触手の群れに向かって、左手を差し出す。



「『鈍重空間』」



 アイソトープが解き放ったエネルギーは触手の動きを鈍らせた。

 スローモーションの触手攻撃は、もはや誰でも避けられるほど遅くなっていた。

 『飛翔刀』で空を翔けたラヴファーストとオルフォードが同時に武器を振るう。



「『刀光剣影』」

「『支配毒』!」



 二刀が黒い軌跡を描いて、触手の集まりを一刀両断する。

 その後に見えた触手の内部に杖を叩きつけ、『支配毒』を発動させた。



「ふむ、触手ぐらいは操れたか。では、この触手を思い切り、毒空木にぶつけ返してやろうではないか」



 オルフォードが杖を掲げると、操られた触手は方向を変えられ、毒空木に放たれた。

 本体の幹部分に触手の拳を打ちつけられ、更にはラヴファーストが斬撃を繰り出す。

 紫の血しぶきが飛び散り、毒空木の天辺が揺れ動いた。

 そして、俺とミリミリが傷口に向かって、手のひらを突き出す。

 手のひらから白い魔法陣が飛び出て、大きく展開する。

 充填された魔力が次の瞬間、一気に解放された。



「「『エクストリマジック』!」」



 二人が放った魔力の渦はラヴファーストたちのつくった傷口を貫き、毒空木に大きな空洞を完成させた。

 空洞から紫色の液体が染み出し、やがて滝のようになって噴出する。

 だが、これで『エクストリマジック』が終わったわけではない。

 俺たちの魔力は毒空木の内部に浸透し、しばらくして白い爆発を起こした。

 強風が吹き荒れ、ミリミリの髪が後ろになびく。

 霧のような爆煙が毒空木の切り株から立ち上り、シューと音がしていた。



「なんとか、大ダメージを与えたわけだが……」



 毒空木の上半身は塵と化し、下半身に当たる切り株部分だけが残った。

 『生命感知』を発動させると、毒空木から反応が返ってくる。

 ようやく、瀕死の状態に持ち込んだ。

 『エクストリマジック』を二人分、直撃させたのだ。

 これで死ななかったことに安堵したが、これでも死なない事実にも驚かされた。

 魔神獣と呼ばれるものが、そう簡単にくたばるわけはないか。



「……ミミゴン、はやく」

「分かった。よし、行ける」



 体中の魔力を解き放った反動で息切れし、動きも重苦しくなっている。

 ミリミリに『ものまね』した体で、よろよろと前に進んでいく。

 爆発の霧が晴れていき、無残な断面を見せている切り株が見えてきた。

 針のように尖っている断面にたどり着き、紫の体液を避けて、右手で触れる。

 あとは助手、頼んだぞ!



〈お任せくださーい! さてと、まずは『データマイニング』ー!〉



 助手の声が脳内に響き渡った後、右手から何かが放出された感覚に陥る。

 すると自分の中身が半分空っぽになったような空虚感に襲われ、少し体がふらついた。

 うぅ、倒れないように体勢を保ち続けないとな。







 助手が魔神獣に侵入して一分後。

 突如、毒空木が振動し始めた。

 地上も大きく揺れているようだ。



「ミミゴン様!」



 背後からラヴファーストの叫び声が聞こえたと同時に、巨大な根っこが波のように押し寄せてきていた。

 地中に張り巡らされた根が一斉に持ち上がり、切り株の上に鎮座する俺を攻撃しにきている。

 四方で、地上に根という名の柱が立ち上がる。

 即座に、ラヴファーストが『召喚刀』全てを使って、振り下ろされる根っこを押さえとどめた。

 他の三本の根っこもオルフォード、アイソトープ、ミリミリが止めてくれた。

 なんとか押し返してくれないかと期待していたが、四人から余裕が感じられない。



「みんな!」

「私達のことは気になさらず」



 アイソトープは涼やかに答えたが魔力の壁を根に押し戻され、うめき声を漏らす。

 待っていろ、お前ら。

 すぐに終わらせる。

 七生報国に無理をさせたら、レベルを失って存在が消えちまう。

 そんなことにはさせない。

 だから助手、なるべく急ぐ方向で頼むぞ。

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