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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第六章 デザイア終戦編
243/256

208 魔神獣:毒空木―3

 トウハは胸に握り拳を当てて、勝ち誇ったように叫ぶ。

 なぜ、エンタープライズがタイミングよくここに来れたんだ。

 エルドラが呼んでくれたのか?



(我ではないぞ!)

「じゃあ、誰が……」

「ボクですよ、ミミゴン」



 不意に背後から答えが返ってきた。

 俺の手を置いて、前に出てきたのはアヴィリオス教皇だった。

 白いベールで顔を隠す教皇は毒空木を見つめて、足を止める。



「乃異喪子……人を魔物に変えた罰を、その身に与えなければね。ボクに託された世界のことわりに手を出した罪は、決して君の命だけで贖えるものではない。天罰を下さなくては」

「アヴィリオス?」



 話が続くたびに、口調は段々と重苦しくなっていった。

 俺が呼びかけると教皇はゆっくりと振り返り、笑みを含む声を漏らす。



「ふふっ、ミミゴン……気にしないでくれ。今は毒空木に集中しよう」



 首を回して、周囲を確かめる。



「デザイアに、グレアリング。加えて、エンタープライズがここに集結した。素晴らしい光景だ。地上は彼らに任せて、君たちは毒空木を倒してもらおう」

「そうは言っても、魔神獣だけあって攻撃が厄介だ」

「無数の触手とあらゆるものに作用する猛毒。それと毒空木は張り巡らせた根から栄養を吸収し、損傷を再生する能力も有している。攻防共に優秀というわけだ。対処方法は歴史に学ぶ、としようか」

「歴史? 過去に、毒空木が倒されているのか?」

「うん、そうだよ。ほとんどの魔神獣は転生者によって倒されている。毒空木も転生者によって倒されたよ」



 教皇はベールの下の顎をさすり、ゆっくりと前に出る。



「うーんと、そうだね……毒空木は案外、力業でなんとかなるよ」

「思ってた以上に軽いな、おい」

「魔神獣なんて、たいていそんな感じだよ。前に倒された魔神獣、蛇足も何体にも『分身』した君が殴打し続けただけじゃないか」

「確かに……そうだな」



 実際、その通りだったのでぐうの音も出なかった。

 教皇が言った通り、倒された魔神獣はほとんど力業でなんとかなったのだろう。

 魔神獣は力業で倒された。

 毒空木は魔神獣である。

 毒空木に力業は通用する、という三段論法じみた手法で結論が導かれた。

 とはいってもだ。



「俺とミリミリに、余力はあまり残されていない。果たして、今の俺たちで毒空木を倒せるかどうかは……」

「俺たちがいる、ミミゴン様」



 自信満々に発言し、存在感を強めたのはラヴファーストだった。

 両隣にアイソトープと、普段は表に出ないオルフォードが立っていた。



「ラヴファーストにアイソトープ、それにオルフォードも。珍しいな、オルフォードが来るなんて」

「ミミゴンに危機が迫っておると、この者が言いおったからな。それに、生意気な娘も復活しているというのでな。ワシが直接、出向いたというわけじゃ」

「ジジイは何百年経っても、ジジイというわけね。安心したわ」



 オルフォードとミリミリが互いをキリッと睨む。

 その間を割るようにして、俺が発言した。



「えーと、一つ伝えておきたいことがある。あの魔神獣は、グレアリング王の息子トリウムが変身したものだ。トリウムのやつとあまり関わりはないが、助けてやりたいんだ。魔神獣は殺さず、弱らせてほしい。あとは俺のスキルで、あいつを人間の姿に戻す」

「瀕死にすれば、よいということですね?」



 アイソトープの極めて冷静な確認に、俺は首肯する。



「ミミゴン様とミリミリのスキルであれば、毒空木に強力な一撃を加えることができるでしょう。ですので、機会が来るまでできる限り、力を温存しておいてください。私達が敵の注意を引きつけつつ、隙を作ります」



 細かくダメージを与えても、再生が追いついてしまうだろう。

 俺とミリミリの魔法であれば、即再生とはならないほどの大ダメージを与えられるはずだ。



「ああ、任せた。アイソトープ、オルフォード、ラヴファースト、ミリミリ……生きて、エンタープライズに帰ろう!」



 四人は快い返事をして、それぞれ飛び立っていく。

 俺も真上に浮遊し、毒空木を真正面に捉える。

 地上の様子は最初とは一変しており、エンタープライズが加勢したことで巻き返す勢いとなっていた。

 それもそのはず、エンタープライズの数は少なくとも、一人ひとり帝国軍以上の実力を有している。

 ラヴファーストの指導によって、並のことでは動揺せず、格上に対しても立ち向かっていく精神が養われた。

 その心強さといったらありはしない。

 トウハが宣言したように、エンタープライズが来たからには絶対に目的を達成してやる。



「それでは頼みましたよ、ミミゴン」



 下から教皇の声が聞こえてきた。



「教皇は、どうするんだ」

「ボクも微力ながら戦いますよ。地上は、ボクに任せてください」



 微笑みを含んだ声音で答えた。

 微力ながら、とはいうものの、かなりの強者のように感じる。

 この戦いが終わったら、教皇とはたくさんお喋りしないとな。

 毒空木が生み落とす魔物は、アヴィリオスたちに任せよう。

 俺たち――俺と七生報国が毒空木を相手取る。

 さぁ、いくか!

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