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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第六章 デザイア終戦編
238/256

203 法則解放党―1

 真ん中で立っている黒い衣装の女。

 彼女が法則解放党のボスだろう。

 彼女は掴んでいたトリウムを、こちらに放り投げる。

 遠くのゴミ箱を狙って、ゴミを投げるように。



「トリウム!」



 リーブ王はすぐさま、息子に駆け寄り、頭を逞しい腕で抱く。

 トリウムは重い瞼から覗く瞳で、父親の顔に視線を合わせようとする。

 垂れる腕をなんとか持ち上げて、父親に触れようとした。



「とうさん……にげて……」

「何を言っている。必ず帰るぞ、グレアリングにな」

「おれは、もう……うっ」



 突然、トリウムはもがき苦しみ始め、全身をバタバタと暴れさせた。

 リーブは必死に息子を抱きしめ、押さえようとするがあまりの力に耐えきれなかった。

 吐血し、眼球は緑色へと変色し始め、ただならぬ様子である。

 狼狽するリーブに、法則解放党の龍人が斬りかかった。

 ラバートと呼ばれていた古傷だらけの龍人だ。

 間髪入れず、アルテックが止めに入った。



「リーブ! 酷だが、トリウムに構う暇はない! 一旦、離れろ!」

「――『鋭剣:令月』」



 一瞬、後ろに下がったかと思えば、地面に長剣を這わせて一気に振り上げた。

 剣の津波ともいうべき攻撃は、アルテックを飲み込むように襲う。

 だが、さすがは歴戦の剣士だけあって、咄嗟に回避し、リーブを掴まえて距離を置いた。



「避けたか。『鋭剣:闊達』!」

「『雷光一閃剣』!」



 飛んできたラバートは同時に長剣を薙ぎ払う。

 『雷光一閃剣』でスピードを伴った一撃で『鋭剣:闊達』を止めた。

 しかし、勢いを完全に殺し切ることはできなかった。

 アルテックは弾かれたように体勢を崩す。

 隙を逃さず、ラバートは追撃する。

 間に、リーブ王が入り、『サンダーボルト』を放った。

 電撃はラバートの胸を直接、焼き尽くし、攻撃を中断させる。







 戦う彼らの横を誰かが駆け抜けてきた。

 屈んだ姿勢のまま走ってきたのは、魔人のマナディだ。

 白い仮面を着け、全体的にヒラヒラした衣装で戦場を駆ける姿は異質さを放っていた。

 アルフェッカが六星騎士長たちに呼びかける。



「ヒドゥリーを逃がすわけにはいかない。あの女を撃退しろ」

「はっ!」



 最初に攻撃を仕掛けたのは、ヴェニューサだ。

 大きな機械弓で撃った矢は光線のように発射された。

 マナディは少し止まって、矢が目前を過ぎたのを確認して再び走り出す。



「六星スキル『陰影』」



 既に彼女を取り囲むように丸い影が伸びており、獲物目掛けて一直線に飛びついた。

 これでマナディは拘束された、と思ったら、地面を蹴って空中に跳ねている。

 次は、白い槍が彼女に向かって撃ち出されていた。



「『緑生・雪月一番槍』!」

「『見切り』『受け流し』」



 マナディは心臓を突き刺そうとする槍を手で押さえ、『受け流し』で下に押し流した。

 体操選手のように体をねじりながら、更に上空へと跳ね、短剣を構える。

 逆手に握った短剣の切っ先を、アルフェッカに向ける。



「『フォルティッシモエッジ』!」

「『一刀十閃』!」



 マナディの前を、ウラヌスが邪魔し、『一刀十閃』を振るった。

 ウラヌスの刀が短剣にヒットし、斬撃が連続で押し寄せてくる。

 一回、二回と立て続けに短剣を攻撃するが、マナディは武器を落とすどころか両手で『一刀十閃』を止めた。



「『発勁』!」

「オレの『一刀十閃』を力ずくで止めやがった!」

「私たちの大切な仲間を返してもらいましょうか」

「させるか、『エグゼクションソード』」



 突風のように飛び出したアルフェッカは双剣を、マナディに振り下ろす。

 一瞬の出来事でも、マナディは焦ることなく『バリアウォール』を発動させ、防御した。

 双刃が障壁に刺さって止まる。



「防がれたか」

「あなたたちが束になっても、私に勝てるはずはないわ。だって、ノイモコ様の力を頂いているもの!」

「あの黒い人間の女か」



 マナディは挑発するように、障壁の向こうからアルフェッカに顔を近づける。



「法則解放党がやがて、世界をどん底に落とす。生きる資格のないあなたたちは黙って、世界が破滅するところを見ていなさい」

「そんなことが可能ならばな」



 アルフェッカは鼻先で笑うと、ヴェニューサの矢が『バリアウォール』を貫通し、マナディの右腕を貫いた。



「『アルテミスアロー:イラプション』! 今です、閣下」

「『イノセンスソード』」



 双剣を乱舞させ、マナディを果敢に攻める。

 射られた右腕を左手で押さえながら、短剣を器用に扱って弾き返していた。

 それでも、アルフェッカの踊りは激しさを増し、双刃を荒れ狂う暴風のようにぶつけていた。

 すぐに短剣は双剣に吹き飛ばされ、マナディは無防備になる。



「『バリアウォール』!」

「――『健弱』」



 『バリアウォール』で一息つけたかと思えば、なぜだか力が入らなくなっていく。

 アルフェッカが滑り込ませた『健弱』による効果だ。

 『バリアウォール』は当然、影響を受けて障壁の強度が落ちていく。

 幾度目かの攻撃が障壁を打ち破り、マナディを袈裟斬りにした。



「『回避術』!」

「『獅子吼・大地』!」



 バックステップで間合いをとったマナディだったが、視覚外からウラヌスが飛び込んできた。

 爆発的な威力を秘めた刀を掲げて。



「終わりだー!」

「――『アクチュアル・マリス』」



 どこからか憎悪を感じさせるような重い女声が聞こえたやいなや、ウラヌスを黒い爆発が襲った。

 爆炎すらも墨を塗った黒さで、煙がどす黒い。

 ウラヌスは爆発をまともに食らって、遠くへと消え去った。



「ウラヌス!」



 アルフェッカはウラヌスを目で追いながら叫んだ。

 側に、ウラヌスの刀が突き刺さった。



「ノイモコ様!」



 ウラヌスに爆発を食らわせたのは、法則解放党のボスだった。

 煙が風に流され、凶悪な女が全容を現す。



「申し訳ございません、ノイモコ様!」

「"絶望"の力をもらいながら敗北するなんて無様じゃない? そう思うでしょ、マナディ?」

「その通りです」

「次、死にかけたら、実験体になってもらうわ」



 マナディは俯き、一言も喋らなくなった。

 代わりに、俺らを眺めるのはボスだ。

 マナディは、あの女を乃異喪子と呼んでいた。

 間違いない。

 法則解放党、最高責任者であり、テル・レイラン、ラオメイディアの人生を大きく狂わせた元凶。

 奴が狂わせたのは、その二人だけじゃない。

 マギア村を滅亡させ、ラオのいた孤児院をめちゃくちゃにし。

 そして現在、グレアリング王国と新都リライズ、デザイア帝国に被害をもたらした。

 乃異喪子は、ここで討ち果たす。

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