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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第六章 デザイア終戦編
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181 反撃の時

「お帰り、アルティア。それに、メリディスにミミゴン。スイセイ……はいないみたいだね」

「教皇、すみません。スイセイ騎士長は、私たちを庇って」

「そうか。何はともあれ、君たちが無事でよかった」



 神殿内の広い室内で座りながら、話を交わす。

 白いテーブルを挟んで、俺はアヴィリオス教皇と向かい合った。



「で、俺はまんまとやられてしまったわけだが、本当に計画通りなのか?」

「ボクが確認したかったのは、アルフェッカの目的。彼女は、自身の作戦を誰にも伝えない」

「目的は、すぐわかるだろ。グレアリング王国と戦争して勝つことだ」

「それは結果です。ボクは、それに至るまでの過程が気になるのです。魔女という最強の力を手にしていながら、戦争を仕掛けないのは少し奇妙ですよね。その気になれば、一瞬で滅ぼせます」



 ニヤッと笑う息が漏れる。

 あなたが一番、分かりますよね、と問いかけているのだ。

 ミリミリの実力は、俺が良く知っている。

 助手に言わせれば、俺が『ものまね』するエルドラは弱っているようだ。

 ラヴファーストやアイソトープ、オルフォード、ゼゼヒヒは特殊な魂で生きている。

 普通と違うのは、スキルの使用に自身のレベルを消費するというものだ。

 つまり戦えば戦うほど、レベルも下がり弱くなっていく。

 だが、ミリミリは近年まで封印されていた。

 そのため、エルドラの側近『七生報国』の中では、ダントツで最強なわけだ。



「ボクはアルフェッカの行動を知り、確信しました。巨大魔導兵器モルスケルタの起動。それが、彼女の目的です」

「巨大魔導兵器モルスケルタ? なんだそれ」

「千年前、この世界を支配した化け物を討伐するための秘密兵器です。飛行戦艦の行き先で理解しました。帝都の裏側にある洞窟の奥底……そこに、モルスケルタが眠っているのです」



 この世界を支配した化け物って。



(うむ、我のことだな)



 エルドラのせいで、変な兵器が造られたじゃねぇか。

 しかも、エルドラを討伐するための秘密兵器だぞ。

 魔女以上に厄介な代物かもしれない。



 アルティアが「あっ」と小さく叫び、アルフェッカとのやり取りを話し始めた。



「お姉様が突然、私の血を抜いてきたのです。古代兵器へと至る道は、ドラコーニブス家に生まれた兄弟姉妹の血でしか開くことができない、と言っていました」

「なるほど、その仕掛けも彼女は知っていたのですね」

「あと、ミミゴン様の強大な魔力を吸い取った魔女がいれば、古代兵器は活動させられる、とも言っていました。もう、取り返しのつかないことなんでしょうか」



 落ち込むアルティアに、メリディスがそっと寄り添う。

 巨大魔導兵器ということは、大量の魔力でも必要なのだろうか。

 助手が頷く。



〈エルドラに勝つための兵器ですからねー。ミリミリの魔力だけでは足りず、ミミゴンの魔力も必要になるほど、魔力消費量が大きいのでしょー〉



 相手の戦力は飛行戦艦アークライトに加えて、巨大魔導兵器モルスケルタが現れた。

 グレアリング王国に勝ち目はないだろう。

 モルスケルタがどんなものかは見てみないと分からないが、戦場に解き放たれたら一巻の終わりだ。

 起動したというなら、止めるまで。



「教皇、もちろん止めることも可能だろうな」

「可能です。あなたたちの本当の戦いは、ここからですよ。作戦は至って単純。モルスケルタに乗り込み、原動機を破壊すればいい。ただ、アルフェッカを止めないと、戦争も終わりません。彼女の声で、終戦を知らせるのです」

「単純だが、アルフェッカを止めるというのは難ありだな。六星騎士長を相手にしなければならない、ってことだろ。こちらに勝ち目があるとは思えん」



 俺は無様なことに、『ものまね』もできない普通の人食い箱。

 アルティアとメリディスは強いといえど、六星騎士長の相手を務めるのは難しい。

 分断して、各個撃破という作戦が通じれば、可能性はあるが。

 そこで、待ってましたとばかりにアヴィリオス教皇が口を開いた。



「ミミゴン、六星の祠は知っていますか?」

「あ、ああ。最奥まで行けたら、神の力を得られるという祠だよな」

「その祠は、一人しか挑戦できないことも知っているかな? 一人で最奥まで進み、親玉を倒すことで神の力を得られるのです。祠は全部で六つ。土星の祠、金星の祠、火星の祠、天王星の祠、木星の祠、水星の祠。現在、神の力を得られるのは火星の祠だけです」

「何が言いたいんだ?」

「……メリディス。火星の祠に挑戦しませんか?」



 突然、自分の名前を呼ばれたメリディスは驚きで目を見開いた。

 アルティアの護衛なので、話し合いに参加することなどあまりないだろう。

 平静を保とうとしているが、声に動揺が出ている。



「わ……私が、祠を制覇できるとは思えないのですが」



 開いた手を見つめて呟いたが、その手をアルティアが握る。

 信頼を伝える眼差しで、アルティアは微笑んだ。



「あなたの実力なら突破できます。このアルティアが保証しますから」

「ア、アルティアさま……」



 教皇も満足そうな笑みを浮かべる。



「ボクも、あなたの強さには一目置いています。アルティアを助けると思って、祠への挑戦を」

「――やります! アルティア様のためならば、祠を制覇してみせます」



 教皇の言葉を断ち切って、メリディスは叫んだ。

 立ち上がり、握り拳を固めていた。

 彼女なら、祠を攻略してくれるだろう。

 出会って、日は浅いが、剣の腕は目の当たりにしてきた。

 神の力を手にすれば、ウラヌスにも勝てるはずだ。

 奴はまだ実力を隠しているようだったが、メリディスが本気になれば打ち倒せる。



「それと、アルティア。一つ、アルフェッカについて伝えておかなければなりません」

「え、なんでしょうか」



 教皇とアルティアは座り直し、表情を引き締めた。



「アルフェッカは何者かに操られている、ということです。モルスケルタは皇帝でさえ知らない。ボクも、噂程度ですよ。そんな情報を、彼女はどこで知ったのか」

「血の仕掛けも知っていて、多量の魔力が必要になる兵器だということも知っている。真の黒幕が知恵を吹き込んだってことだな」



 真の黒幕というのは、法則解放党だろう。

 厳重に封印された魔神獣を操るような連中だ。

 誰も知らない情報の一つや二つ持っていたっておかしくはない。

 しかし、俺の言った推測を教皇は否定した。



「いや、悪知恵を吹き込まれたというよりは、黒幕にスキルで支配されているという可能性だ。昔のアルフェッカは、監察官として見事な働きぶりだった。元老院議員の不正を一斉摘発。帝都では、彼女はかなり評価されているし、民からの信頼も厚い。アルティアも、よく知っているはずだ」

「はい、お姉様は幼少期から天才でした。だから、古代兵器の情報を知ったとしても、自ら起動しようとするはずがないんです。逆に封印することを選び、別のやり方を計画するはずです」



 姉を近くで見てきたアルティアが言うのだ。

 教皇の予想が正解か。

 黒幕に操られているというのなら、どうすればいい。

 教皇は人差し指を立て、全員の注目を集める。



「アルフェッカの精神が、何者かのスキルで支配されている。となると、アルティアの出番です。あなたが彼女を助けてください。アルティアの知っている姉を取り戻すのです」

「はい、私が姉を……救います」

「よい返事です。さて、今後の計画について話しておきます」



 姿勢を少し前のめりにする。



「メリディスは火星の祠に向かい、神の力を手にします。その後、威風都市エーレグランツへ。ボクと都市長が屋敷で待っていますので、そこに集合しましょう。その頃には、グレアリング王国へ向けて、モルスケルタを伴った帝国軍が進攻しているはずです。モルスケルタへ乗り移るための船は、こちらで用意しておきます。あとは乗り込んで、アルフェッカを止め、モルスケルタも止める。分かりやすい流れでしょう」

「ああ、分かりやすいな」



 力を手にして、何もかもを止めればいいってことだ。

 アルティアとメリディスも同意を示して頷く。

 教皇も顔の布の裏で、口角を上げたはず。

 ここから、反撃の時だ。

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