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ミミック・ギミック:ダイナミック  作者: 財天くらと
第六章 デザイア終戦編
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179 飛行戦艦アークライト―1

 周りに、人の気配なし。

 宝箱の擬態をやめ、回転翼を出す。

 翼を八つとも回転させ、宙に浮かぶ。

 帝国兵の会話から、ここは宝物庫だと理解した。

 罪人の処刑も、この飛行戦艦のどこかで行われるらしい。

 そういうことで、罪人の持ち物が部屋中に保管されていた。



 部屋はただ広い倉庫といった感じで、金属の床と金属の壁。

 物は大量の木箱や、武器、盾、防具、宝石まで。

 商いでも始められるほど、物が積みあがっている。

 ということは、メリディスの妖刀もどこかにあるはずだ。

 氷のように冷たき光沢を放つ刀身、エッジワース・カイパーベルト。



 俺の体はエルドラに製作された宝箱だが、正式名称はエルドラ脱出用機械兵器。

 つまり、様々な仕掛けが備わっているということだ。

 久しぶりに、宝箱の裏面から機械の手を出す。

 細かい作業も得意な細い鉄の指で、武器やら防具やらが置かれている場所を探る。



(ミミゴン、それではないか)



 おっ、エルドラの言った通り、これがメリディスの妖刀だな。

 宝箱の蓋を開けて、異次元の空間に太刀を放り込んだ。

 あとは、ここから出ることだな。

 金属でできた如何にもリライズ製と分かるような最新式の扉が立ちはだかる。

 手で横に引こうが押そうが、びくともしない。

 残念ながら、力はない。

 となれば、扉横のセキュリティパネルをどうにかするしかないな。

 カードキーを通す溝があるが。



〈溝の横に、小さな穴が開いていますよねー。そこに手を差し込んでくださーい〉



 助手の指示に従い、針となった手を穴に差し込む。

 すると、電子音がして扉が上にスライドした。

 ハッキングもできるのかよ、俺。



(がはは、我とミミゴンと助手がいれば無敵なのだ!)

〈だったら、こんなところで無様に捕まっていないですよねー〉

(わざと捕まったのだ。機転の利いたミミゴンに失礼だぞ)



 脳内で声が飛び交っているのは、孤独が紛れて嬉しい。

 しかし帝国兵の警邏が、なかなか厳しい。

 早速、問題といったところだな。

 通路のあちこちに、兵が固まって巡回している。

 常用スキルに『消音行動』があるから、音は聞こえない。

 兵士の背中をさらっと通るしかないか。







〈ミミゴン、ストップですー!〉



 えっ、おお!

 天井から赤い光線が出ている。

 触れたら、バチッとくるタイプなのか、警報が鳴り響くタイプなのか。



〈警報が鳴り響くタイプでしょうねー。探知装置には触れてはいけませんよー〉



 おとなしく回り道するしかないな。

 光線の間を通り抜けられるほど、小さいわけではない。

 現在地は、飛行戦艦の中層だと考えている。

 使えるスキルを活用して、メリディスは中層の船尾辺りにいると見当がついた。



 結構長い距離を飛んで、ようやく監房エリアに到着した。

 で、どうやって解除するんだ。

 細い通路の両側に、監房が用意されている。

 監房に小さな風窓があり、隙間から中の様子が覗けた。

 囚われている人は少ない。



「うん? メリディスか?」

「……ミミゴンか」



 メリディスは、奥の監房に閉じ込められていた。

 捕まっているメリディスは冷静に、腕立て伏せを続けている。

 軍服を脱いでおり、インナーウェアには引き締まった筋肉が浮き出ていた。

 てっきり寝ているものだと思っていたが、時間を無駄にすることなく鍛えていたとは。



「今、そこから出してやる」



 汗だくの顔で頷き、床に汗が跳ねる。

 前と同じように、セキュリティパネルをいじればいけるか、助手。



〈いけると思いますよー〉



 金属の手を差し込んで、助手がハッキングする。

 ピピッと電子音がして、扉が上に持ち上がった。

 ちょうど軍服を着たメリディスは無表情に問いかけてくる。



「私の刀は持っているのか?」

「ああ、ちゃんと持ってきたぜ」



 蓋を開いて、金属の手で太刀を掴み、メリディスに手渡す。

 メリディスは太刀を手にして、軽く振り回した。

 フッと息を吐き、本調子に戻ったようだ。



「ミミゴン、アルティア様の居場所は分からないのか」

「そのことなんだけどよ。さっきから、あちこちに移動しているみたいなんだ」

「なんだと? さすがは、アルティア様。自力で脱出されたか」



 いや、隣に誰かいる。

 上層で、兵との遭遇を躱すような動きだ。

 脳内には艦内全てが表示されており、アルティアの居場所を教えてくれている。

 今、中層へ下りた。



「とにかく、合流してみるか」

「アルティア様! 今、参ります!」

「ちょっと待ってくれ!」



 弾丸のように解き放たれた彼女は、通路を駆け抜けていく。

 猪突猛進なことはいいが、ここは敵地。

 最悪な予感も的中した。



 ゥウウウウウゥゥ……!



「探知装置もお構いなしに突っ込むと思ったよ、まったく」

「敵が来るなら、返り討ちにしてやる」



 聴覚にこびりつくサイレンの音が、艦内中に響き渡る。

 それはもう迫力満点で、耳を壊す勢いの轟音が脱走者を知らせた。

 同時に船体が揺れているのではないかという錯覚と共に、帝国兵が我先に走ってくる。



「来たか」

「これ……いけるのか?」



 津波のように押し寄せてくる兵士に、メリディスたった一人でいけるのか。

 メリディスは怖気ることなく、太刀を構える。

 兵士といっても、竜人で力もある。

 銃を構えた兵士は、早くも発砲してきた。

 殺す気満々だ。

 メリディスは太刀で弾を弾き、攻めてきた帝国軍剣士をなぎ倒す。



「『エリアスラッシュ』」



 妖刀が伸び、この場にいる兵士を斬り払う回転斬りを繰り出す。

 振り回した刃は兵士を巻き込み、まとめて壁に吹っ飛ばした。

 感心したのも束の間、遠くの兵士が狙撃してくる。

 即座に駆け出したメリディスは疾風の如く走り、兵士をすれ違いざまに斬り伏せた。



「ミミゴン、道はこっちでいいんだな」

「いや、そっちはまずい。別の通路を行こう。敵とは、なるべく遭遇しない方がいい」



 俺が先頭に出て、メリディスを導く。

 道中の敵は、彼女の太刀で鮮やかに倒される。

 とりあえず、メリディスの心配は不要か。

 このまま、真っ直ぐ進めば。

 アルティアと無事、再開を願って、通路を駆け抜けた。

ミミック・ギミック:ダイナミックのスピンオフが公開されました。ぜひ、お読みいただければと思います。


『人を探す旅で人を知る』

https://ncode.syosetu.com/n7954gb/


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